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One-week Story


シウミン×カイ×外回り



夏の外回りはとても堪える。


ということを最近配属された営業部で知ることになった。
こと、週の半ば──水曜日なんて特にだ。

もともと総務部だったのに、欠員が出たとかで急遽営業に回された。去年の夏はクーラーの下でパソコンに向かっていたっていうのに。


営業のイロハを教えてくれているのは、同じ大学の出身だというミンソク先輩。とはいえ学生時代には面識はなかったのだから特段な繋がりがあるわけでもない。それでも何かと面倒を見てくれるのはやっぱり縦の繋がりの偉大さだろうか。




「あっついなぁ!」


休憩だ、と立ち寄った公園の木陰にあるベンチを見つけて座った。
さっき回ったお客さんの反応はどうだったとか話しながらネクタイを緩める先輩は、汗をかいているせいか、いやに男臭く見えて思わずごくりと唾を飲み込んだ。


「ジョンイナ、あそこの部長は釣りが好きだから魚の勉強しとけよ」


丁寧に腕捲りをしていたのに不意にこっちを向いたので、見つめていたことがバレただろうか。


「……え?あぁ、はい」


くくく、と目を細めて笑った顔にどきりと心臓が跳ねる。
暑さで頭がやられてるのかもしれない。



鳴り止まない心臓の音を聞きながら見つめた先輩は、じゃばじゃばと思いきり顔を洗っているのにスーツやワイシャツに水飛沫が飛ばないよう気を付けてるところが、とても彼らしいと思った。


ふぅ、とハンカチで水気を拭き取って見上げたアーモンドアイの瞳と視線が重なる。

ニヤリと笑うので、ドクンと今までにないほどの痛みをもって心臓が大きく跳ねた。



「こう暑いとさ、頭おかしくなるよな」

「は、い……」


じわりと汗が噴き出した。
くく、と笑いながらミンソク先輩は近づいてきて、ベンチに座る俺の前に立った。
それからおもむろに頬に手を添えられて……上を向かされる。ぺたりと触れた感触に身体中の神経が集中した。

俺は、可笑しそうに笑う先輩の瞳に見つめられて、すがるように見つめ返していた。




「お前って、意外と可愛いんだな」




そう言われた刹那、俺の唇は先輩の小さく薄い唇に塞がれていた。



どくり、どくり

心臓が鳴って、身体中の毛穴から一斉に汗が噴き出す。


ぽたりと先輩から落ちた滴は、拭き取り損ねた水だろうか。それともこの小柄なくせに野獣じみた先輩の汗だろうか。


俺の汗と混ざったそれは、とてつもなく厭らしく思えた。





おわり
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