ルハンとシウミン
え?ミンソクの愛?
もちろん信じてるよ。
そうだなぁ、天気予報と同じくらいにはね。
だってミンソクはみんなに愛されるから。
僕だけじゃないから。
「ねぇ、ミンソガ」
「んー?」
「天気予報ってさ、どのくらい信じてる?」
「なに?急に」
「いいから!どのくらい?」
「んー、6割……いや7割くらい?」
「ふーん」
そっか。そんなもんだよね。
僕もきっとそうだ。
ミンソクの愛を信じてる割合は、きっとそのくらい。
「え?何?」なんて戸惑っているミンソクを抱き締めて「何でもなーい!」って笑って、その白くてふくふくした頬に口づけた。
ミンソクは「ルハナー!」って膨れた。
僕だってちゃんとミンソクの愛を信じたいけど、僕はきっと盲目的だから。見えてない部分が多すぎて100%は信じれない。気づいた時にはもうすでに、あまりにも好きになりすぎていた。ミンソクがミンソクというだけで、すべて甘受してしまうくらいに。
「ミンソギヒョンならあそこですよ」
控え室でミンソクを探してうろうろしてたら、見かねてかベッキョンが教えてくれた。言われた方を見やれば、スタイリストのヌナと楽しげに会話中だ。そんなのミンソクに限ったことじゃないし、僕だってするし他のメンバーだってするけど。焼きもちなんか焼いたって「ばかルハナ」って笑うんだろうけど。どうして僕だけのミンソクにならないんだろうって思うんだ。ミンソクは僕の恋人で確かに僕のミンソクなのに、誰のミンソクなの?って問い詰めたくなる。
そんなことを考えているとミンソクと目が合って、「どうした?」って言いたげにくりくりの目をさらに広げた。僕が微笑みを返すとミンソクも笑ってくれる。
どんなに視線を独り占めしたって、ミンソクのすべてを独り占めすることはできない。
「ルハナーどうした?」って言ってミンソクが近づいてきた。そんな彼を見て僕は思わず笑顔になる。
「ううん、別に?」
「そ?なんか言いたげだったから」
「うーん、じゃあ……」
さすが旬な人気者?大勢中の大勢!
ふざけてそう言ったら、「ルハナー!」って怒られた。別に怒ってないけど怒られた。ミンソクがそう言われるのが苦手なことを知ってるからわざと言ったんだけど。
あははって笑って。うそうそごめんね、って謝って抱き締める。ミンソクをからかえるのは唯一僕の特権だ。
最近のミンソクはすごく人気が出て僕も誇らしく思う反面、実は少しだけ不安だったり。僕のミンソクなのに、僕だけのミンソクじゃなくなってきたから。僕が抱き締めてるミンソクは、ミンソクのうちの何%なんだろう、なんて難しいことを考え出しちゃって。もはやイシン並に思考回路が迷路だ。
いつだって伝えたい想いはひとつだけたのに。
宿舎に帰っていつものようにミンソクの部屋に入り浸る。寄り付かないマネヒョンのお陰で今は一人部屋みたいなもんだから、有り難いことこの上ない。
「ねぇミンソガー」
ベッドに並んでゴロゴロとくっついて。僕が抱き締めればミンソクもおずおずと恥ずかしそうに腕をまわして僕の胸に納まる。可愛いミンソクの頭にキスを落とした。
「ミンソクは僕の愛情どのくらい信じてる?」
「はー?何言ってんだよ」
「はは、なんとなくー」
笑って言うと、ミンソクはモゾモゾと僕の腕を抜け出し顔を上げた。
「お前、まさか……!」
ん?と見下ろした視線と、キッと鋭い視線がかち合って、「あぁ、」と笑った。
「浮気なんてするわけないじゃん。僕がどれだけミンソクのこと好きか知ってるでしょ?」
そう笑うと「ならいいけど」と言ってまた僕の胸に顔を埋めた。
「じゃあなんでそんなこと聞くんだよ……」
「なんとなくー」
「そんなの……100%に決まってんだろ……」
小さく呟かれた。耳元が少しだけ赤くて、思わず腕に力が籠る。
「……お前は?」
「僕?うーん、僕はー……天気予報と同じくらい、かな」
言うと、訪れた沈黙。
またもモゾモゾと腕を抜け出して、上目遣いでこちらを見上げた大きな目と視線が重なった。
「……ルハナ、お前また何考えてる?」
「何って?」
「またわけわかんないこと考えてるだろ」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど……」
言い淀む僕に向かって、ミンソクは「お前も黙って100%信じてればいいの」と言って、唇を重ねた。
だって不安なんだもん、とは言えなくて。
僕はミンソクを愛しすぎてるから。きっとこのキスだって目隠しされても分かるくらいに、そのくらいに愛してるから。僕の想いとミンソクの想いが釣り合ってるとは思えないほど、好きすぎて不安なんだ。
天気予報と並べるなんて馬鹿げてるって思うかもしれないけど、僕にとってはどちらも、信じたいけど信じきれないジレンマを孕んでいるという点では同じだと思うんだ。
明日は1日晴れ、という記号を見ながら、本当に明日は晴れるだろうか、お気に入りの靴を履いても大丈夫だろうか、って常に不安が付きまとうようにミンソクの愛にも不安が付きまとっている。
本当に僕のことが好きなんだろうか、僕だけのミンソクなんだろうか、って考え始めればキリがなくて。
これはきっと僕の課題だ。
ミンソクを好きでいる限りずっと続く、解けない課題。
何度も何度も啄むように重ねられた唇はやっと離れて、可愛い唇からは小さく八重歯が覗いている。
「ルハナ、好きだよ」
恥ずかしそうに、それでも真っ直ぐに呟くミンソクを力いっぱい抱き締めた。
終わり