ルハンとシウミン
140224 繋がる空
はじめはそう、同い年とかそんな理由だったと思う。それから気が合うなとか。一緒にいて楽だなとか。
一日離れていれば、何してるかなぁとか考えたりして。そんな時に例えば綺麗な夕日を見たりなんかしたら、あぁ一緒に見たかったなぁとか思うようになって。
だから、故郷の濁った空に珍しく少しだけ星が見えた時、たまらなくミンソクに会いたくなったんだ。
──星が見えたよ
手に握る小さな画面に打ち込んで、恥ずかしくなって慌てて消した。こんなこと会ったときにでも直接言えばいいじゃないか。そう思ってちょっと笑った。
僕は重くどんよりとした空の下で育った。僕の性格に屈折した部分があるとしたら、それはこの空のせいだろう。言語の違う場所で初めて見上げた空は抜けるように青かったのを覚えている。僕もあんな空の下で育ったらミンソクみたいに素直に育ったんだろうか、なんて。
ミンソクは僕のつまらない話でもいつも耳を傾けてくれる。ルハナって呼んで笑ってくれる。その笑顔を誰よりも僕に向けてくれることが、何よりも嬉しかった。心地よくて幸せになる。だから僕はその場所を守ろうといつも必死なんだ。ミンソクの隣は僕の場所。
プルルルル……
手の中のそれが震えて着信を知らせるように画面が光った。表示された名前を見て心が踊る。
「もしもし?」
『よっ!』
「なに?どうしたの?」
『別にー。何してるかなぁと思って』
「何って……ミンソクのこと考えてた」
『はは!なんだそれ』
「会いたいなぁと思って……」
ぽろっと溢れた僕の本音。
「なんてね!」
恥ずかしくなって笑って誤魔化したのに、ミンソクは「うん、そうだな」って呟いた。
『なぁ、今どこ?』
「え……?あぁ、家だよ。自分の部屋」
『外、見える?』
「ん?うん、見えるよ」
というより、さっきからずっと窓から空を見上げている。
『こっち今日すごい星が綺麗なんだけど、そっちは相変わらず濁ってるの?』
いつか話した故郷の濁った空の話。
「……ううん、あのね、珍しく星が見える」
さっき送ろうとして消した言葉。
『そっか。じゃあ同じ星を見てるのかな』
はは、なんちゃって。
ミンソクは恥ずかしそうに笑う。
その時、僕らの空は確かに繋がった気がした。
「なに?どうしたの?」
『いやぁ、クリスの受け売り?』
「はは!なにそれ」
『たまに電話でジュンミョンに言ってるからさ』
あいつよくこんな恥ずかしいことさらっと言えるよな、ってミンソクはさらに笑った。
「っていうかさぁ、」
『んー?』
「僕たち毎日朝から晩まで一緒にいたっていうのに、何日か離れたくらいで僕に電話してくるなんて、ミンソギってよっぽど友達いないの?」
舞い上がる気持ちを押さえて溢れた言葉。ミンソクは面食らったのか、一瞬沈黙した後、あはは、といつもの高い声で笑った。
『そうかもな!』
「ねぇ、帰ったら買い物行こうよ」
『お?いいよ』
「やった!」
異国の言葉も空気も食べ物も、もうすっかり僕に馴染んでいる。
それはきっとミンソクのおかげ。
さらりと出てくる言語に僕は小さな幸せを噛み締めた。
おわり
はじめはそう、同い年とかそんな理由だったと思う。それから気が合うなとか。一緒にいて楽だなとか。
一日離れていれば、何してるかなぁとか考えたりして。そんな時に例えば綺麗な夕日を見たりなんかしたら、あぁ一緒に見たかったなぁとか思うようになって。
だから、故郷の濁った空に珍しく少しだけ星が見えた時、たまらなくミンソクに会いたくなったんだ。
──星が見えたよ
手に握る小さな画面に打ち込んで、恥ずかしくなって慌てて消した。こんなこと会ったときにでも直接言えばいいじゃないか。そう思ってちょっと笑った。
僕は重くどんよりとした空の下で育った。僕の性格に屈折した部分があるとしたら、それはこの空のせいだろう。言語の違う場所で初めて見上げた空は抜けるように青かったのを覚えている。僕もあんな空の下で育ったらミンソクみたいに素直に育ったんだろうか、なんて。
ミンソクは僕のつまらない話でもいつも耳を傾けてくれる。ルハナって呼んで笑ってくれる。その笑顔を誰よりも僕に向けてくれることが、何よりも嬉しかった。心地よくて幸せになる。だから僕はその場所を守ろうといつも必死なんだ。ミンソクの隣は僕の場所。
プルルルル……
手の中のそれが震えて着信を知らせるように画面が光った。表示された名前を見て心が踊る。
「もしもし?」
『よっ!』
「なに?どうしたの?」
『別にー。何してるかなぁと思って』
「何って……ミンソクのこと考えてた」
『はは!なんだそれ』
「会いたいなぁと思って……」
ぽろっと溢れた僕の本音。
「なんてね!」
恥ずかしくなって笑って誤魔化したのに、ミンソクは「うん、そうだな」って呟いた。
『なぁ、今どこ?』
「え……?あぁ、家だよ。自分の部屋」
『外、見える?』
「ん?うん、見えるよ」
というより、さっきからずっと窓から空を見上げている。
『こっち今日すごい星が綺麗なんだけど、そっちは相変わらず濁ってるの?』
いつか話した故郷の濁った空の話。
「……ううん、あのね、珍しく星が見える」
さっき送ろうとして消した言葉。
『そっか。じゃあ同じ星を見てるのかな』
はは、なんちゃって。
ミンソクは恥ずかしそうに笑う。
その時、僕らの空は確かに繋がった気がした。
「なに?どうしたの?」
『いやぁ、クリスの受け売り?』
「はは!なにそれ」
『たまに電話でジュンミョンに言ってるからさ』
あいつよくこんな恥ずかしいことさらっと言えるよな、ってミンソクはさらに笑った。
「っていうかさぁ、」
『んー?』
「僕たち毎日朝から晩まで一緒にいたっていうのに、何日か離れたくらいで僕に電話してくるなんて、ミンソギってよっぽど友達いないの?」
舞い上がる気持ちを押さえて溢れた言葉。ミンソクは面食らったのか、一瞬沈黙した後、あはは、といつもの高い声で笑った。
『そうかもな!』
「ねぇ、帰ったら買い物行こうよ」
『お?いいよ』
「やった!」
異国の言葉も空気も食べ物も、もうすっかり僕に馴染んでいる。
それはきっとミンソクのおかげ。
さらりと出てくる言語に僕は小さな幸せを噛み締めた。
おわり