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12月の奇跡

Chanyeol*Baekhyun




12月はあいつがいないことを思い知る季節。



「なぁ、チャニョラ。来年のクリスマスも俺達がまだ付き合ってたら、その時はカップルリング買って?」


去年のクリスマス、二人で屋台でおでんを食べながらそんな話をした。だから今年のクリスマス、俺はカップルリングを買う。

どんなデザインがいいか何件もお店をまわって、やっとあいつに似合いそうな指輪を見つけた。シルバーの、小さな細工が施された指輪。気に入ってくれるかな、とか胸を高鳴らせながら、自分のよりひとまわり小さなサイズのそれを小指に通した。薬指に光る自分のそれと並んで日の光に当てれば、眩いほどに輝いていた。
あいつの指は細くて綺麗だからきっと似合うだろう、なんて笑みを浮かべながら。


ベッキョナ、俺はちゃんと約束覚えてるよ。


受けとるはずのあいつは、もうこの世にはいない。事実を受け止めきれてるのかは自信がないけど、こうして約束を果たそうとするあたり、俺もバカだよなって呆れる。

白く痩せ細っていったあいつを抱き締めるのが怖くなっていった頃、あいつは静かに息を引き取った。クリスマスには一緒におでんを食べていたっていうのに、ほんの何ヵ月か後にはもういないだなんて、せっかちにも程があるだろって呆れながら泣いた。


なぁ、ベッキョナ。
ひとりで過ごす12月は寒すぎるよ。


あんなにいつも一緒にいて、ふざけあって笑いあって。「俺達、一生の親友だな」って言うから、「親友よりは恋人の方がいいなぁ」って呟いたら真っ赤な顔をして固まったんだっけ。
初めて手を繋いだときのぎこちなさも、初めて身体を繋いだときの愛しさも、俺の記憶にこびりついてるっていうのに、あいつだけがいないなんて、笑えるよ。

一生大事にするって言ったのに、俺の力の及ばないところであいつはいなくなった。どんなに愛してももういないのに、それでも俺の心を離さないあいつは大したもんだと思う。まったく。

初めてデートした広場で、来ることのない人を待つ。雪が降り始めて肩を濡らした。


どうしていなくなったりなんかしたんだよ。


悔しさが胸を打つ。こぼれた涙は雪に溶けて消えてしまった。「お前にしては中々じゃん」って照れくさそうに笑ってこの指輪を受け取って欲しかった。



12月の奇跡が、俺のもとへ舞い降りますように。




どうかもう一度、あいつに会わせてください。





終わり
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