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惑星日和

「さ、次どうするー?」
「ルハニヒョン?」
「うわぁー、嫌な予感しかしない」
「同じく……」

「誰が何だって?」

「ひぃ……!」

恐る恐ると振り返ると、今度は笑顔のルハニヒョン。
タオじゃないけど、嫌な予感しかしない。

「……なんでもない!!」
「まぁまぁ、そう言わず。ハロウィンでしょ?やってみてよ。お菓子あげるから」
「ホントに!?」
「俺が嘘をつくような男だとでも?」
「嘘はつかないけど優しくもない!」
「タオめ!!」

足蹴りをしようとするルハニヒョンに向かって、俺たちは「Trick or Treat!!」と叫んだ。

「は?全然怖くないんだけど。やり直し」
「えー!Trick or Treat!!」
「まだダメ。もう1回」
「Trick or Treat!!!」


結局おれたちは全力でTrick or Treatを10回ほど言わされ、満足したヒョンが仕方ないなぁと言ってくれたのは飴玉3つだった。一人3つではなく、三人で3つ。要するに一人1個。

えー!!と文句を言う俺たちを笑いながら、ルハニヒョンは「しうちゃんとこ行こーっと!」なんて鼻唄を歌いながら消えていった。
なにこの労力に見合ってない対価。
あとウミニヒョンのところにはしばらく近寄らない方がいいかも。なんてのは、俺たち三人の共通認識のようだ。


「さて、次は?」
「うーん……あ!隊長のところ行こう!きっとスホヒョンもいるよ!」

あぁ、俺たちの太客を忘れてたじゃん、なんて言ったら怒られるか。


「ドラゴニのところかなぁ?」
「多分?」
「行ってみよう!」


そう言ってドラゴニがいる庭へと向かうと、やっぱりクリスヒョンとスホヒョンがドラゴニと一緒に楽しそうに遊んでいた。


「「Trick or Treat!!」」
「お菓子ちょうだーい!」


「おぉ、ハロウィンか」
「うんそう!だからほら!お菓子ちょうだい!」

タオがクリスヒョンの前に両手を出すと、「お菓子か」と言ってクリスヒョンが袋から取り出したのは……


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!トカゲーー!!!」
「はは!ドラゴニのお菓子だったんだけど」
「やだ!あっち行け!!」
「死んでるから大丈夫だ。ちなみにトカゲじゃなくてヤモリだけどな」

はは!と笑うクリスヒョンと、ぎゃあきゃあ走りまわるタオと、遊んでくれると勘違いして追っかけるドラゴニと、微笑ましく見ているスホヒョンと。
なんだこの光景。

「ドラゴニ!」

そう言ってクリスヒョンがタオの方にヤモリを投げるとドラゴニはタオに巻き付くようにヤモリを口でキャッチしてバリバリと食べている。
タオはドラゴニに巻き付かれながらべそをかいてマジ泣きしていた。

「もー、タオをあんまりからかっちゃダメだってば」
「ははは!タオ、わるいな」
「隊長のバカぁぁぁぁぁ!!」
「タオ!今晩みんなで美味しいもの食べに行こう!ヒョンがご馳走してあげるから」
「ヒョン、僕たちも?」
「もちろん、みーんなで」
「「やったぁ!」」

お菓子は手に入らなかったけど、タオのお陰で豪華な晩飯にはありつけそうだ。




「あと誰残ってたっけー?」


ドラゴニ地獄から脱け出したタオが、今晩なに食べようかなぁなんて嬉しそうに顔を緩めたあと、まだお菓子は諦めてなかったのか声をあげる。


「シウちゃんは今はやめておいた方がいいしー、ルハンでしょー、スホヒョンと隊長、ヨリくんとベッキョンと、チェンチェンとレイとー……あ!」
「「ディオヒョン!!」」

セフンとタオが声をあげて、俺は表情が引きつった。
ヒョンにはバレたくなかったのに。
こんな子供っぽい遊び……


台所かなぁ?というセフンに「多分そうだよ!」とタオが鼻を鳴らす。

「だっていい匂いするもん!なんか作ってるんじゃない!?」

はしゃぐ二人の後ろからとぼとぼと着いていく。
やっぱり台所にヒョンは居て、「Trick or Treat!!」と声をあげる二人をドアの影から覗いた。

「なに?」
「ハロウィンだってばぁ!お菓子くれなきゃイタズラするよ!」
「あぁー」

ヒョンはお菓子ね、というとフライパンを掴む。

「ちょうど今出来たところだから」
「なに!?」
「大学イモ」
「なんですか?それ」
「さつま芋のおやつだよ」
「「さつま芋!?」」
「食べない?他にお菓子ないし、甘くて美味しいけど」
「甘いの?」
「うん」
「じゃあ食べる!!」
「いただきます」

皿に取り分けられたできたての甘そうなそれをテーブルに並べると、ヒョンはそれから、と口開いた。

「カイもおいで」

やっぱりバレてる……


モジモジとドアの影で考えてると、どこからかドタドタと音がして、「なになに!?いい匂いするんだけど!」とベッキョニヒョンがやって来て、つられるようにチェンヒョンも「いい匂いする~」ってやって来たので、俺も二人の影に隠れながらダイニングの定位置へと座った。

「なにこれ!」
「大学イモ」
「美味しいよ?ね?フン」
「うん」
「さつま芋たくさんもらったから」
「へぇ、これさつま芋なんだー?」
「さつま芋でおやつ作ろうって考えてスイートポテトじゃなくてコレ作っちゃうところがいかにもディオだよなぁ!」
「どういう意味?」
「別に?」

カイもほら食べなよ、とディオヒョンがお皿に取り分けて差し出してくれた。
匂いにつられて口に含めば、蜂蜜の甘さとホクホクのさつま芋の甘味が合わさって、とてつもなく甘かった。

「甘っ!」
「おやつだからね」
「でも美味しい」
「よかった」


みんなでワイワイと大学イモを摘まみながら騒いでいると、隣に座ったディオヒョンが「ところでさぁ、」と俺に話しかけてきた。

「なに?」
「それ、もしかして僕のタオルケット?」
「あ……」
「やっぱり」
「えっと、タオが……その……つまり……ごめん!」
「まぁ別にいいけど」
「ホント?怒ってない?」
「うん、怒ってないよ。フェニちゃんの寝床行きかなぁとは思ったけど」
「え?」
「だってほら」

指された床にはだらりと垂れ下がって埃を吸着しまくったタオルケット……

「あ……ごめんなさい……」
「いいよ、別に。そろそろ買い替えようかと思ってたし。洗濯したらフェニちゃんのとこに持ってってね」
「うん……あ!新しいタオルケット俺が選んでもいい?」
「うん、まぁいいけど」
「じゃあ明日一緒に買いに行こう!で、今晩は俺のベッドで一緒に寝るってのは?」
「うん、まぁ……いいよ」
「やった!」


「あ!そういえば、今晩スホヒョンが美味しいもの食べに連れてってくれるって!」
「マジで!?」
「やったー!!」
「あと、もうすぐヨリヒョンがお菓子たくさん買ってくるはずです」
「お!ラッキー!」
「でもそれは僕たちのでしょ?」
「あ、そっか。ヒョンたちも欲しがったら仮装してください」

それでルハニヒョンのところ行ったら美味しいものたくさんもらえますよ、なんてセフンのイタズラに、俺たちは三人で肩を震わせて笑いをこらえた。


合言葉はTrick or Treat!


ハッピーハロウィン!




おわり
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