突然のスホ美シリーズ
Kris
親の代わりに出た社交界のパーティー。
きらびやかな装飾に囲まれて、誰も彼も見栄の張り合い。
言い寄ってくる女たちはどいつもこいつも真っ赤な口紅を引いてきつい香水を振り撒いていてうんざりだ。
それでも言い寄られれば親の手前、邪険な扱いはできない。どこでどう繋がってるか分からないのが社交界の怖いところだ。そして下手な遊びをすれば噂はあっという間に広がる。
なにもかも面倒くさい。
女の一人でも捕まえて遊んでくればいい、と親父は言うが、どうにもそんな気にならなかった。
適当に談笑をしていたのを中断するように歩いているフロアボーイを捕まえてシャンパングラスを取った。
そのまま流れるようにテラスの方へ向かう。
そこは室内の喧騒から切り取られたように静まり返っていて、見上げれれば満月が煌々と輝いていた。
胸ポケットから煙草を取り出しカチャリと火を着ける。
吸い込んだニコチンが身体中を駆け巡るようだ。
ふぅ、と吐き出すと、「こんばんは」と涼やかな声をかけられて咄嗟に煙草を揉み消した。
面倒だなと思いながらも笑顔を作って振り向いた先──俺は強烈に目を奪われていた。
真っ赤なドレスを纏った彼女は、夜空でもわかるほどに真っ白な肌をしていて……
深めに切り込まれたスリット
そこから伸びるすらりとした白い脚
胸元に広がる羽の装飾
余計な飾りのないショートボブの艶めく髪
スレンダーなボディ
跳ね上げられた目尻を細めて悪戯に笑みを浮かべる。
単純に、あぁ綺麗だな、と思った。
美人なら飽きるほど見てるはずなのに。
「あぁ、こんばんは」
「中へ、行かないのですか?」
「えぇ外の空気が吸いたくなって」
「外の空気?煙草の間違いじゃなくて?」
くすりと笑う彼女はまるで高貴な猫のようだ。
こんな女なら悪くない。
「月が、綺麗ですね」
「あぁそうですね」
瞬間、あなたの方が綺麗だ、なんて使い古された台詞が浮かんで思わず苦笑する。
「どうか、しました?」
「あ、いや失礼。あなたほど美しい人を見たのは初めてで、」
目を奪われてました。
言うと、彼女の頬はみるみると赤く染まって。うつ向いた顔が月光に照されて睫毛が影を作る。
あぁ、綺麗だ。
まるで礼儀のない行為だということは十分に理解している。
けれど時として男と女なんてこんなもんだ。
礼儀よりも優先されるものがあるということ。
そっと頬に手を当てて上向かせると、その赤い唇を奪った。
「喫煙のあとにキスをするのは、マナー違反じゃないですか?」
またくすりと笑みをこぼす。
「あぁ、そうでしたね」
では、と飲みかけのシャンパングラスを掴んでゴールドに輝く液体を流し込むと、再びその赤い唇に触れた。
彼女の腕が首もとに絡み付いて、引き寄せた腰は想像以上に細い。欲が掻き立てられる。余裕のなさに自分でも笑いたくなった。
深まる口づけ。
こんなにも痺れるキスはいつぶりだろうか。
酷く胸がくすぐったい。
艶めく髪の毛を耳元に掛けて、首筋に唇を寄せると漏れる吐息。理性の保ち方を忘れそうだった。
「部屋へ、行きませんか」
耳元でそっと囁くと、彼女はこくりと頷いた。
ボーイから鍵を受け取り、上階の部屋をめざす。
緩く組まれた腕が歯痒い。
「きっと驚かれますよ」
焦れったいエレベーターの箱の中、彼女はそう言って悪戯な笑みを浮かべた。
おわり
親の代わりに出た社交界のパーティー。
きらびやかな装飾に囲まれて、誰も彼も見栄の張り合い。
言い寄ってくる女たちはどいつもこいつも真っ赤な口紅を引いてきつい香水を振り撒いていてうんざりだ。
それでも言い寄られれば親の手前、邪険な扱いはできない。どこでどう繋がってるか分からないのが社交界の怖いところだ。そして下手な遊びをすれば噂はあっという間に広がる。
なにもかも面倒くさい。
女の一人でも捕まえて遊んでくればいい、と親父は言うが、どうにもそんな気にならなかった。
適当に談笑をしていたのを中断するように歩いているフロアボーイを捕まえてシャンパングラスを取った。
そのまま流れるようにテラスの方へ向かう。
そこは室内の喧騒から切り取られたように静まり返っていて、見上げれれば満月が煌々と輝いていた。
胸ポケットから煙草を取り出しカチャリと火を着ける。
吸い込んだニコチンが身体中を駆け巡るようだ。
ふぅ、と吐き出すと、「こんばんは」と涼やかな声をかけられて咄嗟に煙草を揉み消した。
面倒だなと思いながらも笑顔を作って振り向いた先──俺は強烈に目を奪われていた。
真っ赤なドレスを纏った彼女は、夜空でもわかるほどに真っ白な肌をしていて……
深めに切り込まれたスリット
そこから伸びるすらりとした白い脚
胸元に広がる羽の装飾
余計な飾りのないショートボブの艶めく髪
スレンダーなボディ
跳ね上げられた目尻を細めて悪戯に笑みを浮かべる。
単純に、あぁ綺麗だな、と思った。
美人なら飽きるほど見てるはずなのに。
「あぁ、こんばんは」
「中へ、行かないのですか?」
「えぇ外の空気が吸いたくなって」
「外の空気?煙草の間違いじゃなくて?」
くすりと笑う彼女はまるで高貴な猫のようだ。
こんな女なら悪くない。
「月が、綺麗ですね」
「あぁそうですね」
瞬間、あなたの方が綺麗だ、なんて使い古された台詞が浮かんで思わず苦笑する。
「どうか、しました?」
「あ、いや失礼。あなたほど美しい人を見たのは初めてで、」
目を奪われてました。
言うと、彼女の頬はみるみると赤く染まって。うつ向いた顔が月光に照されて睫毛が影を作る。
あぁ、綺麗だ。
まるで礼儀のない行為だということは十分に理解している。
けれど時として男と女なんてこんなもんだ。
礼儀よりも優先されるものがあるということ。
そっと頬に手を当てて上向かせると、その赤い唇を奪った。
「喫煙のあとにキスをするのは、マナー違反じゃないですか?」
またくすりと笑みをこぼす。
「あぁ、そうでしたね」
では、と飲みかけのシャンパングラスを掴んでゴールドに輝く液体を流し込むと、再びその赤い唇に触れた。
彼女の腕が首もとに絡み付いて、引き寄せた腰は想像以上に細い。欲が掻き立てられる。余裕のなさに自分でも笑いたくなった。
深まる口づけ。
こんなにも痺れるキスはいつぶりだろうか。
酷く胸がくすぐったい。
艶めく髪の毛を耳元に掛けて、首筋に唇を寄せると漏れる吐息。理性の保ち方を忘れそうだった。
「部屋へ、行きませんか」
耳元でそっと囁くと、彼女はこくりと頷いた。
ボーイから鍵を受け取り、上階の部屋をめざす。
緩く組まれた腕が歯痒い。
「きっと驚かれますよ」
焦れったいエレベーターの箱の中、彼女はそう言って悪戯な笑みを浮かべた。
おわり