惑星日和
【惑星日和#6】
******************
「見て見て!フン、可愛い?」
「うん、似合ってるよ」
「フンも可愛い!」
黒い猫耳としっぽをつけたタオと、狼のツナギを着たセフン。
世の中はハロウィンらしい。
「あ!カイもやる!?みんなからお菓子もらって歩くの!」
「え、俺はいいよ」
「えー!やろうよ!」
「はぁー?」
面倒くさい、と思いつつも少しだけ面白そうって思ったからだろうか。
結局俺はタオに腕を引かれ加わることになった。
そんな俺の仮装はといえば……
「仮装グッズ買ってないからどうするの?」
「うーん……カイといえばぁー……」
「「ドラキュラ!!」」
だよね!と二人は声をあげている。
「ドラキュラといえば、マント?」
「えー!マントなんてないよー!あ!隊長のマント借りる?」
いや、あれ飛ぶとき使うやつだから怒られるだろ。
俺怒られたくないけど。
つーか、クリスのこと怒らせただろ!ってスホヒョンにも怒られるから二重で怒られることになるし……絶対やだ。
「じゃあ、あれは?」
そう言ってセフンが指差したのは、ディオヒョンのベッドに掛かる黒いタオルケット。
「あ!いいね!」
え?いいの?って思う俺をよそに、タオは思い切り引き剥がすと俺の背中にまわしてマントのように被せた。
「何で止める?」
「これは?」
セフンが差し出したのは洗濯バサミ。
「あ、いいねぇ~!格好いい!」
って、どこがだよ。
「牙は?」
「うーん、タンスにぶつけて折れたことにしよう!」
「は?」
「設定だってばぁ!」
さぁ、行こう!とタオが声をあげて、結局俺もその格好で着いていくことになった。
いーのかよ、これで。
「あ!ベッキョンだ!」
タオがさっそくヒョンを見つけて捕まえると、「せーの!」と声をあげる。
「「Trick or Treat!!」」
「お菓子くれなきゃイタズラするよー!!」
ヒョンは一瞬目を丸くしたあと、ニヤリといつものたちの悪い笑顔。
「戦闘力低いお前らのイタズラってなんだよ」
「えっと、それはぁ……時間止めてなんか悪いことする!」
黒猫タオがえっへん!と胸を張る。
「そんなことしたら紫外線でお前の顔シミだらけにしてやるからな!」
「え……」
さっきまで威勢のよかったタオはヒョンのからかいを真に受けたのか、すっかり鳴りを潜め狼男セフンの後ろに隠れてしまった。黒い尻尾だけがゆらゆらと揺れている。
「タオ、相手が悪いよ。次に行こう」
「うん……」
ベッキョニヒョンは「相手が悪いってなんだよー!」って文句を言っていたけど放っておいた。
「ねぇ、チャニョリヒョンは?」
作業室のドアを見て俺が口を開けば、タオはまたキラキラとした目でヨルくんならイケる!ってガッツポーズをする。
「でもお菓子持ってるか分かんなくない?」
「あ……」
「大丈夫、ヨリヒョンなら任せて」
意外と逞しい言葉を発したのはセフンで。それならばとセフンに任せて、俺たちはドアを開いた。
「「Trick or Treat!!」」
「ヒョン、お菓子ください」
「え!?」
「持ってないんですか?」
「あ、えーっと!お菓子……お菓子……」
「まさか、ヒョンなのにお菓子の準備もしてないんですか?ヒョンなのに。可愛い弟たちのために紗々一箱づつ準備しとくとか、そんな気も利かない人だったんですか?ヒョンなのに」
「あ、いや……!」
「ほんと、ヒョンなのに情けないですね。仕方ないから、あとでもう1回来てあげてもいいですけど?」
「マジで!?ありがとう!セフナ!!準備しとくから!すっごいの準備しとくから!驚くなよ!?」
「はぁ、もう仕方ないですね。さ、次行こうか」
「え……あ、うん!」
呆気にとられてた俺とタオは、セフンに連れられて次の部屋を目指した。
すると玄関の方からバタバタと音がしてチャニョリヒョンが出掛けたのが分かったから、セフンすげぇ……って思わず感心した。
「次どうする?」
「うーん、あ!チェンチェン!チェンチェンなら優しいしきっとお菓子も持ってるし大丈夫だよ!」
確かに。そうだな、と行き先をチェンヒョンの部屋に定める。
「「Trick or Treat!!」」
「お菓子くれなきゃイタズラするよー!!」
「え!?あぁハロウィンかぁ!あはは!三人とも可愛いねぇ」
セフンの獣耳やタオのしっぽを触ったあと、「カイは……ドラキュラ?」なんて首をかしげた。
「うん、見えない?」
「マントだし見えなくはないけど……あ!牙がないじゃん!牙が!ドラキュラなら牙が無くちゃ!」
「もー!仕方なじゃん!カイの牙は折れたの!タンスにぶつけて牙が折れた可哀想なドラキュラなの!」
「いや、それただの設定だから」
「あはは!そっかぁ。可哀想なドラキュラなのかぁ。じゃあ血も飲めないから餓死しちゃうねぇ」
「そう!だからお菓子ちょうだい!」
「ちょっと待ってて」
え、なにこれ。
勝手に会話成立してるし……マジかよ。
「あ、ゴメン!お菓子箱空っぽだった!」
「「「えーーー!!」」」
「こないだのレイヒョンの誕生日会の時につまみ提供しちゃってから買い足してなかったの忘れてた」
「えー!!」
「ごめんってばぁ。もしかして、イタズラする?」
三人を順に上目遣いで見つめるチェンヒョン。それを受けて俺たちも三人で視線を交わす。
「「「するーーー!!!」」」
そう言ってヒョンを捕まえると、取り囲んで擽り攻撃を開始した。
「ぎゃぁぁぁああああ!!!ちょっと待ってよ!!ムリムリー!!」
声をあげるチェンヒョン。
面白がって擽る俺たち。
そして、なぜか冷気を感じる背中……
はっ!と振り返ると、そこにいたのはウミニヒョン……じゃなくてレイヒョンだった。
レイヒョンの能力って癒しだよな?
「Chen or Die……チェンを離さなきゃ殺すよ?」
「「「ごめんなさいーー!!!」」」
俺たちは急いで部屋から逃げ出した。
「怖かったね……」
「うん、怖かった……」
「本気で殺されるかと思った……」
「あの人ならやりかねないよ。寿命縮めるのなんて簡単なんだし」
「ちょっと角出てたよね」
「うん……」
俺たちは、ぶるりと三人同時に身震いをした。
→
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「見て見て!フン、可愛い?」
「うん、似合ってるよ」
「フンも可愛い!」
黒い猫耳としっぽをつけたタオと、狼のツナギを着たセフン。
世の中はハロウィンらしい。
「あ!カイもやる!?みんなからお菓子もらって歩くの!」
「え、俺はいいよ」
「えー!やろうよ!」
「はぁー?」
面倒くさい、と思いつつも少しだけ面白そうって思ったからだろうか。
結局俺はタオに腕を引かれ加わることになった。
そんな俺の仮装はといえば……
「仮装グッズ買ってないからどうするの?」
「うーん……カイといえばぁー……」
「「ドラキュラ!!」」
だよね!と二人は声をあげている。
「ドラキュラといえば、マント?」
「えー!マントなんてないよー!あ!隊長のマント借りる?」
いや、あれ飛ぶとき使うやつだから怒られるだろ。
俺怒られたくないけど。
つーか、クリスのこと怒らせただろ!ってスホヒョンにも怒られるから二重で怒られることになるし……絶対やだ。
「じゃあ、あれは?」
そう言ってセフンが指差したのは、ディオヒョンのベッドに掛かる黒いタオルケット。
「あ!いいね!」
え?いいの?って思う俺をよそに、タオは思い切り引き剥がすと俺の背中にまわしてマントのように被せた。
「何で止める?」
「これは?」
セフンが差し出したのは洗濯バサミ。
「あ、いいねぇ~!格好いい!」
って、どこがだよ。
「牙は?」
「うーん、タンスにぶつけて折れたことにしよう!」
「は?」
「設定だってばぁ!」
さぁ、行こう!とタオが声をあげて、結局俺もその格好で着いていくことになった。
いーのかよ、これで。
「あ!ベッキョンだ!」
タオがさっそくヒョンを見つけて捕まえると、「せーの!」と声をあげる。
「「Trick or Treat!!」」
「お菓子くれなきゃイタズラするよー!!」
ヒョンは一瞬目を丸くしたあと、ニヤリといつものたちの悪い笑顔。
「戦闘力低いお前らのイタズラってなんだよ」
「えっと、それはぁ……時間止めてなんか悪いことする!」
黒猫タオがえっへん!と胸を張る。
「そんなことしたら紫外線でお前の顔シミだらけにしてやるからな!」
「え……」
さっきまで威勢のよかったタオはヒョンのからかいを真に受けたのか、すっかり鳴りを潜め狼男セフンの後ろに隠れてしまった。黒い尻尾だけがゆらゆらと揺れている。
「タオ、相手が悪いよ。次に行こう」
「うん……」
ベッキョニヒョンは「相手が悪いってなんだよー!」って文句を言っていたけど放っておいた。
「ねぇ、チャニョリヒョンは?」
作業室のドアを見て俺が口を開けば、タオはまたキラキラとした目でヨルくんならイケる!ってガッツポーズをする。
「でもお菓子持ってるか分かんなくない?」
「あ……」
「大丈夫、ヨリヒョンなら任せて」
意外と逞しい言葉を発したのはセフンで。それならばとセフンに任せて、俺たちはドアを開いた。
「「Trick or Treat!!」」
「ヒョン、お菓子ください」
「え!?」
「持ってないんですか?」
「あ、えーっと!お菓子……お菓子……」
「まさか、ヒョンなのにお菓子の準備もしてないんですか?ヒョンなのに。可愛い弟たちのために紗々一箱づつ準備しとくとか、そんな気も利かない人だったんですか?ヒョンなのに」
「あ、いや……!」
「ほんと、ヒョンなのに情けないですね。仕方ないから、あとでもう1回来てあげてもいいですけど?」
「マジで!?ありがとう!セフナ!!準備しとくから!すっごいの準備しとくから!驚くなよ!?」
「はぁ、もう仕方ないですね。さ、次行こうか」
「え……あ、うん!」
呆気にとられてた俺とタオは、セフンに連れられて次の部屋を目指した。
すると玄関の方からバタバタと音がしてチャニョリヒョンが出掛けたのが分かったから、セフンすげぇ……って思わず感心した。
「次どうする?」
「うーん、あ!チェンチェン!チェンチェンなら優しいしきっとお菓子も持ってるし大丈夫だよ!」
確かに。そうだな、と行き先をチェンヒョンの部屋に定める。
「「Trick or Treat!!」」
「お菓子くれなきゃイタズラするよー!!」
「え!?あぁハロウィンかぁ!あはは!三人とも可愛いねぇ」
セフンの獣耳やタオのしっぽを触ったあと、「カイは……ドラキュラ?」なんて首をかしげた。
「うん、見えない?」
「マントだし見えなくはないけど……あ!牙がないじゃん!牙が!ドラキュラなら牙が無くちゃ!」
「もー!仕方なじゃん!カイの牙は折れたの!タンスにぶつけて牙が折れた可哀想なドラキュラなの!」
「いや、それただの設定だから」
「あはは!そっかぁ。可哀想なドラキュラなのかぁ。じゃあ血も飲めないから餓死しちゃうねぇ」
「そう!だからお菓子ちょうだい!」
「ちょっと待ってて」
え、なにこれ。
勝手に会話成立してるし……マジかよ。
「あ、ゴメン!お菓子箱空っぽだった!」
「「「えーーー!!」」」
「こないだのレイヒョンの誕生日会の時につまみ提供しちゃってから買い足してなかったの忘れてた」
「えー!!」
「ごめんってばぁ。もしかして、イタズラする?」
三人を順に上目遣いで見つめるチェンヒョン。それを受けて俺たちも三人で視線を交わす。
「「「するーーー!!!」」」
そう言ってヒョンを捕まえると、取り囲んで擽り攻撃を開始した。
「ぎゃぁぁぁああああ!!!ちょっと待ってよ!!ムリムリー!!」
声をあげるチェンヒョン。
面白がって擽る俺たち。
そして、なぜか冷気を感じる背中……
はっ!と振り返ると、そこにいたのはウミニヒョン……じゃなくてレイヒョンだった。
レイヒョンの能力って癒しだよな?
「Chen or Die……チェンを離さなきゃ殺すよ?」
「「「ごめんなさいーー!!!」」」
俺たちは急いで部屋から逃げ出した。
「怖かったね……」
「うん、怖かった……」
「本気で殺されるかと思った……」
「あの人ならやりかねないよ。寿命縮めるのなんて簡単なんだし」
「ちょっと角出てたよね」
「うん……」
俺たちは、ぶるりと三人同時に身震いをした。
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