惑星日和
【惑星日和#4】
******************
「あれ?クリスヒョン出掛けるんですか?」
「ん?チェンか。スホが迎えに来てくれって言うから」
「相変わらず過保護ですね」
「そうか?」
まったく、クリスヒョンはスホヒョンに対して過保護すぎると思う。
ま、いいけど。
「あ、そうだ!街まで行くんですよね?」
「そうだけど?」
「じゃあ、そこまで乗せていってくれません?」
ディオに晩ごはんの材料のおつかいを頼まれていたのだ。
その事を伝えると、僕は急いで支度をしに部屋まで戻った。
クリスヒョンの背中は久しぶりだからめちゃくちゃ楽しみだ!
「お待たせしました!」と玄関に向かうと、今度はカイがやって来た。
「ヒョンたち出掛けるんですか?」
カイは不思議そうな顔をした。
だから僕は、クリスヒョンはスホヒョンを迎えに、僕はディオのおつかいに、と伝える。
「チェンヒョン、俺一緒に飛びましょうか?」
その方が早いし楽じゃないですか、とカイは言ってくれたけど、ゆっくり飛びたい気分だからと断った。
カイは残念そうな顔を向けるので、ありがとうと言って頭を撫でてやった。
相変わらず、可愛いやつだ。
僕は早速クリスヒョンの背中に飛び乗った。
大きな白いマントを広げると、ひゅっと風が起こる。
ふわりと飛んで、あっという間に空の上までやって来た。
飛ぶときのクリスヒョンは本当に格好いい。
白いマントをバサッと広げて、悠々と風に乗っていく。角度をつけてカーブを曲がってくれたりして、僕は背中できゃっきゃと声をあげた。
「ヒョン、気持ちいいですね!」
「そうか?それはよかった」
クリスヒョンは少しだけ僕と空中飛行の旅をしてくれて、最短距離ではなく遠回りをしてくれた。
「ヒョン!あんまり遅くなるとスホヒョンに怒られますよ」
「あぁそうだな」
「はい!」
風の音に紛れないように大きな声で返す。
じゃあそろそろ行くか、と言うと、クリスヒョンは大きく旋回して建物の屋上へと降り立った。
「はぁ、楽しかったです!また乗せてくださいね」
「もちろんいつでも」
クリスヒョンは背を向けると片手を上げて非常階段へと向かっていった。
ルハンヒョンとかベッキョナとか怖がる人もいるけど、僕はクリスヒョンと空中飛行をするのは結構好きだ。スリルがあって、景色もいいし風も気持ちいい。今日みたいに天気のいい日は特に。
それから僕は建物の中へと入っていくと、1階のスーパーでディオに頼まれた買い物をした。
そういえば洗剤がもうすぐ無くなりそうだ、とか、調味料もだし、ドラゴニとフェニちゃんのミルクもだ!って、気づけばカートの中は液体だらけで。参ったな、と苦笑しながら袋詰めを終えると、数歩歩いただけで腕が千切れそうになった。
僕は迷った末に、玄関先でのカイを思い出して電話を掛けた。
『もしもし?』
「あのさぁ……暇だったら迎えに来て欲しいんだけど……」
買いすぎちゃって、と苦笑すると、電話の向こうからは『いいよ』と嬉しそうな声が聞こえた。来るとき一度は断ったからむくれてるかと思ったのに。
やっぱり可愛いやつめ!
僕は辺りを見回して人のいない建物の陰の路地へと入りアプリを開いて緯度と経度をメールした。
それから10秒のカウントダウン。
10、9、……3、2、1
ボンッ!と音がしそうな勢いで現れたカイに驚きながらも、「ありがと~」と笑顔を向ける。急に人が現れるんだから、何度見ても驚くのは当たり前だ。
「はい、お駄賃ね」
そう言ってカイの目の前にたまたま買っていた白髭メガネのおじさんの袋を掲げれば、カイは嬉しそうに受け取った。
「やった!」
「今回だけだよ?」
「えー、いつでも迎えに行くのに」
好物のチキンにクンクンと鼻をならして笑うと「じゃあいい?」とカイは僕の空いた手を掴んだ。
「重いから気を付けてね」
「大丈夫」
そういうとカイは握る手に力を込めた。
僕はまた10秒数える。今度は1から順に。
1、2……
その10秒間は何処にいるのか、何回飛んでみても分からないけど、10秒は確かに10秒として存在しているのだ。カイが言うには時空とか歪みとか、そういう難しいことらしいけど僕にはよく分かんない。だって僕の能力は雷だし。カイみたいに複雑なもんじゃない。
……8、9、10!
きっかり10秒数え終えると、僕らは家の台所にいて、ご飯支度中のディオが驚いて固まっていた。
「……こ、ここに飛ぶなら……事前に教えてもらわないと困る!」
「ごめん……」
お怒りのディオにしゅんと背中を丸くするカイ。
「料理中なんだから危ないことくらい考えれば分かるだろ!」
「…………」
「……ディオ!ごめんって!僕が頼んだんだ!買い物しすぎちゃって重かったから」
買い物袋を掲げると、 ディオはそれでも怒りと驚きが収まらないのか、フンッと音がしそうな勢いで調理作業に戻った。
僕は苦笑しながらカイの肩に手をやって視線を落とす。
「あ……靴……」
「あ……」
土足だし。
カイや、次から家に戻るときは玄関に飛ぶようにしようね。じゃないと本気でディオが怒っちゃうよ、なんてね。
玄関に向かいながらポキポキと首を回して、体を伸ばす。今日は飛びすぎて体の感覚がおかしくなりそうだ。
あ!レイヒョンに治癒してもらおーっと!
おわり
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「あれ?クリスヒョン出掛けるんですか?」
「ん?チェンか。スホが迎えに来てくれって言うから」
「相変わらず過保護ですね」
「そうか?」
まったく、クリスヒョンはスホヒョンに対して過保護すぎると思う。
ま、いいけど。
「あ、そうだ!街まで行くんですよね?」
「そうだけど?」
「じゃあ、そこまで乗せていってくれません?」
ディオに晩ごはんの材料のおつかいを頼まれていたのだ。
その事を伝えると、僕は急いで支度をしに部屋まで戻った。
クリスヒョンの背中は久しぶりだからめちゃくちゃ楽しみだ!
「お待たせしました!」と玄関に向かうと、今度はカイがやって来た。
「ヒョンたち出掛けるんですか?」
カイは不思議そうな顔をした。
だから僕は、クリスヒョンはスホヒョンを迎えに、僕はディオのおつかいに、と伝える。
「チェンヒョン、俺一緒に飛びましょうか?」
その方が早いし楽じゃないですか、とカイは言ってくれたけど、ゆっくり飛びたい気分だからと断った。
カイは残念そうな顔を向けるので、ありがとうと言って頭を撫でてやった。
相変わらず、可愛いやつだ。
僕は早速クリスヒョンの背中に飛び乗った。
大きな白いマントを広げると、ひゅっと風が起こる。
ふわりと飛んで、あっという間に空の上までやって来た。
飛ぶときのクリスヒョンは本当に格好いい。
白いマントをバサッと広げて、悠々と風に乗っていく。角度をつけてカーブを曲がってくれたりして、僕は背中できゃっきゃと声をあげた。
「ヒョン、気持ちいいですね!」
「そうか?それはよかった」
クリスヒョンは少しだけ僕と空中飛行の旅をしてくれて、最短距離ではなく遠回りをしてくれた。
「ヒョン!あんまり遅くなるとスホヒョンに怒られますよ」
「あぁそうだな」
「はい!」
風の音に紛れないように大きな声で返す。
じゃあそろそろ行くか、と言うと、クリスヒョンは大きく旋回して建物の屋上へと降り立った。
「はぁ、楽しかったです!また乗せてくださいね」
「もちろんいつでも」
クリスヒョンは背を向けると片手を上げて非常階段へと向かっていった。
ルハンヒョンとかベッキョナとか怖がる人もいるけど、僕はクリスヒョンと空中飛行をするのは結構好きだ。スリルがあって、景色もいいし風も気持ちいい。今日みたいに天気のいい日は特に。
それから僕は建物の中へと入っていくと、1階のスーパーでディオに頼まれた買い物をした。
そういえば洗剤がもうすぐ無くなりそうだ、とか、調味料もだし、ドラゴニとフェニちゃんのミルクもだ!って、気づけばカートの中は液体だらけで。参ったな、と苦笑しながら袋詰めを終えると、数歩歩いただけで腕が千切れそうになった。
僕は迷った末に、玄関先でのカイを思い出して電話を掛けた。
『もしもし?』
「あのさぁ……暇だったら迎えに来て欲しいんだけど……」
買いすぎちゃって、と苦笑すると、電話の向こうからは『いいよ』と嬉しそうな声が聞こえた。来るとき一度は断ったからむくれてるかと思ったのに。
やっぱり可愛いやつめ!
僕は辺りを見回して人のいない建物の陰の路地へと入りアプリを開いて緯度と経度をメールした。
それから10秒のカウントダウン。
10、9、……3、2、1
ボンッ!と音がしそうな勢いで現れたカイに驚きながらも、「ありがと~」と笑顔を向ける。急に人が現れるんだから、何度見ても驚くのは当たり前だ。
「はい、お駄賃ね」
そう言ってカイの目の前にたまたま買っていた白髭メガネのおじさんの袋を掲げれば、カイは嬉しそうに受け取った。
「やった!」
「今回だけだよ?」
「えー、いつでも迎えに行くのに」
好物のチキンにクンクンと鼻をならして笑うと「じゃあいい?」とカイは僕の空いた手を掴んだ。
「重いから気を付けてね」
「大丈夫」
そういうとカイは握る手に力を込めた。
僕はまた10秒数える。今度は1から順に。
1、2……
その10秒間は何処にいるのか、何回飛んでみても分からないけど、10秒は確かに10秒として存在しているのだ。カイが言うには時空とか歪みとか、そういう難しいことらしいけど僕にはよく分かんない。だって僕の能力は雷だし。カイみたいに複雑なもんじゃない。
……8、9、10!
きっかり10秒数え終えると、僕らは家の台所にいて、ご飯支度中のディオが驚いて固まっていた。
「……こ、ここに飛ぶなら……事前に教えてもらわないと困る!」
「ごめん……」
お怒りのディオにしゅんと背中を丸くするカイ。
「料理中なんだから危ないことくらい考えれば分かるだろ!」
「…………」
「……ディオ!ごめんって!僕が頼んだんだ!買い物しすぎちゃって重かったから」
買い物袋を掲げると、 ディオはそれでも怒りと驚きが収まらないのか、フンッと音がしそうな勢いで調理作業に戻った。
僕は苦笑しながらカイの肩に手をやって視線を落とす。
「あ……靴……」
「あ……」
土足だし。
カイや、次から家に戻るときは玄関に飛ぶようにしようね。じゃないと本気でディオが怒っちゃうよ、なんてね。
玄関に向かいながらポキポキと首を回して、体を伸ばす。今日は飛びすぎて体の感覚がおかしくなりそうだ。
あ!レイヒョンに治癒してもらおーっと!
おわり