学パロシリーズ
ジョンインの場合
気づけば、その視線は酷く心地が良かった。
中庭からガラス越しに見えるその人の視線。その視線が自分に向いていることが、心地いい。本を読むうつ向いた横顔もとても綺麗で、どきりと高鳴った心臓はダンスで動いたせいだろうか、なんて意味のないことを考えた。
調べれば名前くらいなら簡単に分かりそうだった。でもそうはしなかったのは、すべてを自然の流れに任せたかったから。なんて少し格好付けすぎだろうか。
「ベッキョニヒョン!」
昼休み、購買付近で知った顔を見つけて、駆け寄って声をかけた。
「おー?ジョンイナじゃん!」
お前また背伸びたんじゃないの?なんて笑いながら頭を叩かれる。
「かもしれないですね。ヒョン達抜かしてからはよく分かんないんで」
「うわ!すげぇ嫌味!!」
ベッキョニヒョンは相変わらずケタケタと笑う。
「パンですか?」
「うん、母ちゃん寝坊して」
お前は?と言うので、「早弁しちゃって」と笑った。混みあう購買で揃って会計に並んで世間話をした。
「最近ウチ来ないですね」
「あー、色々忙しいんだよ」
「恋人出来たって聞いたけど?」
「うっせ!」
適当な話をしながら会計を済ませ自販機の前で「じゃあ」なんて告げようとするとそこには、あの人がいて……ぴたりと動きが止まる。
「あ……」
どうも、と頭を下げようとした瞬間、「ベッキョナ?」と声がかかる。
ベッキョニヒョンは、あはは、と苦笑を浮かべてる。
俺もその人も、なんでか酷く戸惑っているのが分かった。
「ヒョン、知り合い?」
「うん、同じクラス」
「てことは……」
「そ。ジョンデの友達でもある」
ベッキョニヒョンは、まるで俺がその人を知っていることを知ってるような口振りだった。
「ベッキョナ、どういうこと?」
「あーえーっと……、キムジョンイン。ジョンデの弟」
その一言に、その人は白目の大きな丸い目を盛大に見開いた。
「ベッキョナ、そんなこと一言も言ってなかったよね!?」
「いや、まぁ……、あはは!」
あー、怒ってる。
会話の流れがどういう意味だかは分からなかったけど、その人が怒ってるということだけは分かった気がする。
「でも愛想ないのは当たってただろ?」
多分それは俺のこと。
なに言ってんだ!?って驚いて見遣ると、ヒョンはいたずらな笑みを浮かべていた。
「ジョンイナ!じゃあな!」
ベッキョニヒョンは逃げるように走って消えた。逃げ足だけは昔から早い。
残された俺たちは、自然と視線が重なった。
「……ジョンデの弟だったんだ」
「えぇ、まぁ」
「変な感じ」
「ですね」
くすりと笑って「じゃあ、」とその人も行こうとしたので、「あの、」と慌てて声をかける。
「なに?」
「名前……」
「あぁ。言ってなかったっけ……」
「……はい」
「ドギョンス。君の兄ちゃんと同じクラスのドギョンス、です」
「あの、俺……」
慌てて自分の名前も言おうとすると、その人は「知ってる」と笑った。
あ……ハート型だ。
その唇は笑うとハート型になった。
「ベッキョナに聞いたから」
あの、ジョンデヒョンの幼馴染みが一枚噛んでるということは、とても厄介な気がした。
でも、いつもの放課後以外にも繋がりがあったのは、純粋に嬉しくて。
調べるも何もないじゃん、なんて可笑しくて笑った。
おわり
気づけば、その視線は酷く心地が良かった。
中庭からガラス越しに見えるその人の視線。その視線が自分に向いていることが、心地いい。本を読むうつ向いた横顔もとても綺麗で、どきりと高鳴った心臓はダンスで動いたせいだろうか、なんて意味のないことを考えた。
調べれば名前くらいなら簡単に分かりそうだった。でもそうはしなかったのは、すべてを自然の流れに任せたかったから。なんて少し格好付けすぎだろうか。
「ベッキョニヒョン!」
昼休み、購買付近で知った顔を見つけて、駆け寄って声をかけた。
「おー?ジョンイナじゃん!」
お前また背伸びたんじゃないの?なんて笑いながら頭を叩かれる。
「かもしれないですね。ヒョン達抜かしてからはよく分かんないんで」
「うわ!すげぇ嫌味!!」
ベッキョニヒョンは相変わらずケタケタと笑う。
「パンですか?」
「うん、母ちゃん寝坊して」
お前は?と言うので、「早弁しちゃって」と笑った。混みあう購買で揃って会計に並んで世間話をした。
「最近ウチ来ないですね」
「あー、色々忙しいんだよ」
「恋人出来たって聞いたけど?」
「うっせ!」
適当な話をしながら会計を済ませ自販機の前で「じゃあ」なんて告げようとするとそこには、あの人がいて……ぴたりと動きが止まる。
「あ……」
どうも、と頭を下げようとした瞬間、「ベッキョナ?」と声がかかる。
ベッキョニヒョンは、あはは、と苦笑を浮かべてる。
俺もその人も、なんでか酷く戸惑っているのが分かった。
「ヒョン、知り合い?」
「うん、同じクラス」
「てことは……」
「そ。ジョンデの友達でもある」
ベッキョニヒョンは、まるで俺がその人を知っていることを知ってるような口振りだった。
「ベッキョナ、どういうこと?」
「あーえーっと……、キムジョンイン。ジョンデの弟」
その一言に、その人は白目の大きな丸い目を盛大に見開いた。
「ベッキョナ、そんなこと一言も言ってなかったよね!?」
「いや、まぁ……、あはは!」
あー、怒ってる。
会話の流れがどういう意味だかは分からなかったけど、その人が怒ってるということだけは分かった気がする。
「でも愛想ないのは当たってただろ?」
多分それは俺のこと。
なに言ってんだ!?って驚いて見遣ると、ヒョンはいたずらな笑みを浮かべていた。
「ジョンイナ!じゃあな!」
ベッキョニヒョンは逃げるように走って消えた。逃げ足だけは昔から早い。
残された俺たちは、自然と視線が重なった。
「……ジョンデの弟だったんだ」
「えぇ、まぁ」
「変な感じ」
「ですね」
くすりと笑って「じゃあ、」とその人も行こうとしたので、「あの、」と慌てて声をかける。
「なに?」
「名前……」
「あぁ。言ってなかったっけ……」
「……はい」
「ドギョンス。君の兄ちゃんと同じクラスのドギョンス、です」
「あの、俺……」
慌てて自分の名前も言おうとすると、その人は「知ってる」と笑った。
あ……ハート型だ。
その唇は笑うとハート型になった。
「ベッキョナに聞いたから」
あの、ジョンデヒョンの幼馴染みが一枚噛んでるということは、とても厄介な気がした。
でも、いつもの放課後以外にも繋がりがあったのは、純粋に嬉しくて。
調べるも何もないじゃん、なんて可笑しくて笑った。
おわり