第二章
side SH
「セフナぁ!ちゃんと断った?」
「あぁ、うん」
この前告白された子に返事をしに行った。タオは何度もついていくってきかなかったけど、さすがにそれは相手に申し訳ないので断った。
「ちゃんと断ったよ」
「そっかぁ、よかった」
なんでよかったの?なんでそうなるの?意味が分かんないよ。
ふふふって笑顔で背中から抱き付かれて。暖かいけどちょっと寒い。心は少しだけ冷えている。
「ねぇタオ、僕彼女作っちゃいけないの?」
「いけないことないけどー、淋しいから嫌」
「なにそれ。ただの我が儘じゃん」
「だってセフナはタオのだもーん」
友情と愛情は別物じゃないの?とは思うけど、タオにはきっと通じないな。このパンダは四次元だし。
「ねぇねぇセフナ、実はね、僕、好きな人がいるんだー!」
驚いた?って言ってタオは目の前に立った。ふふふって満面の笑みで。
え、何この流れ……ってちょっと構えた僕はただの馬鹿だったみたい。
「シロクマにいるお客さんなんだけどさ、セフナも見たらわかると思う!すっごい可愛いの!」
何でこの流れで言うかな。
僕には彼女作るなって言うくせに、自分は好きな人がいるって。もしかして、なんて考えた自分が馬鹿みたいじゃん。
「ふーん。そんな可愛い人いたっけ?」
「いるよ!大学生くらいで、いつも背の高い人と一緒にいるの」
背の高い大学生……?
「え……?男?」
「うん!」
「は?」
「なに?もしかしてセフナも狙ってたの?ダメだよ!僕が先に見つけたんだから!」
いやいや、そうじゃなくて。
「え?タオってそっち?」
「どっち?」
「や、あの……ゲイとかそういう……」
「あはははは!何言ってんの!」
盛大に笑うとタオは、えっとなんだっけ?人類愛?って随分と難しい言葉を出した。
頭がいいのか悪いのか……
まぁ、どっちでもいいか。
「だからさぁ、今日シロクマ付き合って!」
「うんまぁいいけど……」
「へへぇ、セフナ大好き!」
タオは、本当に自分勝手な人だ。いつも僕を置いてどんどん先に行ってしまう。先へ、先へ。振り回されて、くたくたになって。でも手は離してくれなくて。笑って抱きつかれて流されて。
振り回されるのにはもう慣れたけど、たまにどうしてか寂しく感じて。楽しそうに行ってしまうタオを気がつけばいつも追いかけていた。"タオの友達"は心地好すぎる。
「いらっしゃい。あれ?テスト終わったんじゃないの?」
「終わったよー!終わったのに来たらダメ?」
「いや、ダメじゃないけど。珍しいなぁと思って」
「あはは!でしょー!」
いつもマスターと積極的に話をするのはタオだ。僕は振られれば答えるけど、ほとんどタオの後ろで笑っているだけ。そういう社交性も羨ましい。
「まだいないみたい」
「大学生ならもう少し遅いんじゃない?」
「そっかー。残念」
見るからに気落ちして。
何だろう。ちょっともやもやする。
「ねぇ、その人と話したこととかあるの?」
「ないよー」
「ここで見かけるだけ?」
「うん!」
「名前は?」
「知らなーい」
「……なにそれ」
そんな恋あるかよ。
「セフナ、もしかしてヤキモチ?」
ニヤニヤと笑って。
「バカじゃないの」
そんなわけないじゃん。
そんなわけ……
結局その日僕らは閉店近くまで粘ったけど、その人は来なかった。その代わりマスターから得た情報は、今度その人が出るというライブ。タオはもちろん飛び付いた。
「一緒に行ってくれるよね?」
「えー」
「いいじゃん!行こうよー!」
「あぁー、うーん……」
こうやってまた振り回されるんだ。
僕は貰ってきたフライヤーに目を落とした。
「セフナぁ!ちゃんと断った?」
「あぁ、うん」
この前告白された子に返事をしに行った。タオは何度もついていくってきかなかったけど、さすがにそれは相手に申し訳ないので断った。
「ちゃんと断ったよ」
「そっかぁ、よかった」
なんでよかったの?なんでそうなるの?意味が分かんないよ。
ふふふって笑顔で背中から抱き付かれて。暖かいけどちょっと寒い。心は少しだけ冷えている。
「ねぇタオ、僕彼女作っちゃいけないの?」
「いけないことないけどー、淋しいから嫌」
「なにそれ。ただの我が儘じゃん」
「だってセフナはタオのだもーん」
友情と愛情は別物じゃないの?とは思うけど、タオにはきっと通じないな。このパンダは四次元だし。
「ねぇねぇセフナ、実はね、僕、好きな人がいるんだー!」
驚いた?って言ってタオは目の前に立った。ふふふって満面の笑みで。
え、何この流れ……ってちょっと構えた僕はただの馬鹿だったみたい。
「シロクマにいるお客さんなんだけどさ、セフナも見たらわかると思う!すっごい可愛いの!」
何でこの流れで言うかな。
僕には彼女作るなって言うくせに、自分は好きな人がいるって。もしかして、なんて考えた自分が馬鹿みたいじゃん。
「ふーん。そんな可愛い人いたっけ?」
「いるよ!大学生くらいで、いつも背の高い人と一緒にいるの」
背の高い大学生……?
「え……?男?」
「うん!」
「は?」
「なに?もしかしてセフナも狙ってたの?ダメだよ!僕が先に見つけたんだから!」
いやいや、そうじゃなくて。
「え?タオってそっち?」
「どっち?」
「や、あの……ゲイとかそういう……」
「あはははは!何言ってんの!」
盛大に笑うとタオは、えっとなんだっけ?人類愛?って随分と難しい言葉を出した。
頭がいいのか悪いのか……
まぁ、どっちでもいいか。
「だからさぁ、今日シロクマ付き合って!」
「うんまぁいいけど……」
「へへぇ、セフナ大好き!」
タオは、本当に自分勝手な人だ。いつも僕を置いてどんどん先に行ってしまう。先へ、先へ。振り回されて、くたくたになって。でも手は離してくれなくて。笑って抱きつかれて流されて。
振り回されるのにはもう慣れたけど、たまにどうしてか寂しく感じて。楽しそうに行ってしまうタオを気がつけばいつも追いかけていた。"タオの友達"は心地好すぎる。
「いらっしゃい。あれ?テスト終わったんじゃないの?」
「終わったよー!終わったのに来たらダメ?」
「いや、ダメじゃないけど。珍しいなぁと思って」
「あはは!でしょー!」
いつもマスターと積極的に話をするのはタオだ。僕は振られれば答えるけど、ほとんどタオの後ろで笑っているだけ。そういう社交性も羨ましい。
「まだいないみたい」
「大学生ならもう少し遅いんじゃない?」
「そっかー。残念」
見るからに気落ちして。
何だろう。ちょっともやもやする。
「ねぇ、その人と話したこととかあるの?」
「ないよー」
「ここで見かけるだけ?」
「うん!」
「名前は?」
「知らなーい」
「……なにそれ」
そんな恋あるかよ。
「セフナ、もしかしてヤキモチ?」
ニヤニヤと笑って。
「バカじゃないの」
そんなわけないじゃん。
そんなわけ……
結局その日僕らは閉店近くまで粘ったけど、その人は来なかった。その代わりマスターから得た情報は、今度その人が出るというライブ。タオはもちろん飛び付いた。
「一緒に行ってくれるよね?」
「えー」
「いいじゃん!行こうよー!」
「あぁー、うーん……」
こうやってまた振り回されるんだ。
僕は貰ってきたフライヤーに目を落とした。