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ルハンとシウミン

ねぇ、知ってるよ。

セフンのスキなヒト。





あの子が「ルハニヒョーン」なんて甘えた声を出すのは、ミンソクがいるときだけだ。
詰めが甘いんだよ、バカ。
そんなセフンを横目にミンソクに微笑む僕は、なんて悪魔なんだろう。そうして僕に微笑み返してくれるミンソクを見せつける。

ミンソクはダメ。
可愛いセフンでもあげられないよ。



「シャオルゥなんかキライ」
「何、急に」
「キライだからキライって言ったの!」
「こっちこそお前になんかに好かれたくないよ」

聡いタオはどこまで気づいてるんだか。
あいつも大概バカだと思う。まぁ、僕もか。

バブルティーよりコーヒーを好むようになったのはいつ頃だったろうか。少しでもミンソクに近づきたくて、同じものを飲んで同じものを食べた。人を好きになることは、その人に似ていくことだと思う。ただでさえ僕たちは国も言葉も違うのだから。そんな変えようのない事実を、そうやって1つずつ埋めていく作業は、酷く幸せな時間だった。新しい自分がどんどんと出来上がっていく幸せ。

ミンソクが僕の気持ちを受け入れないことは分かっている。
長兄だから?
セフンに遠慮してるから?

違う。臆病だからだ。

人と違うことを恐れるミンソクは、僕の気持ちなんて受け入れないどころか、向き合おうともしないだろう。たった一人の中国人の友達、だなんて酷すぎる。それも「クリスはカナダ人の友達だから」なんて理由もつけて。
そうして僕は大事に大事に特別に綺麗な箱を用意されて入れられる。『親友』という名の箱。


「ねぇ、セフナ。久しぶりにバブルティーでも飲みに行こうか」
「え……はい!」


僕がこの子を甘やかすのはミンソクが可愛がってる弟だからだ。目一杯可愛がって甘やかす。少しでも妬いてくれたらいい。そんな想いをのせて。狡い?うん、そうかもね。でも残念ながら僕はセフンのことも大好きなんだ。あの子がどう思っていようが、僕にとっては可愛い弟だから、思惑はあれど甘やかすのは当たり前の行為でもある。



「セフナ、僕ね、」

ミンソクが好きなんだ。


そうやって秘密めいた告白をしたのはまだデビュー前のことだ。
その頃はこうやってみんなでひとつのグループでデビューできるなんて思ってもみなかった。牽制?そうかもしれない。ただ、必死だったんだ。自分より4つも年下の子に取られたくないと思うくらいには。


「軽蔑する?」

問うとセフンは緩く頭を振った。

その時セフンの笑顔が歪んだのをよく覚えている。この子は表情の乏しい子なんかじゃない。その純粋な目はいつも雄弁に語っている。


「ありがとう」




ねぇ、セフナ。
こんな狡い大人になんか、なっちゃダメだよ。

お前は綺麗でいてくれなくちゃ。
僕の良心なんだから、さ。







おわり
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