学パロシリーズ
タオの場合
セフンの色を表すならレモンイエロー
そう言ったら、「なにそれ」って笑われた。
ジョンインにも、フンって鼻で笑われたし。でも僕はとても似合ってると思うんだ。レモンイエローっていう色がっていうんじゃなくて、色が持っている雰囲気が。
セフンとキスしたとき、何でかそう思った。
ファーストキスはレモンの味、なんて言われてるからかな。
目を開けた瞬間、窓から差し込む西日がセフンの少し赤い頬を照らしていて、すごくすごく綺麗だった。
その時の色が、うんそう。レモンイエロー。
「フナ~」
体育の授業のグラウンドからの帰り、手を引いて校舎裏まで隠れる。
えー、と言いつつ嫌がってないのは足取りを見れば分かることで、二人だけの秘密はこうしてちゃんと続いている。
季節はいつの間にか夏になっていて、ますますレモンイエローがピタリとハマるようになってきた。
「秘密だよ?」
「うん」
そんな風に交わすキスは、本当に甘酸っぱい気がしていた。ジリジリと射す夏の日差しは、校舎の影になって今だけは届かない。
そう、秘密のキスは秘密の場所で。
「遅かったね」
「そ?ジョンイニが早いんだよ」
「あれ?パンなの?」
「さっき早弁したから」
「そう」
僕らが隠れてキスをしていた間、ジョンインはすでに着替え終わっていて、さらに購買でパンを買う時間まであったらしい。なんだかくすぐったい気がするのは気のせいだろうか。
さぁ、三人で机を囲んで昼休みの始まり。
「あっついねぇ」
パタパタとノートで扇ぎながら、鞄からお弁当を取り出す。
「あ、タオ、今日部活?」
「うん、そうだよ」
「終わるの待っててもいい?」
「いいけど、なんで?」
「いや、何となく」
セフンが僕を待ってるなんて、珍しいこともあるもんだなぁ、なんて思いながら弁当を口にする。今日の唐揚げはいつもより大きくて美味しいから嬉しい。
僕らの世界はとても狭くて、いつだって閉鎖的だ。
セフンとキスをするのがいけないことだっていうのは分かる。だけど、それを咎める人は誰もいない。僕らの秘密は守られてるから。
「おまたせ~」
部活が終わって猛ダッシュで教室で待ってるセフンのところへと急いだ。
「おつかれー」
「で、なに?どうしたの?」
「え?」
「話でもあるんじゃないの?」
「別に。一緒に帰ろうと思っただけ」
「そう」
そっか!一緒に帰るために待ってたのか!なんてちょっと嬉しくなる。だってこんなことは本当に珍しくて。セフンは帰宅部だから一緒に帰れることなんて滅多にないし。
けれど、「どっか寄ってく?」と聞くと、「うん」とうつ向くセフンがちょっとだけ気になった。
「どうしたの?元気ないよね?」
「いや、そんなことないけど……」
ダメだよ、セフンは笑ってなくちゃなんだから。僕は幸せそうに笑うセフンの顔が好きなんだ。
そういえば今日宿題多くない!?とか、この前買ったゲームがさぁ、とか僕ばっかりが話してる中、「ねぇ、」とセフンが口を開いたのは、ショッピングモールへの道を歩いているとき。夕日がそろそろ沈みそうな頃。
「なに?」
「うん……タオはさ、その、どうして僕にキスするの?」
「どうしてって?」
「や、どうしてかなぁと思って」
だっておかしいじゃん、とセフンは言う。
「おかしいの?」
「おかしいよ」
「うーん……」
「もしかして、他の人ともする?」
「しないよー!!するわけないじゃん!!」
だってセフンとするのが好きなんだもん。
そう言うと、セフンはまたうつ向いて、「そう」と消えそうな声で呟いた。
あ。
パチパチって頭の中でレモンソーダが弾ける音がして。夕日が沈む間際、レモンイエローのセフンは道端の石ころを蹴って、ふわりと笑った。
僕は、なんだかとても嬉しくて、心臓の裏っかわがむず痒かった。
おわり
セフンの色を表すならレモンイエロー
そう言ったら、「なにそれ」って笑われた。
ジョンインにも、フンって鼻で笑われたし。でも僕はとても似合ってると思うんだ。レモンイエローっていう色がっていうんじゃなくて、色が持っている雰囲気が。
セフンとキスしたとき、何でかそう思った。
ファーストキスはレモンの味、なんて言われてるからかな。
目を開けた瞬間、窓から差し込む西日がセフンの少し赤い頬を照らしていて、すごくすごく綺麗だった。
その時の色が、うんそう。レモンイエロー。
「フナ~」
体育の授業のグラウンドからの帰り、手を引いて校舎裏まで隠れる。
えー、と言いつつ嫌がってないのは足取りを見れば分かることで、二人だけの秘密はこうしてちゃんと続いている。
季節はいつの間にか夏になっていて、ますますレモンイエローがピタリとハマるようになってきた。
「秘密だよ?」
「うん」
そんな風に交わすキスは、本当に甘酸っぱい気がしていた。ジリジリと射す夏の日差しは、校舎の影になって今だけは届かない。
そう、秘密のキスは秘密の場所で。
「遅かったね」
「そ?ジョンイニが早いんだよ」
「あれ?パンなの?」
「さっき早弁したから」
「そう」
僕らが隠れてキスをしていた間、ジョンインはすでに着替え終わっていて、さらに購買でパンを買う時間まであったらしい。なんだかくすぐったい気がするのは気のせいだろうか。
さぁ、三人で机を囲んで昼休みの始まり。
「あっついねぇ」
パタパタとノートで扇ぎながら、鞄からお弁当を取り出す。
「あ、タオ、今日部活?」
「うん、そうだよ」
「終わるの待っててもいい?」
「いいけど、なんで?」
「いや、何となく」
セフンが僕を待ってるなんて、珍しいこともあるもんだなぁ、なんて思いながら弁当を口にする。今日の唐揚げはいつもより大きくて美味しいから嬉しい。
僕らの世界はとても狭くて、いつだって閉鎖的だ。
セフンとキスをするのがいけないことだっていうのは分かる。だけど、それを咎める人は誰もいない。僕らの秘密は守られてるから。
「おまたせ~」
部活が終わって猛ダッシュで教室で待ってるセフンのところへと急いだ。
「おつかれー」
「で、なに?どうしたの?」
「え?」
「話でもあるんじゃないの?」
「別に。一緒に帰ろうと思っただけ」
「そう」
そっか!一緒に帰るために待ってたのか!なんてちょっと嬉しくなる。だってこんなことは本当に珍しくて。セフンは帰宅部だから一緒に帰れることなんて滅多にないし。
けれど、「どっか寄ってく?」と聞くと、「うん」とうつ向くセフンがちょっとだけ気になった。
「どうしたの?元気ないよね?」
「いや、そんなことないけど……」
ダメだよ、セフンは笑ってなくちゃなんだから。僕は幸せそうに笑うセフンの顔が好きなんだ。
そういえば今日宿題多くない!?とか、この前買ったゲームがさぁ、とか僕ばっかりが話してる中、「ねぇ、」とセフンが口を開いたのは、ショッピングモールへの道を歩いているとき。夕日がそろそろ沈みそうな頃。
「なに?」
「うん……タオはさ、その、どうして僕にキスするの?」
「どうしてって?」
「や、どうしてかなぁと思って」
だっておかしいじゃん、とセフンは言う。
「おかしいの?」
「おかしいよ」
「うーん……」
「もしかして、他の人ともする?」
「しないよー!!するわけないじゃん!!」
だってセフンとするのが好きなんだもん。
そう言うと、セフンはまたうつ向いて、「そう」と消えそうな声で呟いた。
あ。
パチパチって頭の中でレモンソーダが弾ける音がして。夕日が沈む間際、レモンイエローのセフンは道端の石ころを蹴って、ふわりと笑った。
僕は、なんだかとても嬉しくて、心臓の裏っかわがむず痒かった。
おわり