1、プロローグ
キムジュンミョンの場合
10年前の約束を言い出したのは僕だった。
いや、正確に言うと、それを提案してくれたのは引率だった大学生のユノヒョンで。
元参加者のユノヒョンは自分達もそんな約束をしたし、去年の奴らもそんな約束をしたのを見たと言っていた。それで、僕もその約束をしたいと思ったんだ。
あの時数年後に再会を控えていると言っていたユノヒョンや、僕らの前の年の参加者たちは再会を果たすことができたんだろうか……
僕たちの10年後はまさにもうすぐそこで、僕は期待と不安に揺れ動いていた。
全員揃うことなんて出来るんだろうか。
僕たちの約束は12人だった。
それはきっと異例で。班の構成は6人だったのに倍の人数になったのは、隣の班も誘ったからという理由。
『え?アイツらも一緒に!?』
ユノヒョンは目を丸くしていたのをよく覚えている。
何故ならユノヒョンが言った"アイツら"とは、中国人だったから。正確には中国人3人と中国系カナダ人1人と韓国人の兄弟2人。
僕らの年から加わった中国人枠。
国際交流の一環だと言っていた。
『いや、流石に無理じゃないか?』
『でも……約束だけでもしたいです』
『そうか。お前らの約束なんだから、お前らの好きにしたらいい』
会えるといいな、とユノヒョンは穏やかに笑ってくれた。
僕たちが参加したのは、国がやっている『星の学校』という体験学習で、親元を離れて山の中でキャンプをしながら星や空や自然の勉強をして、最終日はペルセウス座流星群を見るという3泊4日の林間学校みたいなものだ。
結局、時期が合わずペルセウス座流星群は見れなかったけど、僕は11人の仲間と出会った。
上は小6の僕から下は小2のセフンまでの6人が僕の班で、隣の中国人を含む班も似たような構成の6人だった。
活動グループが一緒だったから12人で束になっていたっけ。言葉が通じないながらも楽しめたのは、きっと子どもだったからだろう、なんて。
通訳は主に韓国人兄弟の二人がしてくれた他、僕は習いたての英語で中国系カナダ人の班長クリスとぎこちない会話をしたのを覚えている。
辿々しかった僕の英語は、今では日常会話をなんなくこなすほどになった。何故なら、大学卒業後には父の会社で働くこが決まっているから。
海外貿易を中心とした父の会社では英語は必須で。継ぐのは兄と決まっていたけど、僕も関わっていくのだろうことは分かっていたので子供の頃から習わされてきたのだ。
決められたレールに文句があるわけではない。むしろ、就活に苦労している同級生を見ては、有り難く思うほどだ。
大事に育てられた自覚はある。
このまま親の会社に就職して、会社に都合のいい人と見合いをし、結婚し、子供を儲け、兄の下で働いていくのだろう。
自分の人生に不満なんてない。
ただ少し寂しいだけで。
みんなは、あの約束を覚えているだろうか。
10年後の8月8日の約束を。
12人の上を等しく流れたであろう10年の時間に思いを馳せる。
僕は恥ずかしくない大人になれてるだろうか。
みんなは、どんな大人になっているだろう。
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10年前の約束を言い出したのは僕だった。
いや、正確に言うと、それを提案してくれたのは引率だった大学生のユノヒョンで。
元参加者のユノヒョンは自分達もそんな約束をしたし、去年の奴らもそんな約束をしたのを見たと言っていた。それで、僕もその約束をしたいと思ったんだ。
あの時数年後に再会を控えていると言っていたユノヒョンや、僕らの前の年の参加者たちは再会を果たすことができたんだろうか……
僕たちの10年後はまさにもうすぐそこで、僕は期待と不安に揺れ動いていた。
全員揃うことなんて出来るんだろうか。
僕たちの約束は12人だった。
それはきっと異例で。班の構成は6人だったのに倍の人数になったのは、隣の班も誘ったからという理由。
『え?アイツらも一緒に!?』
ユノヒョンは目を丸くしていたのをよく覚えている。
何故ならユノヒョンが言った"アイツら"とは、中国人だったから。正確には中国人3人と中国系カナダ人1人と韓国人の兄弟2人。
僕らの年から加わった中国人枠。
国際交流の一環だと言っていた。
『いや、流石に無理じゃないか?』
『でも……約束だけでもしたいです』
『そうか。お前らの約束なんだから、お前らの好きにしたらいい』
会えるといいな、とユノヒョンは穏やかに笑ってくれた。
僕たちが参加したのは、国がやっている『星の学校』という体験学習で、親元を離れて山の中でキャンプをしながら星や空や自然の勉強をして、最終日はペルセウス座流星群を見るという3泊4日の林間学校みたいなものだ。
結局、時期が合わずペルセウス座流星群は見れなかったけど、僕は11人の仲間と出会った。
上は小6の僕から下は小2のセフンまでの6人が僕の班で、隣の中国人を含む班も似たような構成の6人だった。
活動グループが一緒だったから12人で束になっていたっけ。言葉が通じないながらも楽しめたのは、きっと子どもだったからだろう、なんて。
通訳は主に韓国人兄弟の二人がしてくれた他、僕は習いたての英語で中国系カナダ人の班長クリスとぎこちない会話をしたのを覚えている。
辿々しかった僕の英語は、今では日常会話をなんなくこなすほどになった。何故なら、大学卒業後には父の会社で働くこが決まっているから。
海外貿易を中心とした父の会社では英語は必須で。継ぐのは兄と決まっていたけど、僕も関わっていくのだろうことは分かっていたので子供の頃から習わされてきたのだ。
決められたレールに文句があるわけではない。むしろ、就活に苦労している同級生を見ては、有り難く思うほどだ。
大事に育てられた自覚はある。
このまま親の会社に就職して、会社に都合のいい人と見合いをし、結婚し、子供を儲け、兄の下で働いていくのだろう。
自分の人生に不満なんてない。
ただ少し寂しいだけで。
みんなは、あの約束を覚えているだろうか。
10年後の8月8日の約束を。
12人の上を等しく流れたであろう10年の時間に思いを馳せる。
僕は恥ずかしくない大人になれてるだろうか。
みんなは、どんな大人になっているだろう。
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