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12月の奇跡

Lay*Chen




12月は僕から君を奪った季節。


僕の恋人はしんしんと降る雪に掠め取られた。無邪気に笑う君の笑顔を思い出す度、もうどうしよもないことなのに涙がこぼれるんだ。
こんな僕を見たら君は困ったみたいに眉を下げて笑うんだろうね。それから抱き締めてくれて、頭や背中を撫でてくれて、「泣かないで」ってあの可愛い声で言うんだろうな。もういない君を想う度に淋しさが込み上げるんだ。

電話の音は嫌い。
あの日を思い出させるから。
12月も。しんしんと降る雪も。君を奪った黒いワゴン車も。
僕は君のせいで嫌いなものが増えた。こんなこと言ったら「僕のせいにしないでくださいよ」って笑う君の声が聞こえた気がした。
ここに君がいないなら、いっそ僕もそっちへ行ってしまいたかった。僕がここにいる意味なんてないから。だけど、そう思う度に君の声が聞こえて「ヒョンはもうしばらくそっちで頑張ってください」って君が言うから、結局ここにいない君が、僕がここにいる意味を作ってしまったんだ。君がいない世界で僕に生きろという君はとても酷い人だよ。

僕の愛した人は呼吸をするようにいつも歌を口ずさんでいた。
楽しそうに紡がれるその声はいつも僕を幸せにした。もう聞こえないはずの声が、歌が、いつも頭の中で鳴っている。


君のために曲を作ったんだ。君が歌うことはない曲を。君を想って作ったんだ。


「ヒョン、どこ行くの?」
「あぁ、ベッキョナ。ちょっとね」
「……なんか、ヒョンの楽しそうな顔、久しぶりに見ました」
「そうかなぁ?」
「はい。なんか……すごく嬉しいです」
「……ありがとう」


出来た曲をディスクに収めて君が眠る場所へと届けようと向かう途中、偶然ベッキョンに会った。
彼も君と同じで歌うことが好きで、よく笑う。背格好も似ていて、彼に君を重ねるなんて君に怒られるかもしれないな、って苦笑した。

この曲を君が天国で歌ってくれたらいいな。そう思って作った。
12月も、しんしんと降る雪も、黒いワゴン車も、電話の音も。君がいないことを思い出すものすべてを好きになれるように。君が好きだと言ってくれていた優しい僕に戻れるように。


どうか、12月の奇跡が起きますようにと願いながら。


君の待つ天国へ届きますように。





終わり
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