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12月の奇跡

Luhan*Xiumin



12月は君の幸せを見届ける季節。



ソファーに座る僕の目の前には、君が彼女へ贈るプレゼントが広げられていた。それらを一通り眺めて溜め息をこぼす。

僕に選んでくれだなんて、酷すぎるよ、ねぇ。

「ルハニそういうの得意だろ?」って苦笑する君の頼みは、彼女へのクリスマスプレゼントだった。それを僕に選んで欲しいと。
好きな人が好きな人へ贈るプレゼント。
決して届くはずのない僕の想い。


「何がいいのか分かんなくてさ」
「そんなの……ミンソクの想いが詰まってれば何だって喜んでくれるよ」


僕なら、君がくれるものなら何だって嬉しい。笑いかけてくれるその笑顔ひとつだって。

目の前のそれを箱に詰めて、僕はミンソクの元へと向かった。足取りは重くて、降り始めた雪は僕を幾重にも阻む。何年も抱えてきた不埒な想いを掻き分けて、君が好きだと言ってくれた笑顔を貼り付けて。涙が、溢れそうになるのを必死で堪えた。

親友だなんて、嘘だよ。

この燻る想いを持て余してる僕は、君の親友だなんて本当はそんな資格はない。それでも君から離れられなくて、僕は嘘を重ねる。
何年も前に自覚した想いは、日に日に膨れ上がるばっかりで。手に入らないものへの執着なのか。だったらこれ程簡単なものはないのに。君を愛してるから、君が欲しくて堪らないんだ。

触れられる場所にある手に入らないもの程、歯痒いものはないんだね。


君の家に行って恥ずかしそうに通されたそこには、瞬くほどの装飾が施されたクリスマスツリーが立っていた。幸せを象徴するようなそれは、僕の胸を一層締め付ける。君の優しい想いが溢れていた。


「恥ずかしいから、あんまり見るなよ」


そう言って苦笑を浮かべる君に、僕はちゃんと笑えてただろうか。

僕が用意したプレゼントを「ありがとう」と受け取って。僕が好きな白く丸みを帯びた頬を僅かに赤く染めて。「じゃあな」って笑みを浮かべて。君は彼女の元へと向かった。
一緒に出た部屋の外。その愛しい後ろ姿に僕はなんて声を掛ければよかったんだろう。思わず伸びた腕は、その背中に届くことなく空を切った。
僕はただ、このまま溶けて消えてしまいたかった。



どこかで聞いたお伽噺。
12月は奇跡が起こる季節だって。


だったらどうか、僕の想いが少しでも君に届きますように。
僕が君を好きな、この気持ちの何分の一かでも。



かじかむ指に白い息を吹き掛けて、重い足を踏み出した。





終わり
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