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One-week Story


チャニョル×ベッキョン×同期



「よ!」


ニョキっとまあるい頭を覗かせてやって来たのはシステム管理部のチャニョルだった。
俺の大事な同期だ。


「どうした?」
「あぁ、お宅の部長に呼ばれてパソコン教室してきた」
「ははは!すまんね、忙しいとこ」
「いえいえ、それが仕事ですから」



社内のシステムを一括して管理しているチャニョルの部署は、パソコンの修理から操作の説明から、パソコンに関することは何でもござれの部署なので、こうして機械に疎いオジサン連中に呼ばれるのはいつものことらしい。


「あ、ベッキョナ今日の飲み会来れる?」
「なんとか。7時にいつものとこでいいんだよな?」
「そうそう。ジョンデも今回は来れるって」
「全員揃うの久しぶりじゃん」


同期の中では一番の激務部署に配属になったジョンデの参加率は大体4割がいいところだ。
ま、俺も5割くらいなもんだけど。
俺のいる商品開発部は一番の花形部署なんて言われてるけど、その実結構な激務だ。大抵が納期に追われている。


「あ、チャニョリ時間まだある?」
「あぁうん、わりと」
「じゃあ休憩付き合え」
「お?いいよ!」


大木を引き連れ「ちょっと出てきまーす」なんて先輩に声を掛けて、3階のカフェまで移動した。


「相変わらず忙しそうだな」
「うんまぁ。でも納期迫ってないからまだ平気」
「そんなもん?」
「そんなもん」
「お前んとこは暇そうでいいな」
「ま、新入社員の配属も終わったしね」
「有望株はいる?」
「んー、どうだろ」


エレベーターが3階に着いてカフェまで歩いているとき、ふとチャニョルの足元を見るとズボンの裾が汚れていた。


「パソコン教室の前、なにやってたんだよ」
「ん?なんで?」
「土付いてる」


裾を指差して言えば、「あ、ホントだ」とチャニョルは立ち止まった。
土というより泥だったみたいでバサバサと払っているのに取れないよう。苦戦しているので、仕方ないなぁ、なんてしゃがんで俺も手伝った。
ごしごしと揉んで、指で強めに弾く。
何度か繰り返せばだいぶ目立たなくなった。


「さすがベッキョナ!」
「田舎者なめんな。つーかなんで泥なんてつけてんだよ」
「え?あぁ、昼前に用事あって外出した時さ、荷物持ったお婆さんいて。家すぐそばだって言うから持ってってあげたんだ。そしたら家で休んでけって言ってお茶とお菓子出してくれたから、庭の水まき手伝ってあげた。多分そのとき?」


お陰で昼飯食いそびれたけど、なんて全然残念そうじゃなく話すチャニョルを見て、呆れるというより、らしいなと思った。
チャニョルはそういうことを普通にする人だ。パソコン教室だって「そんなことも分かんないんですか」って嫌な顔をする人もたくさんいるのに、チャニョルは嫌な顔ひとつせず丁寧に教えてくれると部長も言っていた。


「チャニョリ見てると平和だなぁって思うわ」
「はは!なにそれ!」
「なんか、悩んでること全部どうでもよくなる」
「それってベッキョニの役に立ってるってこと?」
「なってるなってる。コーヒー奢ってくれるし」
「あはは!奢らせるつもりかよ」


いいけど別に、と何も言わなくても座っているだけで俺の好きなカフェモカを届けてくれる辺り、本当に世話好きで優しいやつだと思う。し、どうしよもなく愛しくなる。
俺はバカか。



「サンキュー」
「その代わり明日休みだし、今日飲みの後泊まっていい?」
「あー……お好きにどうぞ」


飲み会よりも何よりも、こうして今夜も事故的な何かを期待する俺は、きっとまた何事もなく目覚めた明日、こっそり溜め息でも吐くのかなぁ、なんて今から溜め息が出た。

このモヤモヤもあの裾についた土のようにさっさと払いのけてしまえればいいのに。
無謀な恋はいつも俺に付きまとうんだ。





おわり
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