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ルハンとシウミン

140216 大雪ですね



「げ……」

授業を終えて講堂から出ると、外は一面真っ白で。どうりで寒いと思ったよ、なんて意味のないことを呟いた。
傘もないし。その前にこれじゃ交通も麻痺だろう。
仕方ない、歩いて帰るか。そう思って踏み出そうとした瞬間、背中から声がかかった。

「ミンソガー!」
「おう、ルハナ。お前も終わり?」
「うん。それにしても、すごい雪だねー」
「ホント、まったくだよ」

そういえば、と思い出して続ける。

「お前、帰りどうすんの?」

ルハンの家は電車を乗り継いで一時間のところだ。

「あぁー、どうしよう」

動いてないよねぇ、と呟いて空を見上げたルハンに釣られて自分も空を見上げた。大粒の綿みたいな雪が音もなく深々と舞い落ちる。空の上の上の方から落ちてくるそれは徐々に大きくなってきて顔へと当たった。

「冷たっ……」
「はは!」

鼻先濡れてるよ、とルハンが袖口で拭ってくれた。

「サンキュ」
「ミンソギは?バス大丈夫?」
「いや、多分ダメだわ。待ってる時間考えたら歩いた方が早いから、歩いて帰る」
「いいなぁ、近くて……」
「お前もアパート借りたら?」
「むーりー」

あはは、と笑って「とりあえず駅まで行ってみる」とルハンは言う。

「そのうち動き出すかもしれないし」
「動かなかったら?」

俺が言うとルハンは目を丸くして「え、どうしよ……」と眉を下げた。

「はは!……ウチ来いよ」
「え?いいの?」
「家まで歩きでもいいなら」
「そんなの……」

いいに決まってるじゃーん!と抱きつかれた。

「やめろって!もう!」
「ね、泊まってもいい?」
「えー」
「やった!決まりね!」
「おい」

ルハンに肩に手を回されて、俺たちはせーので講堂から飛び出した。途中のコンビニでビニル傘を一本と缶コーヒー二つを買って。
家に着く頃には傘の上には雪がこんもりと乗っていた。


「たまには大雪もいいね」
「なんで?」
「ミンソクの家に泊まれるから」
「ばーか」
「ははは!」

でも、カイロ代わりの缶コーヒーは冷めちゃったけど、一人きりじゃないルハンがいるこの部屋は少しだけ暖かい気がするから、たまにはこんなこともいいかなぁ、なんて。
ストーブの稼働音を聞きながら、やかんを火に掛けた。

「風呂入るなら、どーぞ」
「え、ミンソガ……」
「なに?」
「積極的だね」
「……こら!」
「あはは!うそうそ!」

ルハンは綺麗な瞳を三日月形に曲げて笑うと、キッチンの壁に凭れる俺のそばに来て詰め寄った。

「でも僕、ミンソクのこと好きだから、我慢できなかったらゴメンね」

綺麗な笑みを浮かべて至近距離から見下ろされて、さっきルハンの袖口に拭われた鼻先が今度はルハンの鼻先と当たりそうで、顔面に血が昇った。

「……な、ルハナァ!!」

「はは!ごめん!」
「もう……心臓に悪いから」
「あはははは!だってあんまり可愛いから」

だから可愛いって言うなよ。



でもまぁ、ルハンの言うとおりたまには大雪もいいかもしれない。

なんて。


おわり
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