その他
150906 リーダーとマンネ(セジュン)
「ヒョン、これ食べないんですよね?」
「あ、ちょっと……セフナ!」
セフンが横から箸で摘まみあげたのは、僕が大事に大事に取っておいて最後に食べようと思っていた特大のエビフライだ。ダメって言おうとした時にはすでにそれはセフンの口の中で。尻尾だけがぴょこんと口から飛び出していた。
あぁーあ。僕のエビフライ……
いや、エビフライだけじゃない。最近僕はよくセフンに物を取られる。なんか言葉にすると凄く物騒だけど、まぁ、取られるって言っても今みたいに最後に食べようと思って取っといたエビフライとか、大事に隠しておいたスナック菓子とか、僕のコレクションのマンガとか、お気に入りのぬいぐるみとか。まぁそういう可愛いものだから結局許しちゃうんだけど。
「……ったく」
なんて、苦笑しながら漏らせば「ヒョンは甘すぎます。だからセフンも付け上がるんですよ」とギョンスに怒られた。
エビフライは取られてギョンスには怒られて、本当に溜め息しか出ない。一方セフンはといえば、してやったりの顔でいつものようににやけていて、叩く振りをして手を振り上げれば、「ごちそうさまでしたー!」と笑いながら逃げていった。こいつめ!!
「ヒョン、どうしました?」
「……取っ捕まえる」
「はぁ?」
「だから、捕まえて懲らしめるんだよ!確かにあいつ最近酷いんだもん!」
僕が息巻いて立ち上がると、ベッキョンは盛大に笑い、チャニョルは「ヒョ、ヒョン!」と慌てふためき、ジョンインは「大人気ない」と呟いた。
いや、ちょっと待て!最後のやつ、ちゃんと聞こえてるからな!!!
とにかく、セフンを追いかけて部屋のドアを開けると、セフンは「なんで付いてきたんですか?」と笑っていた。
「セフナ!」
「は……はい?」
「分かってるよな?最近ちょっと酷いよ!?」
「最近?」
前からですけど、なんてけろりと言ってのけたセフンを捕まえて、僕は「こらぁ!」と首を絞めた。
「あはははは!ヒョン!ちょっと!苦しいですって!」
「ほら、ごめんなさいは!?」
「ギブギブ!ごめんなさい!」
必死に絞めている腕を叩いて降参するので緩めたら、セフンは相変わらずふにゃりと笑った。
「もー、いいじゃないですかぁー。そのくらい」
「そのくらいって、お前、ヒョンがあのエビフライ大事に取っておいてたの分かっててやっただろ!」
「え?そうなんですか?」
とぼけるフリをするセフンに僕はまた手を振り上げると、ひっ!と身を屈めるので、それはそれで可愛くて結局許すんだけど。
「だってぇ、ヒョンのモノは僕のモノですよね?」
「なんだよ、それ」
「え?違いましたか?」
「いつからそうなったんだよ!」
「前からですけど?ヒョンは僕のモノだから、ヒョンのモノも僕のモノでしょ?」
「はぁ?いつからヒョンはお前のモノになったんだ!?」
「さぁ?」
可愛いマンネのモノじゃ不服ですか?ってそういう事じゃないだろ!ったく!!
ちょっと前まで僕より小さくて可愛らしかったっていうのに。僕はセフンの成長に目眩がしそうだ。
愛されて愛されて、愛され過ぎて育ったセフンは、競争社会のこの世界でもとりわけ酷くのんびりとした性格に育った。極端に争いを嫌う性格はセフンが信じる神様のせいか。それとも本来の性格なのか。どうやったって周りを蹴落として突き進まなきゃいけないこの世界で、この子だけは周りに手を差し伸べるような優しさを持っていた。
そういえば、メンバーの離脱だなんだと続いた時期、正直僕は参ってしまって宿舎に帰れば部屋に籠ることが続いたことがあった。その時も何気なく手を差し伸べてくれて、ふにゃりといつもの顔で笑ってそばにいたのはセフンだった。みんながピリピリしてる中、セフンだけはいつもと変わらず笑って僕に話しかけた。くだらないからかいをしたり、ふざけた態度をとったり。僕が小言を言えるようにしてくれていたのだと気付いたのは、ごくごく最近のことだ。
「セフナ~!愛してるよ~」
「なんですか急に!」
「いいじゃん!いいじゃん!ヒョンがハグしてあげる~」
近づいてぎゅうぎゅうと抱き締めると、嫌そうに顔をしかめるから、楽しくなって更に力を込めた。
セフンは、昔からずっと唯ひとりのセフンだ。幼かったあの頃から。誰にでも染まり、そして誰にも染まらなかった。
時に不安定にぐらつきそうになる僕を、常に変わらない態度で寄り添って掴まえてくれる。僕はその存在にどれ程助けられたことか知れない。物凄い速さで変わりゆくこの世界に身を置いていて、変わらないものの存在は酷く安心感を生むのだ。
そう思うと、エビフライもスナック菓子も、マンガもぬいぐるみも、全部許せてしまうんだから簡単なものだと苦笑した。
「ヒョン、にやにやして気持ち悪いです」
「んー?セフニが可愛いからなぁ。仕方ないよなぁ」
「……うげぇ」
だってそんなものはセフンが隣にいなくなるとこに比べれば、本当に微々たるものだから。
ギョンスにまた怒られるかもなぁ、なんて思って苦笑しつつも、今日も平和に一日が終わることを、たまには僕もセフンの神様に感謝してみようかなぁと思った。
「たまにはヒョンと一緒に寝る?」
「寝ませんよ!」
おわり
「ヒョン、これ食べないんですよね?」
「あ、ちょっと……セフナ!」
セフンが横から箸で摘まみあげたのは、僕が大事に大事に取っておいて最後に食べようと思っていた特大のエビフライだ。ダメって言おうとした時にはすでにそれはセフンの口の中で。尻尾だけがぴょこんと口から飛び出していた。
あぁーあ。僕のエビフライ……
いや、エビフライだけじゃない。最近僕はよくセフンに物を取られる。なんか言葉にすると凄く物騒だけど、まぁ、取られるって言っても今みたいに最後に食べようと思って取っといたエビフライとか、大事に隠しておいたスナック菓子とか、僕のコレクションのマンガとか、お気に入りのぬいぐるみとか。まぁそういう可愛いものだから結局許しちゃうんだけど。
「……ったく」
なんて、苦笑しながら漏らせば「ヒョンは甘すぎます。だからセフンも付け上がるんですよ」とギョンスに怒られた。
エビフライは取られてギョンスには怒られて、本当に溜め息しか出ない。一方セフンはといえば、してやったりの顔でいつものようににやけていて、叩く振りをして手を振り上げれば、「ごちそうさまでしたー!」と笑いながら逃げていった。こいつめ!!
「ヒョン、どうしました?」
「……取っ捕まえる」
「はぁ?」
「だから、捕まえて懲らしめるんだよ!確かにあいつ最近酷いんだもん!」
僕が息巻いて立ち上がると、ベッキョンは盛大に笑い、チャニョルは「ヒョ、ヒョン!」と慌てふためき、ジョンインは「大人気ない」と呟いた。
いや、ちょっと待て!最後のやつ、ちゃんと聞こえてるからな!!!
とにかく、セフンを追いかけて部屋のドアを開けると、セフンは「なんで付いてきたんですか?」と笑っていた。
「セフナ!」
「は……はい?」
「分かってるよな?最近ちょっと酷いよ!?」
「最近?」
前からですけど、なんてけろりと言ってのけたセフンを捕まえて、僕は「こらぁ!」と首を絞めた。
「あはははは!ヒョン!ちょっと!苦しいですって!」
「ほら、ごめんなさいは!?」
「ギブギブ!ごめんなさい!」
必死に絞めている腕を叩いて降参するので緩めたら、セフンは相変わらずふにゃりと笑った。
「もー、いいじゃないですかぁー。そのくらい」
「そのくらいって、お前、ヒョンがあのエビフライ大事に取っておいてたの分かっててやっただろ!」
「え?そうなんですか?」
とぼけるフリをするセフンに僕はまた手を振り上げると、ひっ!と身を屈めるので、それはそれで可愛くて結局許すんだけど。
「だってぇ、ヒョンのモノは僕のモノですよね?」
「なんだよ、それ」
「え?違いましたか?」
「いつからそうなったんだよ!」
「前からですけど?ヒョンは僕のモノだから、ヒョンのモノも僕のモノでしょ?」
「はぁ?いつからヒョンはお前のモノになったんだ!?」
「さぁ?」
可愛いマンネのモノじゃ不服ですか?ってそういう事じゃないだろ!ったく!!
ちょっと前まで僕より小さくて可愛らしかったっていうのに。僕はセフンの成長に目眩がしそうだ。
愛されて愛されて、愛され過ぎて育ったセフンは、競争社会のこの世界でもとりわけ酷くのんびりとした性格に育った。極端に争いを嫌う性格はセフンが信じる神様のせいか。それとも本来の性格なのか。どうやったって周りを蹴落として突き進まなきゃいけないこの世界で、この子だけは周りに手を差し伸べるような優しさを持っていた。
そういえば、メンバーの離脱だなんだと続いた時期、正直僕は参ってしまって宿舎に帰れば部屋に籠ることが続いたことがあった。その時も何気なく手を差し伸べてくれて、ふにゃりといつもの顔で笑ってそばにいたのはセフンだった。みんながピリピリしてる中、セフンだけはいつもと変わらず笑って僕に話しかけた。くだらないからかいをしたり、ふざけた態度をとったり。僕が小言を言えるようにしてくれていたのだと気付いたのは、ごくごく最近のことだ。
「セフナ~!愛してるよ~」
「なんですか急に!」
「いいじゃん!いいじゃん!ヒョンがハグしてあげる~」
近づいてぎゅうぎゅうと抱き締めると、嫌そうに顔をしかめるから、楽しくなって更に力を込めた。
セフンは、昔からずっと唯ひとりのセフンだ。幼かったあの頃から。誰にでも染まり、そして誰にも染まらなかった。
時に不安定にぐらつきそうになる僕を、常に変わらない態度で寄り添って掴まえてくれる。僕はその存在にどれ程助けられたことか知れない。物凄い速さで変わりゆくこの世界に身を置いていて、変わらないものの存在は酷く安心感を生むのだ。
そう思うと、エビフライもスナック菓子も、マンガもぬいぐるみも、全部許せてしまうんだから簡単なものだと苦笑した。
「ヒョン、にやにやして気持ち悪いです」
「んー?セフニが可愛いからなぁ。仕方ないよなぁ」
「……うげぇ」
だってそんなものはセフンが隣にいなくなるとこに比べれば、本当に微々たるものだから。
ギョンスにまた怒られるかもなぁ、なんて思って苦笑しつつも、今日も平和に一日が終わることを、たまには僕もセフンの神様に感謝してみようかなぁと思った。
「たまにはヒョンと一緒に寝る?」
「寝ませんよ!」
おわり