その他
「ジョンイナ、歌って?」
「俺が?」
「そう、」
「なんで?そういうのはヒョンの担当じゃん」
「いいから。お前の歌が聴きたいんだもん」
憂鬱な昼下がりの午後に、ジョンインの歌声はとても似合うと思う。
気怠げで、甘い。
少し鼻にかかった低い声は、砂糖の入れ過ぎたコーヒーのように甘ったるくてジョンインにぴったりだ。恥ずかしそうにはにかむ表情も、屈託なく笑う笑顔も、襲うような鋭い目つきも、全部僕が知るジョンインで。誰にもあげないよ、っていつだか笑ってジョンインに言ったら、そんなこと言うのジョンデヒョンくらいだよって笑っていた。
そんなことを思い出しながら鼻歌のように歌ってくれるジョンインを見つめていると、どうしようもなく愛しく思えて、ギュッと首元に抱きついていた。
「ちょっとヒョン、せっかく歌ってあげてたのに」
「だって、ジョンイナが可愛かったから」
「だからそんなこと言うのヒョンだけだって」
「そうだよ、僕だけ。他にもいたら困るし」
くすくすと笑いながら少し上にあるジョンインの瞳を見つめれば、降参しましたとばかりにジョンインも笑った。
僕の自慢の弟、僕の自慢の恋人。
「ヒョン、」
「んー?」
「今度はヒョンが歌って」
「え~、ヒョンが?何がいい?」
「う~ん、じゃあさ、ほらアレ。前に歌ってくれたヒョンが好きだって言ってたやつ」
「あぁ、あれ?」
目を瞑って、囁くように歌う。
この歌はジョンインにだけ伝わればいいんだ。
世界中の誰でもなく、今目の前にいるキムジョンインという男に。
好きだよ、と愛を囁くように歌う僕の愛の歌は、きっとジョンインにだって伝わっているだろう。だって、さっき僕はジョンインの歌から伝わったから。好きだよ、なんて普段は言わないくせに。
そっと重ねられて握られた手に驚いて目を開ければ、ジョンインは相変わらず甘ったるい瞳で僕を見ていた。
僕は少し笑って歌い続けた。
そしたらジョンインの甘ったるい瞳にも笑みが浮かんで。絡められた指が、ぎゅっと僕の手を包んだ。
僕はいてもたってもいられずに、目の前のジョンインに抱きつく。膝に跨って乗り上げる僕に、ジョンインは「ちょっと、ヒョン!」と笑った。
「もう歌ってくんないの?」
「うん、もうおしまい」
「えー、もっと聴きたかったのに」
「じゃあ歌ってもいいけど?」
「やっぱダメ」
「ほらぁ!」
僕たちは笑って、それからキスをした。
ジョンインの歌声より甘ったるいキスを。
砂糖の溶け残ったコーヒーのように、甘ったるくてほろ苦くて。
僕はそういうジョンインのキスと歌が好きなんだ。
おわり
「俺が?」
「そう、」
「なんで?そういうのはヒョンの担当じゃん」
「いいから。お前の歌が聴きたいんだもん」
憂鬱な昼下がりの午後に、ジョンインの歌声はとても似合うと思う。
気怠げで、甘い。
少し鼻にかかった低い声は、砂糖の入れ過ぎたコーヒーのように甘ったるくてジョンインにぴったりだ。恥ずかしそうにはにかむ表情も、屈託なく笑う笑顔も、襲うような鋭い目つきも、全部僕が知るジョンインで。誰にもあげないよ、っていつだか笑ってジョンインに言ったら、そんなこと言うのジョンデヒョンくらいだよって笑っていた。
そんなことを思い出しながら鼻歌のように歌ってくれるジョンインを見つめていると、どうしようもなく愛しく思えて、ギュッと首元に抱きついていた。
「ちょっとヒョン、せっかく歌ってあげてたのに」
「だって、ジョンイナが可愛かったから」
「だからそんなこと言うのヒョンだけだって」
「そうだよ、僕だけ。他にもいたら困るし」
くすくすと笑いながら少し上にあるジョンインの瞳を見つめれば、降参しましたとばかりにジョンインも笑った。
僕の自慢の弟、僕の自慢の恋人。
「ヒョン、」
「んー?」
「今度はヒョンが歌って」
「え~、ヒョンが?何がいい?」
「う~ん、じゃあさ、ほらアレ。前に歌ってくれたヒョンが好きだって言ってたやつ」
「あぁ、あれ?」
目を瞑って、囁くように歌う。
この歌はジョンインにだけ伝わればいいんだ。
世界中の誰でもなく、今目の前にいるキムジョンインという男に。
好きだよ、と愛を囁くように歌う僕の愛の歌は、きっとジョンインにだって伝わっているだろう。だって、さっき僕はジョンインの歌から伝わったから。好きだよ、なんて普段は言わないくせに。
そっと重ねられて握られた手に驚いて目を開ければ、ジョンインは相変わらず甘ったるい瞳で僕を見ていた。
僕は少し笑って歌い続けた。
そしたらジョンインの甘ったるい瞳にも笑みが浮かんで。絡められた指が、ぎゅっと僕の手を包んだ。
僕はいてもたってもいられずに、目の前のジョンインに抱きつく。膝に跨って乗り上げる僕に、ジョンインは「ちょっと、ヒョン!」と笑った。
「もう歌ってくんないの?」
「うん、もうおしまい」
「えー、もっと聴きたかったのに」
「じゃあ歌ってもいいけど?」
「やっぱダメ」
「ほらぁ!」
僕たちは笑って、それからキスをした。
ジョンインの歌声より甘ったるいキスを。
砂糖の溶け残ったコーヒーのように、甘ったるくてほろ苦くて。
僕はそういうジョンインのキスと歌が好きなんだ。
おわり