学パロシリーズ
ジョンデの場合
それはあまりにも突然で、心の準備なんて何一つ出来ていなかった。
「あ、ヒョンおかえりー」
ミンソギヒョンにしては珍しくドタドタと階段を昇ってきたので、僕は不思議に思ってドアを開けた。
「ただいま。そうだジョンデ、この前買ったCD知らない?貸そうと思って、今人待たせてるんだよ」
「え、そうなの!?ちょっと待って!」
人を待たせてるだなんて、道理で忙しないわけだ。だって普段のヒョンはもっと落ち着いているから。
それなら一緒に探さないと、なんて僕も一緒に部屋の中を探した。
えーっとどこやったかなぁ。
確かミンソギヒョンが買ってきて、僕のプレーヤーで皆で聞いて……
「あ!ジョンイニが練習に使いたいって言ってたから持ってったかも!」
「え、マジで?じゃ、あいつから渡してもらうか」
ん……?
あいつからって、その人はジョンインとも知り合いなの?
そんな疑問が顔に出ていたのか、ミンソギヒョンは「そいつもダンス部だから」と笑って下へ降りて行った。
ミンソギヒョンが友達を連れてくるのは珍しいことではないんだけど、ルハニヒョン以外なら珍しいことなのかもしれない。
僕はちょっとした好奇心から階段を降りて玄関を覗いた。
「え……!?」
「あ……!」
世間は、なんて狭いんだろう。
階段の影からひょっこり頭を出した僕を見て、その人と目があった瞬間、僕らは同時に声を出していた。
「ん?」
きょろきょろと頭を振るミンソギヒョンの後ろで、僕は慌てて頭を引っ込めて、階段の影に隠れた。
「なに?どうした?」
「うん。そっか、ミンソクって弟二人いるんだもんね」
「あぁ、うん、そうだけど……?」
「ジョンインが3番目だからぁ、今のは真ん中?」
「ん……?ジョンデ?今居たのか?」
「うん、階段の影に隠れちゃった」
「ははは!ジョンデ、出てこいよ!紹介するから」
ヒョンたちに面白がられて階段の影から引きずり出された僕は、定まらない視線の端でその人を捉えた。
「ほら、ジョンデ挨拶しろ。同じ学校なんだからどっかで会うかもしれないだろ」
ミンソギヒョンがそう言うと、その人は「音楽室とかね」と言って、にこりと微笑みかけられた。
僕は思わず固まるしかなかった。
やっぱりバレていた……
もしかしたら中庭で聴いていたのは僕だってバレてないかもしれないし、なんていうほんの僅かな期待は脆くも崩れ去って。
あぁー、どうしよう。
世間はやっぱり狭いんだなぁ、なんて。
「こ、こんにちは……」
お腹の前で手を合わせてペコリとお辞儀する。
「こいつはレイ。1年のとき同じクラスだったんだ。今はルハンと同じクラス」
「よろしくね」
「あ……は、はい!」
にっこりと、そりゃあもう満面の笑みで笑うその人を見て、僕は跳ねる心臓の音を聴きながらこれからのことを思った。
だって、あのピアノの先輩が目の前にいるだ。
「あ、そうだ!CDさ、ジョンインのやつが持ってっちゃったみたい」
ミンソギヒョンが話始めたのに、何となくその場を去るタイミングを失った僕は、ぎこちなくそこに立っていた。けど、それが悪かったんだ。
「そっか、じゃあジョンイニから借りるね」
「あぁ、わざわざ寄ってもらったのに悪いな」
「ううん、全然。いいことあったし」
「いいこと?」
「うん、いいこと」
あ……って思っていたら、案の定その人は僕を見て。ミンソギヒョンは不思議そうな顔をして、僕はぎこちなく笑った。なんだこれ。
「じゃあ、帰るね」と言うその人にミンソギヒョンは「道分かる?」と聞くと「多分?」と小首をかしげる。家は少しだけ複雑な道順だから、僕までちょっと不安になった。
「はは、駅まで送るよ」
「いいよ大丈夫。あ!でも、じゃあジョンデくん送って?」
「へ……!?」
は????
だからって、僕!?
混乱する頭なのに逃げられない笑顔を向けられて、結局自分からヒョンに頷いて靴を履いていた。
きっとこれは、いつものピアノのお礼ってだけ。
おわり
それはあまりにも突然で、心の準備なんて何一つ出来ていなかった。
「あ、ヒョンおかえりー」
ミンソギヒョンにしては珍しくドタドタと階段を昇ってきたので、僕は不思議に思ってドアを開けた。
「ただいま。そうだジョンデ、この前買ったCD知らない?貸そうと思って、今人待たせてるんだよ」
「え、そうなの!?ちょっと待って!」
人を待たせてるだなんて、道理で忙しないわけだ。だって普段のヒョンはもっと落ち着いているから。
それなら一緒に探さないと、なんて僕も一緒に部屋の中を探した。
えーっとどこやったかなぁ。
確かミンソギヒョンが買ってきて、僕のプレーヤーで皆で聞いて……
「あ!ジョンイニが練習に使いたいって言ってたから持ってったかも!」
「え、マジで?じゃ、あいつから渡してもらうか」
ん……?
あいつからって、その人はジョンインとも知り合いなの?
そんな疑問が顔に出ていたのか、ミンソギヒョンは「そいつもダンス部だから」と笑って下へ降りて行った。
ミンソギヒョンが友達を連れてくるのは珍しいことではないんだけど、ルハニヒョン以外なら珍しいことなのかもしれない。
僕はちょっとした好奇心から階段を降りて玄関を覗いた。
「え……!?」
「あ……!」
世間は、なんて狭いんだろう。
階段の影からひょっこり頭を出した僕を見て、その人と目があった瞬間、僕らは同時に声を出していた。
「ん?」
きょろきょろと頭を振るミンソギヒョンの後ろで、僕は慌てて頭を引っ込めて、階段の影に隠れた。
「なに?どうした?」
「うん。そっか、ミンソクって弟二人いるんだもんね」
「あぁ、うん、そうだけど……?」
「ジョンインが3番目だからぁ、今のは真ん中?」
「ん……?ジョンデ?今居たのか?」
「うん、階段の影に隠れちゃった」
「ははは!ジョンデ、出てこいよ!紹介するから」
ヒョンたちに面白がられて階段の影から引きずり出された僕は、定まらない視線の端でその人を捉えた。
「ほら、ジョンデ挨拶しろ。同じ学校なんだからどっかで会うかもしれないだろ」
ミンソギヒョンがそう言うと、その人は「音楽室とかね」と言って、にこりと微笑みかけられた。
僕は思わず固まるしかなかった。
やっぱりバレていた……
もしかしたら中庭で聴いていたのは僕だってバレてないかもしれないし、なんていうほんの僅かな期待は脆くも崩れ去って。
あぁー、どうしよう。
世間はやっぱり狭いんだなぁ、なんて。
「こ、こんにちは……」
お腹の前で手を合わせてペコリとお辞儀する。
「こいつはレイ。1年のとき同じクラスだったんだ。今はルハンと同じクラス」
「よろしくね」
「あ……は、はい!」
にっこりと、そりゃあもう満面の笑みで笑うその人を見て、僕は跳ねる心臓の音を聴きながらこれからのことを思った。
だって、あのピアノの先輩が目の前にいるだ。
「あ、そうだ!CDさ、ジョンインのやつが持ってっちゃったみたい」
ミンソギヒョンが話始めたのに、何となくその場を去るタイミングを失った僕は、ぎこちなくそこに立っていた。けど、それが悪かったんだ。
「そっか、じゃあジョンイニから借りるね」
「あぁ、わざわざ寄ってもらったのに悪いな」
「ううん、全然。いいことあったし」
「いいこと?」
「うん、いいこと」
あ……って思っていたら、案の定その人は僕を見て。ミンソギヒョンは不思議そうな顔をして、僕はぎこちなく笑った。なんだこれ。
「じゃあ、帰るね」と言うその人にミンソギヒョンは「道分かる?」と聞くと「多分?」と小首をかしげる。家は少しだけ複雑な道順だから、僕までちょっと不安になった。
「はは、駅まで送るよ」
「いいよ大丈夫。あ!でも、じゃあジョンデくん送って?」
「へ……!?」
は????
だからって、僕!?
混乱する頭なのに逃げられない笑顔を向けられて、結局自分からヒョンに頷いて靴を履いていた。
きっとこれは、いつものピアノのお礼ってだけ。
おわり