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12月の奇跡

Tao*Sehun


12月は彼が想いを打ち明ける季節。



「告白、しようと思うんだ」


雪が降り始めた12月のある日、セフンは照れ笑いを浮かべてそう言った。ずっと好きだった人だと。そんなの聞いてないよ?って言い掛けたけど、セフンの笑顔を見てたら言えなくなった。


「タオも応援してくれるよね?」


とても難しい恋なんだ、と心許ない顔を向けられて。


「うん……」


僕は頷くしかなかった。

きっと僕の方が難しい恋だ。
親友を好きになることほど不毛なことはない。好意を履き違えるなと何度も言い聞かせた。だけど、セフンが好きだから、セフンの笑顔を見たいから、頷かざるを得なかった。だってセフンが好きなのは女の人だから。

嬉々として告白の準備をするセフンを見てると、何度も腕を掴んで引き留めてしまいそうだった。


「花が好きな人だから、花束を渡そうと思うんだ」
「……いいんじゃない」

「来てくれなかったらどうしよう」
「大丈夫だよ……セフナは格好いいんだから」

「上手くいったら、ご飯奢るよ」
「やったぁ……」


応援なんてこれっぽっちもしてないくせに、言葉はするすると口から飛び出して。いつもの我が儘っぷりはどこへ行ったのか見当たらないくらいだ。
頬を少しだけ赤らめて話すセフンを、この腕で抱き締めて閉じ込めてしまいたかった。

そんなふうに他の人の話しないで。
僕の前で僕じゃない人を想って胸を高鳴らせないで。

届かない想いは降る雪のように切々と降り積もる。蓄積されたそれは僕の心を冷やしていくんだ。

セフナを、僕がこの腕で愛情でもって抱き締めることは叶わなかったけど、せめて彼が幸せであるように。彼の前でも上手く笑えますようにと、神様に願った。


広場の、今はもう水の出ない噴水の前でセフンは想い人を待つ。
来てくれるかさえ分からないと言った人。
セフンがずっと心に秘めていた想い。

僕はどうしても見てみたくて、いけないと思いつつも広場の隅にある時計塔の下に身を潜めた。
やがて彼の前には一人の女性が現れて、セフンの顔はみるみると笑顔になった。あー、それが好きな人に見せる笑みなんだなって。あまりにも綺麗で、胸が、堪らなく締め付けられた。

どうしてその笑顔を向けられる相手は、僕じゃないんだろう。

あんなに近くで見てきたのに。


セフンはその綺麗な顔に緊張を貼り付けて、言葉を紡いだ。期待に満ちた目を向けて。


時間よ、戻って──


そう願わずにはいられない瞬間、僕は時計塔を見上げた。



12月は奇跡が起きる季節。


時間を戻して、どうか僕の腕の中に彼が収まるように。



一粒の涙がこぼれた。





終わり
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