その他
160610 モンスター(シウチェン)
ジョンデや、俺のジョンデ……
いつだって気付けばそばにいた弟を、俺はどうしてそういう目で見るようになったんだろうな。
自分でも不思議で仕方がないんだ。
ただ……そう、ただ、いつの間にかお前が隣で笑ってないと気持ち悪いような気がしてきて、お前がいれば無敵になれるような気がしたんだ。
ジョンデが隣で笑ってくれさえいれば、どんなものでも打ち勝てるような、そんな心強さ。
自分が足りない人間だなんて自覚はあって、それを埋めてくれたのがジョンデだったのかもしれない。
もう、あいつのいない人生なんて考えられないんだ。
俺たちはたくさんのものを失って共に歩んできた。だけどその中で得たものがあったとしたら、それは間違いなくジョンデの笑顔だったんだと思う。
ミンソギヒョン!って屈託なく笑うから、俺はいつでもその笑顔に助けられてきた。
誰にも渡したくないような、それでいてみんなに自慢したいような、そんな酷く複雑な気持ちを飼い殺している。
そっと覗いたジョンデの寝顔は、睫毛が綺麗に伏せられていて、心臓がぎゅっと痛んだ。
俺のジョンデ……
「ヒョン、分かりやすすぎ」
そう言って笑ったのはベッキョンだった。
「誰もジョンデのことなんか取らないって!」
「いや、別にそういう訳じゃ……!」
「じゃあどういう訳ですか?ヒョンがジョンデを囲おうとしてることなんて、誰が見たってすぐに分かりますよ」
そんなにあいつがいいんですか?って、茶化しながら可笑しそうに言うから、俺はもう苦笑するしかなかった。
そんなにあいつがいいんだ。
いつだって隣で無邪気に笑うジョンデが。あいつが、そばいにないと今の俺は呼吸すら危うい。
寝顔を眺めて、するりと頬を撫でて。今日も同室のベッドに潜る。
健やかな呼吸の音やら布団の掠れる音やら。目を瞑って耳を済ませばすぐそこに感じられるジョンデの気配。
今日もずっとそばにいた。
今日もずっと話してた。
今日もずっと隣にいた。
今日もずっと、笑いあってた。
大事な弟。
大事な、大事な……
その先の言葉を、今日もそっと飲み込む。
俺の中のモンスターが今日も出口を求めて暴れていた。
嫉妬、恐怖、独占欲……
そんなものを従えた俺のモンスター。
暴れるな。暴れないでくれ。
吐き出してしまいそうになる。
「ヒョン……」
そっと囁かれた言葉。
「……起きてる?」
「うん、あぁ……」
「明日、レイヒョン帰ってくるんですよね」
「…………あぁ」
聞きたくはなかった言葉に、耳が拒否反応を示した。
ジョンデが、愛してやまないその名前……
張り裂けそうな心臓。
暴れだしそうな俺のモンスター。
「楽しみで……そしたらフッて目が覚めちゃって。バカみたいでしょ?」
砕けて話すようになったのはいつからだったか。縮まったような気でいた距離は、縮めるべきところを間違えていたのだと気付く。
俺はやっぱり足りない兄で、パボヒョンだ。
それでもジリジリと縮まってる距離に、心臓の裏っかわがくすぐったくなるほどには嬉しかったんだから。
「ずっと離れ離れだから、ちょっと淋しいっていうか……僕とミンソギヒョンとの間にあるみたいな日常が、レイヒョンとの間に最近はないから……」
やっぱり一緒の空間で笑っていたいでしょ?ってジョンデは呟いた。その声が、淋しさを滲ませてることに気づける自分が悲しかった。
俺のモンスターが蠢く。
宥めるように撫でて、抱き締めて、俺はモンスターを飼い慣らす。
ジョンデの、"気の置けない大好きなヒョン"、でいるために。
おわり
ジョンデや、俺のジョンデ……
いつだって気付けばそばにいた弟を、俺はどうしてそういう目で見るようになったんだろうな。
自分でも不思議で仕方がないんだ。
ただ……そう、ただ、いつの間にかお前が隣で笑ってないと気持ち悪いような気がしてきて、お前がいれば無敵になれるような気がしたんだ。
ジョンデが隣で笑ってくれさえいれば、どんなものでも打ち勝てるような、そんな心強さ。
自分が足りない人間だなんて自覚はあって、それを埋めてくれたのがジョンデだったのかもしれない。
もう、あいつのいない人生なんて考えられないんだ。
俺たちはたくさんのものを失って共に歩んできた。だけどその中で得たものがあったとしたら、それは間違いなくジョンデの笑顔だったんだと思う。
ミンソギヒョン!って屈託なく笑うから、俺はいつでもその笑顔に助けられてきた。
誰にも渡したくないような、それでいてみんなに自慢したいような、そんな酷く複雑な気持ちを飼い殺している。
そっと覗いたジョンデの寝顔は、睫毛が綺麗に伏せられていて、心臓がぎゅっと痛んだ。
俺のジョンデ……
「ヒョン、分かりやすすぎ」
そう言って笑ったのはベッキョンだった。
「誰もジョンデのことなんか取らないって!」
「いや、別にそういう訳じゃ……!」
「じゃあどういう訳ですか?ヒョンがジョンデを囲おうとしてることなんて、誰が見たってすぐに分かりますよ」
そんなにあいつがいいんですか?って、茶化しながら可笑しそうに言うから、俺はもう苦笑するしかなかった。
そんなにあいつがいいんだ。
いつだって隣で無邪気に笑うジョンデが。あいつが、そばいにないと今の俺は呼吸すら危うい。
寝顔を眺めて、するりと頬を撫でて。今日も同室のベッドに潜る。
健やかな呼吸の音やら布団の掠れる音やら。目を瞑って耳を済ませばすぐそこに感じられるジョンデの気配。
今日もずっとそばにいた。
今日もずっと話してた。
今日もずっと隣にいた。
今日もずっと、笑いあってた。
大事な弟。
大事な、大事な……
その先の言葉を、今日もそっと飲み込む。
俺の中のモンスターが今日も出口を求めて暴れていた。
嫉妬、恐怖、独占欲……
そんなものを従えた俺のモンスター。
暴れるな。暴れないでくれ。
吐き出してしまいそうになる。
「ヒョン……」
そっと囁かれた言葉。
「……起きてる?」
「うん、あぁ……」
「明日、レイヒョン帰ってくるんですよね」
「…………あぁ」
聞きたくはなかった言葉に、耳が拒否反応を示した。
ジョンデが、愛してやまないその名前……
張り裂けそうな心臓。
暴れだしそうな俺のモンスター。
「楽しみで……そしたらフッて目が覚めちゃって。バカみたいでしょ?」
砕けて話すようになったのはいつからだったか。縮まったような気でいた距離は、縮めるべきところを間違えていたのだと気付く。
俺はやっぱり足りない兄で、パボヒョンだ。
それでもジリジリと縮まってる距離に、心臓の裏っかわがくすぐったくなるほどには嬉しかったんだから。
「ずっと離れ離れだから、ちょっと淋しいっていうか……僕とミンソギヒョンとの間にあるみたいな日常が、レイヒョンとの間に最近はないから……」
やっぱり一緒の空間で笑っていたいでしょ?ってジョンデは呟いた。その声が、淋しさを滲ませてることに気づける自分が悲しかった。
俺のモンスターが蠢く。
宥めるように撫でて、抱き締めて、俺はモンスターを飼い慣らす。
ジョンデの、"気の置けない大好きなヒョン"、でいるために。
おわり