ルハンとシウミン
131015 ともだち
友達───
君がその言葉を使うたび、僕の頭は混乱するんだ。大好きって思うのに、友達なのかってちょっとがっかりして、そうか僕たち友達なんだって納得して。でも君が笑顔を向けてくれるたび、胸がざわついて。僕の心は忙しい。
君がそう思ってくれてるなら、ありがとう、もうそれでいいよ。って諦めた。君のとなりにいれるなら、友達でかまわない。
て言うか、友達ってなんなんだろう。
「ミンソク、学食行こう」
「おう」
毎日一緒に学食行って、A定食べて。たまにはスペシャルセットもいいね、とか笑って。
「ヒョンたちいつも一緒にいるんですね」
そう言って近づいてきたのは後輩のチャニョル。
「おう、僕たち親友だから!ね?ミンソク」
「あぁ、うん」
自分で言って傷ついて。
笑顔で頷くミンソクを見て、また傷ついて。
「お前らだって、いつも一緒じゃん」
そう言ってチャニョルと、向こうから近づいてくるベッキョンに向かって言うと、「そりゃあ、まぁ」って頬を赤らめた。
「なにニヤニヤしてんの?」
「え?そうっすか?」
「うん、キモい」
「おいちょっと、ルハン……!」
僕のちょっと辛辣な言葉にも、それを庇うミンソクの申し訳なさそうな表情にも気にせず、チャニョルは近づいてきたベッキョンの肩を寄せると「だって俺たち付き合ってるし」とこぼした。
「ちょー!チャニョラ!内緒にするって約束しただろ!」
「あ……ごめんベッキョナ!」
「もー!ヒョンたちだからいいけど!」
目の前で起きてるこれは、俗に言う『痴話喧嘩』ってやつなの?
そっとミンソクの方を見やると、驚いて固まっていた。
彼は知らないのだ。こんな世界があることを。男同士でも愛し合えることを。友達以外の繋がり方があることを。
僕がそれを望んでいることを。
二人が去るとミンソクはボソッとこぼした。
「……ビックリした」
「なにがー?」
「いや、だって……恋人とか言うから」
「あぁ。そんな気はしてたけどね」
「そうなの?」
「うん」
食べないの?冷めちゃうよ?って食事を促すと、ミンソクは、あぁって言ってあわてて箸を進めた。
「ねぇ、」
「んー?」
「ミンソクは、男同士って無理?」
「……え?」
「だからその、男同士で付き合うとか……」
そう言うとミンソクはゲホゲホと喉を詰まらせた。
「大丈夫ー?」
「あ、あぁ、大丈夫大丈夫」
水を差し出して「もっとゆっくり食べなよー」とか言って笑ってるとミンソクが不意に顔を上げた。
「ルハニは?」
「え?」
「お前は無理じゃないの?」
核心を突かれて息をのんだ。
「平気そうに見えたけど……って、聞くのと実際に自分がそうなるのとじゃ訳が違うか」
「……ミンソクならいいよ」
「え……?」
「だから、ミンソクなら付き合えるかな」
なんてね!
最大限軽く。冗談だよって分かるように、僕は笑った。
「え、あ、冗談か!もう脅かすなよー!」
冗談なんかじゃないけど。
「だってぇ、ミンソクって力持ちだしー」
わりと本気だけど。
「僕のわがままとか聞いてくれそうだしー」
ダメなことだってわかってるから。
「沢山奢ってくれそうじゃん?」
「なんだよそれ!やりたい放題じゃんか」
「僕はみんなの妖精さんだからね」
「そのあだ名嫌だって言ってなかった?」
あはは!って二人で顔を見合わせて笑った。
こんなの全部壊せるわけないじゃん。こんな幸せ手放せない。僕はこれでも臆病なんだ。
「次の授業なんだったっけ?」
「英語ー」
「あ!ミンソク訳やった?」
「「見せて!」」
「たまには自分でやれよー」
「いいじゃん!僕たち親友でしょ?」
言ってまた痛む胸。
けれど徐々に鈍さを増していく。
なのに。
「あーあ。ルハンといるときが一番楽しいなー」
ご飯を食べ終わって、伸びをしながらミンソクが呟く。
「え?」
「だって気ぃ使わなくていいし。お前といると楽しいもん」
なんて、甘い言葉。
愛されてるという錯覚。
それは友情なんだって気づくまでの時間、約一秒。
「僕もー!ずっと友達でいようね!」
嘘を並べた回数、数え切れなきほど。
友達なんて言葉、この世からなくなっちゃえばいいのに。
終わり
友達───
君がその言葉を使うたび、僕の頭は混乱するんだ。大好きって思うのに、友達なのかってちょっとがっかりして、そうか僕たち友達なんだって納得して。でも君が笑顔を向けてくれるたび、胸がざわついて。僕の心は忙しい。
君がそう思ってくれてるなら、ありがとう、もうそれでいいよ。って諦めた。君のとなりにいれるなら、友達でかまわない。
て言うか、友達ってなんなんだろう。
「ミンソク、学食行こう」
「おう」
毎日一緒に学食行って、A定食べて。たまにはスペシャルセットもいいね、とか笑って。
「ヒョンたちいつも一緒にいるんですね」
そう言って近づいてきたのは後輩のチャニョル。
「おう、僕たち親友だから!ね?ミンソク」
「あぁ、うん」
自分で言って傷ついて。
笑顔で頷くミンソクを見て、また傷ついて。
「お前らだって、いつも一緒じゃん」
そう言ってチャニョルと、向こうから近づいてくるベッキョンに向かって言うと、「そりゃあ、まぁ」って頬を赤らめた。
「なにニヤニヤしてんの?」
「え?そうっすか?」
「うん、キモい」
「おいちょっと、ルハン……!」
僕のちょっと辛辣な言葉にも、それを庇うミンソクの申し訳なさそうな表情にも気にせず、チャニョルは近づいてきたベッキョンの肩を寄せると「だって俺たち付き合ってるし」とこぼした。
「ちょー!チャニョラ!内緒にするって約束しただろ!」
「あ……ごめんベッキョナ!」
「もー!ヒョンたちだからいいけど!」
目の前で起きてるこれは、俗に言う『痴話喧嘩』ってやつなの?
そっとミンソクの方を見やると、驚いて固まっていた。
彼は知らないのだ。こんな世界があることを。男同士でも愛し合えることを。友達以外の繋がり方があることを。
僕がそれを望んでいることを。
二人が去るとミンソクはボソッとこぼした。
「……ビックリした」
「なにがー?」
「いや、だって……恋人とか言うから」
「あぁ。そんな気はしてたけどね」
「そうなの?」
「うん」
食べないの?冷めちゃうよ?って食事を促すと、ミンソクは、あぁって言ってあわてて箸を進めた。
「ねぇ、」
「んー?」
「ミンソクは、男同士って無理?」
「……え?」
「だからその、男同士で付き合うとか……」
そう言うとミンソクはゲホゲホと喉を詰まらせた。
「大丈夫ー?」
「あ、あぁ、大丈夫大丈夫」
水を差し出して「もっとゆっくり食べなよー」とか言って笑ってるとミンソクが不意に顔を上げた。
「ルハニは?」
「え?」
「お前は無理じゃないの?」
核心を突かれて息をのんだ。
「平気そうに見えたけど……って、聞くのと実際に自分がそうなるのとじゃ訳が違うか」
「……ミンソクならいいよ」
「え……?」
「だから、ミンソクなら付き合えるかな」
なんてね!
最大限軽く。冗談だよって分かるように、僕は笑った。
「え、あ、冗談か!もう脅かすなよー!」
冗談なんかじゃないけど。
「だってぇ、ミンソクって力持ちだしー」
わりと本気だけど。
「僕のわがままとか聞いてくれそうだしー」
ダメなことだってわかってるから。
「沢山奢ってくれそうじゃん?」
「なんだよそれ!やりたい放題じゃんか」
「僕はみんなの妖精さんだからね」
「そのあだ名嫌だって言ってなかった?」
あはは!って二人で顔を見合わせて笑った。
こんなの全部壊せるわけないじゃん。こんな幸せ手放せない。僕はこれでも臆病なんだ。
「次の授業なんだったっけ?」
「英語ー」
「あ!ミンソク訳やった?」
「「見せて!」」
「たまには自分でやれよー」
「いいじゃん!僕たち親友でしょ?」
言ってまた痛む胸。
けれど徐々に鈍さを増していく。
なのに。
「あーあ。ルハンといるときが一番楽しいなー」
ご飯を食べ終わって、伸びをしながらミンソクが呟く。
「え?」
「だって気ぃ使わなくていいし。お前といると楽しいもん」
なんて、甘い言葉。
愛されてるという錯覚。
それは友情なんだって気づくまでの時間、約一秒。
「僕もー!ずっと友達でいようね!」
嘘を並べた回数、数え切れなきほど。
友達なんて言葉、この世からなくなっちゃえばいいのに。
終わり