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12月の奇跡

Kai*D.O.



12月はあの人を待ち続けた季節。


あの日ヒョンに贈るはずだった仔犬は、いつの間にかこんなに大きくなっていた。いつの間にか消えた人。
あの人を象徴する"ディオ"という名前を与えたら、思いの外気に入られて、今となってはそれ以外で呼んでも振り向いてくれないとか、痛すぎて笑える。

あの日、少し早いけどとクリスマスプレゼントに買った仔犬。喜んでくれるかなとか期待して開けたドアの先は、ヒョンの荷物だけが綺麗に消えていた。忘れもしない12月のこと。小さな命が腕の中で震えていたんだ。


ダンスに明け暮れていた俺を、いつもあの人は少しだけ呆れたような顔で笑っていた。

「ダンスってそんなに楽しい?」
「うん、なんていうか、自分だけの世界に入れる」
「そう……」
「ヒョンも踊ってみれば分かるよ」
「僕はいいよ」

そんな会話を何度したっけ。苦笑するヒョンの腕を掴んで振り回したりして。くるくると回るヒョンの大きな目が可愛くて。あぁ、幸せだなって思った。ヒョンと笑い合える毎日が、穏やかで、永遠に感じていた。
だけどあの日、そんなのはただの幻想だって思い知ったんだ。

あの人の欠片が何もない部屋で、ひたすらに待ち続けるのは正直キツいけど、それでもこの部屋を離れられないのは今でも想い出には変えられてないから。


「ディオや。ヒョンはどこまで行っちゃったんだろうな……」


話し掛けたところで帰っては来ない返事を待ち続ける。
外は雪が降り始めていて、あぁ、また12月が来たんだなって。ヒョンがいなくなった12月が。

仔犬は大きくなっちゃったけど、きっとヒョンに会ったらヒョンに懐くと思うんだ。だってヒョンは俺の最愛の人だから。
ヒョンはちょっと天の邪鬼だから犬なんか飼ってる俺を見て「寂しかったの?」って笑って、「ジョンイナだって大きな犬みたいなもんなのに」とか文句を言って。それでもきっと頬を緩めてこの子を撫でるんだ。
戻ってきたらたくさん文句を言うと思うけど、でもきっとそれ以上に愛の言葉を囁くと思うから。
だから早く戻ってきてくれないかなぁ。
この子が老犬になってしまう前に。


12月は俺にとってあの人を待つ季節。
だけど、奇跡が起きる季節でもあるから。


だからどうか、早く戻ってきてください。


俺の最愛の人。




終わり
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