〇〇とチェン
140109 恋の期限は愛のはじまり レイチェン
「ヒョン、1ヶ月僕の恋人になってくれませんか?」
「なんで?」
「なんでも、です」
そう言って、にぃって口角を上げて笑顔を向けられた。
瞬間、僕は"恋人のジョンデ"を見たくなってしまった。
「うん、わかった」
"恋人のジョンデ"は甘えん坊で可愛くて。とにかくくっつきたがった。ヒョン、ヒョンって甘えてくるのが他でもない僕にで。見つめれば、ヒヒって恥ずかしそうに笑って。「手繋いでください」って言う少し舌っ足らずなしゃべり方も、トテトテと不器用そうに歩く足音も、全部僕のものだと思うと堪らなく嬉しかった。
「ねぇ、ジョンデ」
「なんですか?」
だから僕はふと気になっていたことを聞いてみたんだ。
「これって、普通に付き合うのと何が違うの?」
そしたらジョンデは、
「……最初に言ったじゃないですか。期限がある、って。だから、期限の内は楽しくお付き合いしましょ!ね?」って。
笑顔でそう言ったけど、僕はイマイチその意味が分からなかなった。だからとりあえず「うん」って頷いたんだ。
僕らの付き合いといえば、それは正しく恋人だった。
甘えたし甘やかしたし、片時も離れなかった。一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に食べて、一緒に歌った。手を繋いでキスをしてそれ以上もして。"恋人のジョンデ"は思った以上に可愛くて、魅力的だった。僕は僕に降りかかるすべてのことに流れを任せた。
「1ヶ月ありがとうございました」
「え……?」
「楽しかったです」
幕引きは突然だった。
気付けば1ヶ月経っていたようで。昨日まであんなに楽しく笑いあっていたのに。
すっかり忘れていたんだ。
だってそんなの今の僕らには意味のないことでしょ?
僕はもうジョンデの華奢な体も、可愛い唇も、発する熱も、その熱に侵されて見せる表情も、すべて知っているっていうのに。
どうして今さらそんなことを言うの?
「どうしてもです」
「だって必要ないじゃない」
「でも……最初に決めたことですから」
「なんで?僕のこと嫌いになった?」
「そうじゃないですけど……」
「じゃあ……」
辛そうに眉を下げながらそれでも笑うジョンデの手を掴んで包み込む。
「僕らに別れは必要ないと思うけど」
「でも、ダメです」
「どうして?理由を教えてくれなきゃ分からないよ」
僕が促すとジョンデは唇を少しだけ突き出して「意味ないですから」って。
「意味?」
「だって、このまま続けたって、意味ないじゃないですか。ヒョンはどうせ僕のこと好きでも何でもないのに……このまま続けたって」
「え……」
自嘲するように笑ってうつ向いた目尻から一筋の涙が流れていた。
「泣かないで、ジョンデ」
言って親指で拭ったけど、小さく震える華奢な肩を見ていたら気付けば僕の方が泣いていた。
「なんでヒョンが泣くんですか」
「だって……」
ジョンデがあまりにも辛そうに笑うから。僕は君の大きな笑顔が好きなのに、苦しそうに辛そうに、そうやって笑うから。僕のほうが悲しくなったんじゃないか。ジョンデのバカ。
「僕は、もう満足しました……この1ヶ月で、一生分の幸せをもらいました。だからこれ以上はきっと神様に怒られます」
「なんで?幸せになるのに神様に怒られるの?」
「だって……」
涙を拭って、頬に、目尻に、鼻に、額に。唇に。キスを落としていく。
「僕だけ……」
「え……?」
「……僕だけ好きだって意味ないじゃないですか」
ジョンデは呟いた。
「え、それ誰が決めたの?」
「え……」
「僕だってジョンデが好きだよ」
君だけが好き?どうして?僕だって好きだよ。当たり前でしょ?
君はもう"メンバーのジョンデ"じゃなくて"恋人のジョンデ"なんだから。"恋人のジョンデ"は恋人なんだから好きに決まってるじゃない。
「僕、ベッドの中でも何度も好きだよって言ったよね?」
「だってそんなのは……なんていうか、言葉のあやっていうか……」
「ねぇ、ジョンデ。僕が君に嘘を言ったことある?ないよね?どうして信じないの?」
「だって……ヒョンはきっと、流されてるだけです」
だからこのまま続けちゃダメなんです。ってジョンデは言った。
伝わらなくて、なんて焦れったい。こんなに好きなのに。
「もー!僕だって譲れないことはあるんだからね!」
気付いたら叫んでいた。
「ヒョン……」
「終わるのはダメ!続けるの!」
自分でも子どもじみてるって分かってるけど。ダメなものはダメだ。
「ねぇ、ジョンデ。僕は鈍感だから君がどんな風に何を思って僕と1ヶ月過ごしたのかは分からないけど、僕が君を好きになるのに1ヶ月は十分だったよ。長すぎたくらい」
だからこれは1ヶ月なんて期間で終わるものじゃないんだ。
だって、僕らはこんなにも愛し合ってる。
「ヒョン、僕……ずっとヒョンのことが好きだったんです。だから、1ヶ月だけでも恋人にしてもらえたらきっと、その思い出だけで生きてけるんじゃないかって思ったんです……だから……」
「うん……」
「だけど……1ヶ月は僕にとって長すぎました。毎日が幸せで、終わりが近付くのが怖かった……これ以上好きになっちゃいけないって分かってたのに、ヒョンの腕の中が心地よすぎて。でもヒョンは僕のことなんか好きじゃないんだって、ただ付き合ってるだけなんだって思ったら堪らなく辛かった」
「だったら……」
「えぇ、だから。だからこのまま、幸せなまま終わりたいんです。幸せな1ヶ月だったなって綺麗なまま……」
ねぇ、ジョンデ。そんなの間違ってるよ。
「綺麗な思い出にして終わるなんて間違ってると思う。ジョンデはずっと過去にしがみついて生きていくの?違うよね?」
だって僕らはまだまだ未来を見ることができるんだから。
少しの沈黙の後、引かない僕にジョンデは困ったように笑った。
「…………ヒョン、僕の負けです」
「え……?」
瞬間、ジョンデが抱き付いていて、僕の耳元で囁いた。
「ヒョン、好きって言ってください。僕のことが好きだって……」
「ジョンデが、好き」
「……僕も、ヒョンが好きです……だから僕と、」
付き合ってください。
囁かれた言葉に、僕は大きな声で返事していた。
そっか、もう一度告白すればよかったんだ。言葉も知らない、気も利かない僕は、それでも君を想う気持ちだけは誰にも負けないから、だからどうか多目に見てほしいだなんて我が儘かな?
僕は愛しいジョンデの首に、耳元に、唇を寄せて思い切り抱き締めた。
おわり
「ヒョン、1ヶ月僕の恋人になってくれませんか?」
「なんで?」
「なんでも、です」
そう言って、にぃって口角を上げて笑顔を向けられた。
瞬間、僕は"恋人のジョンデ"を見たくなってしまった。
「うん、わかった」
"恋人のジョンデ"は甘えん坊で可愛くて。とにかくくっつきたがった。ヒョン、ヒョンって甘えてくるのが他でもない僕にで。見つめれば、ヒヒって恥ずかしそうに笑って。「手繋いでください」って言う少し舌っ足らずなしゃべり方も、トテトテと不器用そうに歩く足音も、全部僕のものだと思うと堪らなく嬉しかった。
「ねぇ、ジョンデ」
「なんですか?」
だから僕はふと気になっていたことを聞いてみたんだ。
「これって、普通に付き合うのと何が違うの?」
そしたらジョンデは、
「……最初に言ったじゃないですか。期限がある、って。だから、期限の内は楽しくお付き合いしましょ!ね?」って。
笑顔でそう言ったけど、僕はイマイチその意味が分からなかなった。だからとりあえず「うん」って頷いたんだ。
僕らの付き合いといえば、それは正しく恋人だった。
甘えたし甘やかしたし、片時も離れなかった。一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に食べて、一緒に歌った。手を繋いでキスをしてそれ以上もして。"恋人のジョンデ"は思った以上に可愛くて、魅力的だった。僕は僕に降りかかるすべてのことに流れを任せた。
「1ヶ月ありがとうございました」
「え……?」
「楽しかったです」
幕引きは突然だった。
気付けば1ヶ月経っていたようで。昨日まであんなに楽しく笑いあっていたのに。
すっかり忘れていたんだ。
だってそんなの今の僕らには意味のないことでしょ?
僕はもうジョンデの華奢な体も、可愛い唇も、発する熱も、その熱に侵されて見せる表情も、すべて知っているっていうのに。
どうして今さらそんなことを言うの?
「どうしてもです」
「だって必要ないじゃない」
「でも……最初に決めたことですから」
「なんで?僕のこと嫌いになった?」
「そうじゃないですけど……」
「じゃあ……」
辛そうに眉を下げながらそれでも笑うジョンデの手を掴んで包み込む。
「僕らに別れは必要ないと思うけど」
「でも、ダメです」
「どうして?理由を教えてくれなきゃ分からないよ」
僕が促すとジョンデは唇を少しだけ突き出して「意味ないですから」って。
「意味?」
「だって、このまま続けたって、意味ないじゃないですか。ヒョンはどうせ僕のこと好きでも何でもないのに……このまま続けたって」
「え……」
自嘲するように笑ってうつ向いた目尻から一筋の涙が流れていた。
「泣かないで、ジョンデ」
言って親指で拭ったけど、小さく震える華奢な肩を見ていたら気付けば僕の方が泣いていた。
「なんでヒョンが泣くんですか」
「だって……」
ジョンデがあまりにも辛そうに笑うから。僕は君の大きな笑顔が好きなのに、苦しそうに辛そうに、そうやって笑うから。僕のほうが悲しくなったんじゃないか。ジョンデのバカ。
「僕は、もう満足しました……この1ヶ月で、一生分の幸せをもらいました。だからこれ以上はきっと神様に怒られます」
「なんで?幸せになるのに神様に怒られるの?」
「だって……」
涙を拭って、頬に、目尻に、鼻に、額に。唇に。キスを落としていく。
「僕だけ……」
「え……?」
「……僕だけ好きだって意味ないじゃないですか」
ジョンデは呟いた。
「え、それ誰が決めたの?」
「え……」
「僕だってジョンデが好きだよ」
君だけが好き?どうして?僕だって好きだよ。当たり前でしょ?
君はもう"メンバーのジョンデ"じゃなくて"恋人のジョンデ"なんだから。"恋人のジョンデ"は恋人なんだから好きに決まってるじゃない。
「僕、ベッドの中でも何度も好きだよって言ったよね?」
「だってそんなのは……なんていうか、言葉のあやっていうか……」
「ねぇ、ジョンデ。僕が君に嘘を言ったことある?ないよね?どうして信じないの?」
「だって……ヒョンはきっと、流されてるだけです」
だからこのまま続けちゃダメなんです。ってジョンデは言った。
伝わらなくて、なんて焦れったい。こんなに好きなのに。
「もー!僕だって譲れないことはあるんだからね!」
気付いたら叫んでいた。
「ヒョン……」
「終わるのはダメ!続けるの!」
自分でも子どもじみてるって分かってるけど。ダメなものはダメだ。
「ねぇ、ジョンデ。僕は鈍感だから君がどんな風に何を思って僕と1ヶ月過ごしたのかは分からないけど、僕が君を好きになるのに1ヶ月は十分だったよ。長すぎたくらい」
だからこれは1ヶ月なんて期間で終わるものじゃないんだ。
だって、僕らはこんなにも愛し合ってる。
「ヒョン、僕……ずっとヒョンのことが好きだったんです。だから、1ヶ月だけでも恋人にしてもらえたらきっと、その思い出だけで生きてけるんじゃないかって思ったんです……だから……」
「うん……」
「だけど……1ヶ月は僕にとって長すぎました。毎日が幸せで、終わりが近付くのが怖かった……これ以上好きになっちゃいけないって分かってたのに、ヒョンの腕の中が心地よすぎて。でもヒョンは僕のことなんか好きじゃないんだって、ただ付き合ってるだけなんだって思ったら堪らなく辛かった」
「だったら……」
「えぇ、だから。だからこのまま、幸せなまま終わりたいんです。幸せな1ヶ月だったなって綺麗なまま……」
ねぇ、ジョンデ。そんなの間違ってるよ。
「綺麗な思い出にして終わるなんて間違ってると思う。ジョンデはずっと過去にしがみついて生きていくの?違うよね?」
だって僕らはまだまだ未来を見ることができるんだから。
少しの沈黙の後、引かない僕にジョンデは困ったように笑った。
「…………ヒョン、僕の負けです」
「え……?」
瞬間、ジョンデが抱き付いていて、僕の耳元で囁いた。
「ヒョン、好きって言ってください。僕のことが好きだって……」
「ジョンデが、好き」
「……僕も、ヒョンが好きです……だから僕と、」
付き合ってください。
囁かれた言葉に、僕は大きな声で返事していた。
そっか、もう一度告白すればよかったんだ。言葉も知らない、気も利かない僕は、それでも君を想う気持ちだけは誰にも負けないから、だからどうか多目に見てほしいだなんて我が儘かな?
僕は愛しいジョンデの首に、耳元に、唇を寄せて思い切り抱き締めた。
おわり