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突然のスホ美シリーズ

Luhan



「ねぇ、君。君ほんとは男でしょ」


そう話しかけると、その人は虚を突かれたように目玉を丸くした。


「え……」

「なんでそんな格好してんの?綺麗だからいいけど。でも似合ってないよ、そんな真っ赤な……誘うようなドレス」


だって不思議だった。
似合ってないんだもん。

バーで居合わせた女は、男だった。



「わかり、ます……?」
「え、なにが?」
「その……男だって……」


頬を赤く染め、俯きながらその人は呟いた。


「あー、僕にはね」


辺りを見回して、「他は気づいてないんじゃない?」と言うと、彼はほっとしたように胸を撫で下ろした。


「なんでそんな格好してるの?」


いくら夜の町のバーといえど、異質といえば異質に見える。
その男は浮くほどに着飾っていた。
羽をあしらわれた真っ赤なロングドレスには大きくスリットが入っていて、そこから覗く脚はひどく真っ白だ。


「なんでって……」
「変装?趣味?それとも、誰か引っ掛けてお持ち帰りでもするつもりだった?」


からかうように言うと、「そんな……っ!」とまた赤くなる。


「でも……そうだね。どれだったとしても、君ならそんなドレスよりもっと清楚な方が似合うと思うよ」


もっと、ふわりとしたワンピースだとか。
そんな方が男はそそられる。



「──結婚式の、帰りなんです」


そっと恥ずかしそうに口を開く。


「結婚式?」
「はい……呼ばれてはいないですけど」
「あぁー、なるほど」


そういうことね、と妙に納得した。
恐らく復讐とかそんなことなんだろう。


「もったいないね、君みたいの振るのがいるんだ」
「え、いや、そんな……」
「違う?」
「そう、ですけど……」
「バカな男だね」


笑って言うと、彼もくしゃりと笑って。

あ、いいな。って思った。



「でも、もういいんです」
「なんで?」
「ひっ叩いてやりましたから」
「はは!それは見てみたかったかも」


めちゃくちゃになったんじゃない?なんて笑うと「そんなの知りませんよ」とすまし顔で言い切るように笑って。

あぁ、可愛いかも、なんて存外にも思った。



「ね、普段はしないの?そういう格好」
「まさか……!しないですよ」
「なんだ。勿体ないね」
「勿体ないって……さっき似合ってないって言ってませんでした?」
「まぁ、言ったけど」


ねぇ、そうだ!と思い立ったように口を開く。


「今度は僕が見立ててあげるよ。どう?」
「へ……?」
「僕が上から下までぜーんぶ見立ててあげる。もっと可愛くなるよ」



必要になったら連絡して、なんて言いながら、胸ポケットからペンを取り出しコースターの裏に番号を羅列した。


「僕の名前は、ルハン。君は?」
「へ?」
「君の名前」
「……ジュン、ミョン」
「オッケー、ジュンミョナ。僕たちきっと、」


──また会うよ。




そう言って、席を立つ。

きっと、近いうちに連絡が来る。

僕は、妙な確信があった。




おわり
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