One-week Story
タオ×セフン×新入社員
1ヶ月の研修を終えて僕らはそれぞれ違う部署に配属された。同期の中でも一際ウマがあったタオは営業企画部で忙しく走り回っているけど、人と触れ合うのが好きな彼はきっと合っていると思う。但し、会うたびに愚痴ばっかり聞かされるけど。
一方僕は、新入社員中唯一の法学部出身という、わりと分かり易い理由で法務部に配属された。僕ももっと人と関わる部署がよかったのに。
「お疲れぇ~!お金稼いでる?」
「ぜーんぜん」
久々にお昼に時間が空いてるからご飯食べよう、とLINEが飛んできて近くの定食屋で待ち合わせた。
これは僕らのいつもの挨拶。
「相変わらず残業も歩合もないから全然稼げないよ。タオのが稼いでんじゃん」
「うん、僕は着々とね!」
『ねぇ、君はなんでこの会社入ったの?』
新人研修でペアになったタオと初めて二人で昼ごはんを食べたとき、タオは僕に質問したんだ。
『給料よかったから』
『えー!お金?夢じゃないのー!?』
『夢だよ。いっぱいお金稼いでたくさん遊ぶのが夢だもん』
『あ、そっか!じゃあ僕もいっぱい稼がなきゃ!』
そんなくだらない話で僕らは意気投合した。
『じゃあ、お金稼いだら何して遊ぶ?』
『うーん、旅行とか?海外もいいな』
『僕は車欲しい!真っ赤なスポーツカー!』
『それダサくない?』
『えー!格好いいじゃん!じゃあじゃあ、まずは僕が折れてあげる!年上だし!』
大学時代1年間休学留学していたタオは、周りより1歳年上だった。
『なんで一緒に行くことになってるの!?』
『えーいいじゃん!留学経験あるし役に立つよ?』
『確かに……』
その時の僕らはまるで学生のように笑っていた。社会人の意識なんて全然なかったし、そんな肩肘張ってないところが、僕らはとてもウマが合った。
「確かに稼いでるけどさ、全然休みないの!ちょーキツいよ!ルハン先輩鬼だし」
「えー、あんな美人なのに?」
「うん!残業ばっかだよ。セフンが羨ましい」
「そう?イシン先輩も結構鬼だよ。笑顔でやり直しさせられるし。勉強不足って突き付けられてるみたいで地味にくるかなぁ」
「早く旅行したいねぇ……」
「そうだね」
「最初はどこに行く?」
「最初?」
「だってボーナス出るじゃん」
「最初なんてきっと大した額じゃないよ」
「そうだけどさぁ。夢じゃん!あ!ボーナス毎に旅行とか面白くない!?夏と冬の休みの時にさぁ!」
「えー現実じゃないよ。スポーツカーは?」
「そういうのは普段の給料貯めるからいいの!」
「そんなのタオは給料いいからいいけど」
「いいじゃん!全部使いきる訳じゃないんだし!毎日のやりがいだよ!」
「僕との旅行が?」
「もちろん!これからセフンと色んな所を旅行するって考えただけで仕事が楽しくなる!」
なにそれー!なんて笑ったけど、本当は僕もそう思う。タオとの旅行なんて、きっと楽しいことだらけだ。
もうすぐ出るボーナスを前に、どこに行くか考えるだけで幸せになれる単純な僕らは、やっぱり僕らだけが共有できる感覚なのかもしれない。
「じゃあ明後日の日曜日、ガイドブックでも探しに行く?」
「あ!いいねぇ!行く!」
おわり