その他
140915 キライだ!(ドスホ)
僕はあの人が嫌いだ。
いつもおどおどしていて口を開けば間が悪くて、クサいことを平気で言ったり。そのくせ一度信じたことは疑わない神経とか、チームのためには己を犠牲にすることもいとわないといった覚悟とか、見てて苛々する。
それは嫌悪感の一種なのかもしれない。
「ギョンスヤ~」と呼ぶ猫なで声も僕の苛々を増幅させた。
「なんですかヒョン、一度呼べば聞こえます」
「もー、冷たいなぁギョンスは」
にこにこと向けられる笑顔にも腹が立った。
いったい何がそんなに楽しいというんだ。
僕には到底わからない。
「で、なんですか」
「ああ、あのね、一緒にショッピングでも行かない?欲しいものがあったらヒョンが買ってあげるから」
ね、お願い!とヒョンは顔の前で手を合わせて見せる。片目を閉じてみたりなんかして。それがクサいということに気付いてないんだろうか。
だいたい、うちのメンバーはヒョンに対して甘すぎる。
この人がこうなったのは、僕らメンバーの責任でもあるんじゃないか、と最近はよく考えたりもする。
「ギョンスヤ~支度できた?」
「はい、今行きます」
久しぶりのヒョンとのショッピングということで、僕はお気に入りの黒いシャツに腕を通した。キャップはこの前ファンに貰った黒いのにしよう。小さな刺繍が施されていて、これも最近お気に入りだ。黒にラインの入ったスニーカーを手に玄関へ行くと、スホヒョンは笑顔で立っていた。
だから、何がそんなに楽しいんだ。
タクシーに乗って街まで向かう車内で、ヒョンはあれが見たいだのあの店に行きたいだの、ずっとペラペラとしゃべっていた。僕はそのほとんどに、はいはいと適当な相槌を打って、窓の外を眺めていた。
「ギョンスヤ、ヒョンの話聞いてる?」
「え?あぁ、はい。聞いてますよ」
その答えに安堵してか、また喋り続ける。
少しは他人を疑うということを知った方がいい。なんでも真っ直ぐ信じるところも僕は嫌いだ。
タクシーを降りて、靴や服など何件かの店をまわって、途中の雑貨屋で色違いのキャップを買った。もちろんヒョンのカードで。今日の記念に、とヒョンは言っていた。
いつもそうだ。
Tシャツも靴下も、それからこの色違いのキャップも。仕方がないから僕はいつもそれに付き合って、そうしてお揃いのものが増えていく。
「ファンの子にまたなんか言われちゃうかなぁ」
「いいんじゃないですか、別に」
「そうだよね!だって僕らは仲良しなメンバーだし!」
至極当たり前のように吐かれた言葉に、僕の口角は無意識に上がる。
今日のキャップは仕方がないから次のスケジュールの時にでも被ることにした。
「ヒョン、僕はあなたのことなんか好きじゃないって知ってますよね?」
「ん?知ってるよ」
「ならいいです」
ヒョンはいつものだらしない笑みを浮かべてて、僕はまた苛々とした。
あぁ、もう。そんな顔ファンに見られたらどうするんだ。また不細工な笑みを高画質で撮られてインターネット上に半永久的にばら蒔かれ続けてしまうじゃないか。
もう少し自己管理した方がいいっていつも言ってるのに。
「ヒョン、今不細工ですよ」
「あはは!酷いなぁギョンスは!」
「本当のことを言っただけです」
「ヒョン泣いちゃうよ?」なんて言いながら泣き真似をして肩に腕をまわそうとするので、急いで身を捩って振りほどいた。
睨みあげれば、にやけてるような傷ついてるような、複雑な顔をしていて。
「あーもー嫌いだ!あなたなんか大っ嫌いだ!!」
放っておけないところも、皮肉が通用しないところも、馬鹿みたいに真っ直ぐなところも。
大っ嫌いだ!!
「はははー!ヒョンは大好きだよ~」
おわり
僕はあの人が嫌いだ。
いつもおどおどしていて口を開けば間が悪くて、クサいことを平気で言ったり。そのくせ一度信じたことは疑わない神経とか、チームのためには己を犠牲にすることもいとわないといった覚悟とか、見てて苛々する。
それは嫌悪感の一種なのかもしれない。
「ギョンスヤ~」と呼ぶ猫なで声も僕の苛々を増幅させた。
「なんですかヒョン、一度呼べば聞こえます」
「もー、冷たいなぁギョンスは」
にこにこと向けられる笑顔にも腹が立った。
いったい何がそんなに楽しいというんだ。
僕には到底わからない。
「で、なんですか」
「ああ、あのね、一緒にショッピングでも行かない?欲しいものがあったらヒョンが買ってあげるから」
ね、お願い!とヒョンは顔の前で手を合わせて見せる。片目を閉じてみたりなんかして。それがクサいということに気付いてないんだろうか。
だいたい、うちのメンバーはヒョンに対して甘すぎる。
この人がこうなったのは、僕らメンバーの責任でもあるんじゃないか、と最近はよく考えたりもする。
「ギョンスヤ~支度できた?」
「はい、今行きます」
久しぶりのヒョンとのショッピングということで、僕はお気に入りの黒いシャツに腕を通した。キャップはこの前ファンに貰った黒いのにしよう。小さな刺繍が施されていて、これも最近お気に入りだ。黒にラインの入ったスニーカーを手に玄関へ行くと、スホヒョンは笑顔で立っていた。
だから、何がそんなに楽しいんだ。
タクシーに乗って街まで向かう車内で、ヒョンはあれが見たいだのあの店に行きたいだの、ずっとペラペラとしゃべっていた。僕はそのほとんどに、はいはいと適当な相槌を打って、窓の外を眺めていた。
「ギョンスヤ、ヒョンの話聞いてる?」
「え?あぁ、はい。聞いてますよ」
その答えに安堵してか、また喋り続ける。
少しは他人を疑うということを知った方がいい。なんでも真っ直ぐ信じるところも僕は嫌いだ。
タクシーを降りて、靴や服など何件かの店をまわって、途中の雑貨屋で色違いのキャップを買った。もちろんヒョンのカードで。今日の記念に、とヒョンは言っていた。
いつもそうだ。
Tシャツも靴下も、それからこの色違いのキャップも。仕方がないから僕はいつもそれに付き合って、そうしてお揃いのものが増えていく。
「ファンの子にまたなんか言われちゃうかなぁ」
「いいんじゃないですか、別に」
「そうだよね!だって僕らは仲良しなメンバーだし!」
至極当たり前のように吐かれた言葉に、僕の口角は無意識に上がる。
今日のキャップは仕方がないから次のスケジュールの時にでも被ることにした。
「ヒョン、僕はあなたのことなんか好きじゃないって知ってますよね?」
「ん?知ってるよ」
「ならいいです」
ヒョンはいつものだらしない笑みを浮かべてて、僕はまた苛々とした。
あぁ、もう。そんな顔ファンに見られたらどうするんだ。また不細工な笑みを高画質で撮られてインターネット上に半永久的にばら蒔かれ続けてしまうじゃないか。
もう少し自己管理した方がいいっていつも言ってるのに。
「ヒョン、今不細工ですよ」
「あはは!酷いなぁギョンスは!」
「本当のことを言っただけです」
「ヒョン泣いちゃうよ?」なんて言いながら泣き真似をして肩に腕をまわそうとするので、急いで身を捩って振りほどいた。
睨みあげれば、にやけてるような傷ついてるような、複雑な顔をしていて。
「あーもー嫌いだ!あなたなんか大っ嫌いだ!!」
放っておけないところも、皮肉が通用しないところも、馬鹿みたいに真っ直ぐなところも。
大っ嫌いだ!!
「はははー!ヒョンは大好きだよ~」
おわり