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12月の奇跡

Kris*Suho



12月は俺達を引き離した季節。


「ジュンミョニヒョン、結婚するって……親の決めた人と」


辛そうに眉を下げながら、ジョンデが教えてくれた。


「そうか……」
「ヒョン、大丈夫ですか?」
「え……何が?」
「何がって……」


優しい性格のジョンデは俺の気持ちを推し量っている。
お前の方が泣きそうな顔じゃないかって、苦笑した。


「気にするな。大丈夫だから」


そう言って頭を撫でた。


例えば好きだという気持ちだけではどうにもならないことがある。それが世の中の摂理で、そんな縛りの中で俺達は生きなければならない。だから、仕方のないことだった、と言ってしまうにはあまりにも愛しすぎた。

12月に入って雪がちらつき始めたとき、俺達は共に歩むのを諦めた。あいつの肌が降り始めた雪のように真っ白で、だだぎこちなく笑っていたのを今も覚えている。

瞼に蘇るあいつの意思の籠った瞳を、白い肌を、薄い唇を、描いてみようとキャンバスの前に向かっても、俺の手はいっこうに動かなかった。ただ真っ白なそれを見つめて、あいつの面影をなぞって、らしくもない涙を流す。こんなに感傷的になるのは、今が12月だからだろうか。なんて。重い溜め息がひとつ溢れた。


あいつの手を離したことを、後悔してるわけじゃないんだ。お互いに納得していたし、あのとき離れなかったとしてもきっといつか、遠くない未来に、俺達は別れていたはずだから。


「ジュンミョナ……」


呟いてみれば、酷く懐かしい響きがした。

真面目すぎるほど真面目なあいつが、俺達の関係を続けるには、俺達は少し複雑すぎた。たくさんのしがらみの中で愛し合うための嘘を重ねて、それに疲弊して。
決して弱音を吐かないあいつを守る術を、あのとき俺は持ち合わせていなかったから。


会いたい……


会って抱き締めて愛を囁いて。
あの頃に戻れるなら。
人生の中で一番輝いていたあの頃に。
そしたらすべてを捨ててお前を選ぶから。

こんな情けない姿を見たら、あいつは何て言うだろうか。笑うだろうか。泣くだろうか。
否、きっと俺の背中を叩いて「飯でも食おう」って言うんだろうな。そういうやつだった。いつもあの涼やかな声で小言をこぼしては笑っていた。あの笑顔に、俺はいつだって支えられていたんだ。そう、今だって。



12月の奇跡があるというなら、もう一度あいつと……


否、生まれ変わったらでいい。
だからその時はどうか……


もう一度、愛を誓わせてください。




終わり
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