〇〇とチェン
160402 合言葉はラーメン レイチェン
「あの、ヒョン……」
バイトやら大学やらの合間、どうにか揃った休みに、二人でデートがてら映画らやショッピングやら大満喫して。楽しかったねぇ、なんて話ながらジョンデをアパートまで送り届ける道すがら、ずっと上の空だった彼は、アパートに着くなりモジモジと服の裾をつまみながら口を開いた。
「なぁに?どうしたの?」
「あの……その、もしよかったら……うちで、ラーメン食べていきませんか?」
耳の縁やら首元やら、真っ赤に染めて何を言うかと思ったら、そんなこと?なんて拍子抜けだ。
うんまぁ、確かに少しお腹空いたかも……
「ジョンデもお腹空いてるの?」
「え……?」
「もし空いてるなら……あぁ!僕が作ってあげる!」
「……!?」
「材料ある?」
「え……あ、はい!袋ラーメンなら!」
「そう、じゃあ作ろうか!」
「わーい!やったぁ!」
「ふふふ」
ウキウキ気分でジョンデの部屋にお邪魔して、台所を借りてラーメンを作った。
熱々の湯気が揺れる鍋越しに、ふうふうと冷ましながら二人で向かい合ってラーメンを啜って笑った。具も入ってないただのインスタントラーメンなのに、なんだか幸せな味がしたのは、きっと付き合い初めて間もないこの可愛い恋人と食べるラーメンだからかなぁ、なんて。
初めて入ったジョンデの部屋は、几帳面ではないほどにこざっぱりと片付いていて、台所も大袈裟ではない程度にちゃんと使い込んでいる痕跡があった。ジョンデは大学でも節約だとか言って一人暮らしのわりに毎日弁当を持参しているらしい。一度デートの時に僕にも作ってくれたことがあった。少しだけ不格好だけど愛情たっぷりのお弁当。
腕前?うんまぁ、美味しいよ?
ジョンデらしく大味だったけどね!
「ヒョン、ご馳走さまでした!」
「どういたしまして。美味しかった?」
「はい、美味しかったですよ?」
「でしょー!僕インスタントラーメンだけは作るの天才的に上手いんだ!」
「あはは!なんですかそれ!誰が作ったって大して変わりないじゃないですかぁ!」
「何言ってるの!違うよ?ポイントは水の量と煮る時間なんだから!」
参考にします、なんて言ってジョンデは可愛らしく笑う。「満腹です」と擦るお腹は服の上からでもまだまだ痩せてて心配になるほどだ。
「じゃあね」
「はい、おやすみなさい」
ラーメンを食べ終えて、一息吐いて。
玄関先までジョンデに見送られて部屋を後にした。
今日もジョンデと居れて楽しい一日だったなぁ、なんて一日の出来事を反芻しながら自分のアパートへと帰った。
****
「そういえば、こないだデートした帰りにジョンデの部屋に寄ったんですよー」
「へぇ」と大した興味もなさそうに相づちを打つのは、ゼミの先輩ミンソギヒョンだ。就活真っ最中のヒョンは最近は会えばいつも忙しそうにしている。
「それで、ラーメン食べたいって言うから、僕作ってあげたんです。そしたらすっごい美味しそうに食べてくれて、」
やっぱりジョンデと付き合って正解でした、なんて話を続けようとしたら、さっきまで興味なさそうにしてたヒョンが「は?」と声をあげて、僕は思わず頭を傾げた。
「ん?なんですか?」
「お前今なんつった?」
「美味しそうに食べてくれて……?」
「その前!!」
妙に焦ったふうにミンソギヒョンが言うから、僕はすっかり意味がわからない。
「えっと……ジョンデの部屋で二人でラーメン食べたってやつですか?」
「……それって、あいつが誘ったのか?」
「そうですけど……?」
「まさか、うちでラーメン食べていきませんか?って?」
「はい、ヒョンよくわかりましたね!!」
さすがミンソギヒョンだ!
ジョンデのことならなんでも分かるのかなぁ、なんて少し嫉妬してしまいそうだけど。そもそも僕にジョンデを紹介してくれたのはミンソギヒョンだったんだから嫉妬したって仕方ない。
ジョンデは元々ミンソギヒョンの幼馴染みだった。
大学も違う僕らが付き合い始めたのは、ヒョンが僕たちを引き合わせてくれたから。学祭に連れてきたジョンデに僕がすぐに一目惚れして押しまくった結果、どうにか首を縦に振ってくれたのが1か月前のこと。なかなか予定が合わなくて、デートの回数はまだ片手に足りるほどだけど、電話やメールなら毎日のようにやりとりしている。
こないだは、そんな貴重なデートの時間だった。
ちらりとミンソギヒョンを見やれば、まいったなぁ、なんて呟きながら苦笑を溢していた。
「どうかしました?」
「あ、いや。まぁ、そうだよな。お前中国人だったんだもんな」
忘れてたわ、とミンソギヒョンが笑う。
「あのな……イーシン、今から重要なことを言うから、よーく聞くんだぞ」
「は、い……?」
仰々しく僕の方に顔を寄せるミンソギヒョンに、僕は何故だか少し緊張しながら耳を傾けた。
****
勢いよくゼミ室のドアを開け、廊下に飛び出る。
ポケットから取り出したスマートフォンが手を滑りそうになって慌てて掴み直した。
何てことをしちゃったんだろう。
赤く染めたジョンデの耳の縁や首元。
その理由……
僕は直ぐ様ジョンデに電話した。
メールなんてまどろっこしいことはしていられないんだ!
焦る心臓の鼓動と、響く呼び出し音。
手のひらにじわりと汗が吹き出る。
『ヒョン……?』
「ジョンデ!」
『どうしたんですか?何かあったんですか?』
「ジョンデ!あのさ!今日何時でもいいから、」
僕の部屋にラーメン食べに来ない?
『え……』
ごくりと唾を飲み込んで、静寂を縫うように聞こえたジョンデの小さな了承の言葉。
笑いがこぼれて、心臓がくすぐったかった。
ねぇ、ジョンデ。
今度は絶対に間違ったりなんかしないから。
だから今夜、僕の家に泊まっていってよ。
恥ずかしがり屋な僕の恋人さん。
今夜は愛を深めようか。
おわり
-----------
いつも仲良くしてもらってる『オバドズ』の佐倉様の誕生日に寄せて書かせていただきました^^
遅くなってすみません(((^^;)
おめでとうございました♪
「あの、ヒョン……」
バイトやら大学やらの合間、どうにか揃った休みに、二人でデートがてら映画らやショッピングやら大満喫して。楽しかったねぇ、なんて話ながらジョンデをアパートまで送り届ける道すがら、ずっと上の空だった彼は、アパートに着くなりモジモジと服の裾をつまみながら口を開いた。
「なぁに?どうしたの?」
「あの……その、もしよかったら……うちで、ラーメン食べていきませんか?」
耳の縁やら首元やら、真っ赤に染めて何を言うかと思ったら、そんなこと?なんて拍子抜けだ。
うんまぁ、確かに少しお腹空いたかも……
「ジョンデもお腹空いてるの?」
「え……?」
「もし空いてるなら……あぁ!僕が作ってあげる!」
「……!?」
「材料ある?」
「え……あ、はい!袋ラーメンなら!」
「そう、じゃあ作ろうか!」
「わーい!やったぁ!」
「ふふふ」
ウキウキ気分でジョンデの部屋にお邪魔して、台所を借りてラーメンを作った。
熱々の湯気が揺れる鍋越しに、ふうふうと冷ましながら二人で向かい合ってラーメンを啜って笑った。具も入ってないただのインスタントラーメンなのに、なんだか幸せな味がしたのは、きっと付き合い初めて間もないこの可愛い恋人と食べるラーメンだからかなぁ、なんて。
初めて入ったジョンデの部屋は、几帳面ではないほどにこざっぱりと片付いていて、台所も大袈裟ではない程度にちゃんと使い込んでいる痕跡があった。ジョンデは大学でも節約だとか言って一人暮らしのわりに毎日弁当を持参しているらしい。一度デートの時に僕にも作ってくれたことがあった。少しだけ不格好だけど愛情たっぷりのお弁当。
腕前?うんまぁ、美味しいよ?
ジョンデらしく大味だったけどね!
「ヒョン、ご馳走さまでした!」
「どういたしまして。美味しかった?」
「はい、美味しかったですよ?」
「でしょー!僕インスタントラーメンだけは作るの天才的に上手いんだ!」
「あはは!なんですかそれ!誰が作ったって大して変わりないじゃないですかぁ!」
「何言ってるの!違うよ?ポイントは水の量と煮る時間なんだから!」
参考にします、なんて言ってジョンデは可愛らしく笑う。「満腹です」と擦るお腹は服の上からでもまだまだ痩せてて心配になるほどだ。
「じゃあね」
「はい、おやすみなさい」
ラーメンを食べ終えて、一息吐いて。
玄関先までジョンデに見送られて部屋を後にした。
今日もジョンデと居れて楽しい一日だったなぁ、なんて一日の出来事を反芻しながら自分のアパートへと帰った。
****
「そういえば、こないだデートした帰りにジョンデの部屋に寄ったんですよー」
「へぇ」と大した興味もなさそうに相づちを打つのは、ゼミの先輩ミンソギヒョンだ。就活真っ最中のヒョンは最近は会えばいつも忙しそうにしている。
「それで、ラーメン食べたいって言うから、僕作ってあげたんです。そしたらすっごい美味しそうに食べてくれて、」
やっぱりジョンデと付き合って正解でした、なんて話を続けようとしたら、さっきまで興味なさそうにしてたヒョンが「は?」と声をあげて、僕は思わず頭を傾げた。
「ん?なんですか?」
「お前今なんつった?」
「美味しそうに食べてくれて……?」
「その前!!」
妙に焦ったふうにミンソギヒョンが言うから、僕はすっかり意味がわからない。
「えっと……ジョンデの部屋で二人でラーメン食べたってやつですか?」
「……それって、あいつが誘ったのか?」
「そうですけど……?」
「まさか、うちでラーメン食べていきませんか?って?」
「はい、ヒョンよくわかりましたね!!」
さすがミンソギヒョンだ!
ジョンデのことならなんでも分かるのかなぁ、なんて少し嫉妬してしまいそうだけど。そもそも僕にジョンデを紹介してくれたのはミンソギヒョンだったんだから嫉妬したって仕方ない。
ジョンデは元々ミンソギヒョンの幼馴染みだった。
大学も違う僕らが付き合い始めたのは、ヒョンが僕たちを引き合わせてくれたから。学祭に連れてきたジョンデに僕がすぐに一目惚れして押しまくった結果、どうにか首を縦に振ってくれたのが1か月前のこと。なかなか予定が合わなくて、デートの回数はまだ片手に足りるほどだけど、電話やメールなら毎日のようにやりとりしている。
こないだは、そんな貴重なデートの時間だった。
ちらりとミンソギヒョンを見やれば、まいったなぁ、なんて呟きながら苦笑を溢していた。
「どうかしました?」
「あ、いや。まぁ、そうだよな。お前中国人だったんだもんな」
忘れてたわ、とミンソギヒョンが笑う。
「あのな……イーシン、今から重要なことを言うから、よーく聞くんだぞ」
「は、い……?」
仰々しく僕の方に顔を寄せるミンソギヒョンに、僕は何故だか少し緊張しながら耳を傾けた。
****
勢いよくゼミ室のドアを開け、廊下に飛び出る。
ポケットから取り出したスマートフォンが手を滑りそうになって慌てて掴み直した。
何てことをしちゃったんだろう。
赤く染めたジョンデの耳の縁や首元。
その理由……
僕は直ぐ様ジョンデに電話した。
メールなんてまどろっこしいことはしていられないんだ!
焦る心臓の鼓動と、響く呼び出し音。
手のひらにじわりと汗が吹き出る。
『ヒョン……?』
「ジョンデ!」
『どうしたんですか?何かあったんですか?』
「ジョンデ!あのさ!今日何時でもいいから、」
僕の部屋にラーメン食べに来ない?
『え……』
ごくりと唾を飲み込んで、静寂を縫うように聞こえたジョンデの小さな了承の言葉。
笑いがこぼれて、心臓がくすぐったかった。
ねぇ、ジョンデ。
今度は絶対に間違ったりなんかしないから。
だから今夜、僕の家に泊まっていってよ。
恥ずかしがり屋な僕の恋人さん。
今夜は愛を深めようか。
おわり
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いつも仲良くしてもらってる『オバドズ』の佐倉様の誕生日に寄せて書かせていただきました^^
遅くなってすみません(((^^;)
おめでとうございました♪