〇〇とチェン
161117 幼馴染み ベクチェン
*幼馴染みケンカップル(未満)
「やー!ベッキョナ!!僕待っててって言ったよねぇ!?」
「え……?あ、あは!」
「またそうやって誤魔化すー!!」
現在高校生の僕たちが知り合ったのは今からずーっとずーっと昔、物心もつく前のこと。市営住宅のお隣同士で保育園も小学校も中学校も高校も、ずっと一緒に歩んできた。身長も似たり寄ったりなら、成績も似たり寄ったり。二人とも兄がいたけど、同い年の僕らは団地の公園の砂場の頃からいつも二人で遊んでいた。ベッキョンが悪さをして僕がそれを笑って、結局いつも二人で怒られてたんだ。
高校ではクラスは離れたけど、僕らは相変わらず二人でつるんでいた。
「だってほら、新作ゲームが今日発売だったの思い出してさぁ、お前の委員会とか待ってられなくて」
「もー!!いっつもゲームばっかりなんだからぁ!」
朝、今日僕は美化委員で図書室の掃除があるから待っててって言ったのに、掃除が終わってスマホを見てみれば、ベッキョンから「先に帰る」とメッセージが入っていて。怒って帰ってくればこの有り様だ。
ベッキョンに於いて、ゲームは何よりも優先事項なのは分かっている。昔からゲームが始まれば不得意な僕は放って置かれて。だから僕は余計にゲームが嫌いになったくらい。
「ベッキョナのバカ!!」
そう言い捨ててベッキョンの部屋を飛び出すかと思いきや、結局行くところもなく留まる僕。プンプン怒りながらも、ベッキョンの漫画を取り出してベッドへと寝転んだ。
「ジョンデや、怒るなら自分ち帰れよ」
「怒ってないもん!」
「怒ってんじゃん」
「怒ってない!!」
僕の方を見もしないでそんなことを言うベッキョンに更に苛ついたけど、だからこそ僕は余計に動かないことを決めた。
ベッキョンがゲームをして、僕が横で漫画を読んでいることなんていつものことだ。いつものことだけど、今日は殊更癪に障る。
「ねぇ!これの新刊は!?」
「んー?まだ買ってない」
「なんで!?早く買ってよ!続き気になるんだから」
「だったらお前が買えよ」
「やだ」
僕はこれでも外では"いい子"で通っている。親の言うことも先生の言うこともよく聞くし、よく気がつくし、ベッキョンと違って真面目だ。
だけど唯一僕がわがままになるとすれば、それはベッキョンの前でだけだった。
どうしてだか分からないけど、ただ飾らなくていい、ありのままの自分でいていい、とベッキョンといると思えるのだ。だからベッキョンといるときだけは、僕の性格が変わってしまうらしい。知らずに着けている鎧がぽろりととれてしまう感覚。許されている感覚。
「ベッキョナー、お腹すいた!」
「あぁ?」
「なんかお菓子ないの?」
「んー、その辺にない?」
「ない!」
「じゃあ食っちゃったんじゃねぇ?」
「えぇー!」
寝転んだベッドの上でバタバタと足をばたつかせて抗議をすれど、無いものはないらしい。
「買ってきてー!」
「はぁ?いつも食うのお前だろ?」
「だってここベッキョナの家じゃん!」
「じゃあ帰れよ」
「やだ」
「やだやだばっかりだな、ってうわっ!!!あぁー!!!うわっ!くそっ!」
「あはは!死んじゃった!?」
ゲーム機の前でオーバーリアクションを振るうベッキョンに向かってきゃははと笑えば、コントローラーを投げつけたベッキョンがベッドへと飛び乗ってきた。
「お前のせいだぁぁぁぁ!!!」
「わぁぁぁぁ!!!」
寝そべる僕の上にまたがってコブラツイストをかけられて、僕は笑いながら「ギブギブ!!」なんてベッキョンの腕を叩く。
「ジョンデがごちゃごちゃ煩いから負けたじゃんか!!」
「あははは!!ざまあみろ!」
べーっと舌を出して笑うとまた関節技をきめられた。
「僕のこと置いてゲームばっかりしてるからぁ!!」
「うるせぇー!」
「一緒に帰ろうって言ったのに!」
「お?ジョンデくんは怒ってなかったんじゃないのかい?」
「……怒ってないもん」
「怒ってんじゃん」
「怒ってない!!」
「ははははは!」
思わず尖らせた唇を摘ままれて、膨らました頬は潰された。
「ぶぅー」
「ま、俺は?お前が怒ってる本当の理由とか知ってるし?別に、いいんだけどね」
「……なにそれ」
「どうせアレだろ。俺が今日1組の女子に告られたとか噂聞いたんだろ?」
「……」
図星だし……
「ははは!!俺がお前を差し置いて彼女とか作るわけないじゃん!可哀想なお前を残して俺だけ幸せになるとか、悪いじゃん?」
「ムカつく……」
あってるようで的外れなその言葉を聞いて、僕は余計に苛立ちが募った。
「そんな余裕でいられるの今だけなんだからね!!」
「ははははは!」
バシンと叩いて蹴って、蹴り落として。ずるりとベッドから落ちたベッキョンは「さぁ二回戦やるか!」なんて言ってまたコントローラーを握った。
ばーか!ばーか!ばーか!
ベッキョニのばーか!!!
彼女なんか作ったら、ホントに絶交してやる!!
僕より優先するものなんて、許さないんだ!!
おわり
*幼馴染みケンカップル(未満)
「やー!ベッキョナ!!僕待っててって言ったよねぇ!?」
「え……?あ、あは!」
「またそうやって誤魔化すー!!」
現在高校生の僕たちが知り合ったのは今からずーっとずーっと昔、物心もつく前のこと。市営住宅のお隣同士で保育園も小学校も中学校も高校も、ずっと一緒に歩んできた。身長も似たり寄ったりなら、成績も似たり寄ったり。二人とも兄がいたけど、同い年の僕らは団地の公園の砂場の頃からいつも二人で遊んでいた。ベッキョンが悪さをして僕がそれを笑って、結局いつも二人で怒られてたんだ。
高校ではクラスは離れたけど、僕らは相変わらず二人でつるんでいた。
「だってほら、新作ゲームが今日発売だったの思い出してさぁ、お前の委員会とか待ってられなくて」
「もー!!いっつもゲームばっかりなんだからぁ!」
朝、今日僕は美化委員で図書室の掃除があるから待っててって言ったのに、掃除が終わってスマホを見てみれば、ベッキョンから「先に帰る」とメッセージが入っていて。怒って帰ってくればこの有り様だ。
ベッキョンに於いて、ゲームは何よりも優先事項なのは分かっている。昔からゲームが始まれば不得意な僕は放って置かれて。だから僕は余計にゲームが嫌いになったくらい。
「ベッキョナのバカ!!」
そう言い捨ててベッキョンの部屋を飛び出すかと思いきや、結局行くところもなく留まる僕。プンプン怒りながらも、ベッキョンの漫画を取り出してベッドへと寝転んだ。
「ジョンデや、怒るなら自分ち帰れよ」
「怒ってないもん!」
「怒ってんじゃん」
「怒ってない!!」
僕の方を見もしないでそんなことを言うベッキョンに更に苛ついたけど、だからこそ僕は余計に動かないことを決めた。
ベッキョンがゲームをして、僕が横で漫画を読んでいることなんていつものことだ。いつものことだけど、今日は殊更癪に障る。
「ねぇ!これの新刊は!?」
「んー?まだ買ってない」
「なんで!?早く買ってよ!続き気になるんだから」
「だったらお前が買えよ」
「やだ」
僕はこれでも外では"いい子"で通っている。親の言うことも先生の言うこともよく聞くし、よく気がつくし、ベッキョンと違って真面目だ。
だけど唯一僕がわがままになるとすれば、それはベッキョンの前でだけだった。
どうしてだか分からないけど、ただ飾らなくていい、ありのままの自分でいていい、とベッキョンといると思えるのだ。だからベッキョンといるときだけは、僕の性格が変わってしまうらしい。知らずに着けている鎧がぽろりととれてしまう感覚。許されている感覚。
「ベッキョナー、お腹すいた!」
「あぁ?」
「なんかお菓子ないの?」
「んー、その辺にない?」
「ない!」
「じゃあ食っちゃったんじゃねぇ?」
「えぇー!」
寝転んだベッドの上でバタバタと足をばたつかせて抗議をすれど、無いものはないらしい。
「買ってきてー!」
「はぁ?いつも食うのお前だろ?」
「だってここベッキョナの家じゃん!」
「じゃあ帰れよ」
「やだ」
「やだやだばっかりだな、ってうわっ!!!あぁー!!!うわっ!くそっ!」
「あはは!死んじゃった!?」
ゲーム機の前でオーバーリアクションを振るうベッキョンに向かってきゃははと笑えば、コントローラーを投げつけたベッキョンがベッドへと飛び乗ってきた。
「お前のせいだぁぁぁぁ!!!」
「わぁぁぁぁ!!!」
寝そべる僕の上にまたがってコブラツイストをかけられて、僕は笑いながら「ギブギブ!!」なんてベッキョンの腕を叩く。
「ジョンデがごちゃごちゃ煩いから負けたじゃんか!!」
「あははは!!ざまあみろ!」
べーっと舌を出して笑うとまた関節技をきめられた。
「僕のこと置いてゲームばっかりしてるからぁ!!」
「うるせぇー!」
「一緒に帰ろうって言ったのに!」
「お?ジョンデくんは怒ってなかったんじゃないのかい?」
「……怒ってないもん」
「怒ってんじゃん」
「怒ってない!!」
「ははははは!」
思わず尖らせた唇を摘ままれて、膨らました頬は潰された。
「ぶぅー」
「ま、俺は?お前が怒ってる本当の理由とか知ってるし?別に、いいんだけどね」
「……なにそれ」
「どうせアレだろ。俺が今日1組の女子に告られたとか噂聞いたんだろ?」
「……」
図星だし……
「ははは!!俺がお前を差し置いて彼女とか作るわけないじゃん!可哀想なお前を残して俺だけ幸せになるとか、悪いじゃん?」
「ムカつく……」
あってるようで的外れなその言葉を聞いて、僕は余計に苛立ちが募った。
「そんな余裕でいられるの今だけなんだからね!!」
「ははははは!」
バシンと叩いて蹴って、蹴り落として。ずるりとベッドから落ちたベッキョンは「さぁ二回戦やるか!」なんて言ってまたコントローラーを握った。
ばーか!ばーか!ばーか!
ベッキョニのばーか!!!
彼女なんか作ったら、ホントに絶交してやる!!
僕より優先するものなんて、許さないんだ!!
おわり