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学パロシリーズ

チャニョルの場合



君に出会って、一秒後に恋に落ちた。




「なぁ、なぁ!」


新学期、クラス替えした教室で、仲の良い奴らとはみんな離れちゃったなぁってがっかりして。あ、でもギョンスがいるじゃんとか前の方にちっこい頭見つけて。でも俺の新しい席は真ん中の方で。俺デカいから後ろの人見えるかなぁとか心配して。そしたらやっぱり後ろの奴から背中を叩かれて。やっぱりか、マジでごめん。なるべく屈むから、なんて言葉を用意して。そうして振り返ったら───


恋に落ちた。



「俺、ベッキョン!お前デカいな!名前何て言うの?」


瞬間、雷でも落ちたかのように電流が流れて。屈託なく笑って、そう言った彼から目が離せなかった。


「おいってば!聞いてんの?」
「……え?あ、ごめん!な、名前?名前だよな?」
「そうそう、名前!お前、大丈夫??」


大爆笑したいのを堪えながら言う姿がこれまた最高に可愛くて、また心臓を射抜かれた。


「あ、あぁ、チャニョル!パクチャニョル!よ、よろしくな!」
「おう!」


そう言って手を差し出すと、握手してブンブンと振り回された。


「あ!黒板見えなかったら言って!俺ノート貸すし!」
「いやー有り難いよチャニョル君!君のお陰でゆっくり寝れそうだ!」


俺の肩を叩く綺麗な手も、くくく、と目を細めて笑う笑顔も、すべてが俺の心を鷲掴んだ。



初めて好きだって言ったのはいつだったかな。もう、言い過ぎて覚えてない。全部笑って流されて。よくわからなくなってきた。


「ベッキョナ!好きだ!俺と付き合って!!」


俺がそう言えば、周りはまた始まったって笑いだして。ベッキョンも「はいはい」って面倒くさそうな仕草をして。本気なのに、なんて心の中ではいつも思ってるくせに、周りに合わせてギャグみたいに振る舞って。ホント俺、意気地無し。
ルハニヒョンにはもっと強引に行けっていつも言われてて、分かってるのに。とんだヘタレだ。


「ヒョン……、無理っす。俺、無理っすよ……どうせこのまま流され続けて、俺なんて一生相手にされないんだ……」
「は?お前バカなの?ねぇ、バカなの?パクチャニョルってバカだったの??」
「あーもー、バカバカ言わないでくださいよー」

「だってバカじゃん!」って笑われて。「僕みたいにもっと強引に行けばいいのに」って天使の微笑みを向けられて……


だから、ベッキョンからあんなふうに言ってもらえるなんて、夢にも思わなかったんだ。
そんなわけで、コーヒー牛乳は俺たちの愛のキューピッド。なんちゃって!

なのに、最近ベッキョンが分からなくなってきて。付き合うっていうのは大変なんだなぁなんて思ったり。


「ベクー……ほら、コーヒー牛乳」
「……」
「ダメ?」
「……飽きた」
「え?」
「だーかーらー!もう飽きた!」
「なんで?!俺らの愛のキューピッドじゃん!」


言うと、バカじゃないの、って。
あーもー俺、マジでハートブレイク……




「最近ベッキョンさんが何を考えているかわかりません……」


ルハニヒョンを捕まえてぐだぐだと愚痴をこぼせば「え?前までは分かってたの?」なんて目を真ん丸にして驚かれた。
なにそれ。いや、分かってるけどね。俺、その辺鈍いとこあるし。自覚してるけどさ。他人から言われると、ぐさりと刺さるもんじゃない?あー、やっぱり言う人間違えたかなぁ、なんて頭を抱える。
ミンソギヒョンにしとけばよかった……


「いや、分かってないですけど。前よりさらに、ってことです」
「ははは!分かってるってそんなこと」


ルハニヒョンは中学の頃からの先輩で、悪いことはだいたいこの人に教わったような気がする。って、そんな悪いことはしてないけど。


「けどまぁ、お前らもいっぱしに倦怠期かよ」
「倦怠期……?」
「ちがうの?」
「え、まさかー?」


倦怠期───互いに飽きて嫌になること


ルハニヒョンの言葉が気になってググってみれば、そんなことが書いてあった。

え、俺飽きてもないし、嫌にもなってないけど……ってことはもしかして……



「ベッキョナー!!!!!」


思わず駆け出して走りよれば、なんだよ煩いなぁって眉間に皺を寄せられた。
え、やっぱり、もしかして!?


「ベッキョナ!俺のこと飽きたの!?嫌になった!?俺、捨てられちゃうの!?」


詰め寄ると、は?と不思議そうな顔を向けられる。そんな顔も可愛いなぁ、ってそうじゃなくて。


「なに言ってんのチャニョラ」
「だって……」
「また誰に何言われたんだよ」
「えっと、その……ルハニヒョンに倦怠期だって……」


言うと、倦怠期ー?とすっとんきょうな声をあげて笑われた。

騒ぎを聞き付けたのか、「なになに、どうしたの?」と ジョンデが面白そうに寄ってきて。あーもーなんだか上手くいかない。


「俺ら倦怠期らしいよー」
「なにそれー!」


きゃはは、と笑いあってる二人を前に、俺はちっとも笑えなかった。


「だってベッキョナ最近冷たいし……」


もぞもぞと呟くと、ベッキョンは気まずそうに視線をずらす。
ほら、やっぱり……全然笑えないじゃん。

見兼ねてか、口を開いたのはジョンデだった。


「え、ベッキョナ聞かなかったの?」
「いや、だって……」
「え、なになに!何の話!?ジョンデなんか知ってんの??」
「うん、」


あの事でしょ?とジョンデがベッキョンに問えば、ベッキョンは更に視線をずらした。


「チャニョルこの間さぁ、一年の可愛い女子に告白されたでしょ」


うーん、あんまり覚えてないけど、多分?


「その現場さ、僕らたまたま見ちゃったんだよね」
「それで?」


だからなに?


「その子さ、返事は後でいいです、とか言ってたじゃん?だからベッキョナ気になっちゃって」


くすくすと笑いながら言うジョンデの話を、ベッキョンは耳を真っ赤にしてうつむきながら聞いていた。


「別にさぁ、そのまま聞けばいいじゃんねぇ?」


あー、思い出した。
確かそんな話あったかも……でも考える余地もないから、帰ろうとするその子を引き留めて断ったんだ。


全然可能性ないんですか?って聞くから、恋人がいるんだって答えた。

「えーっと、つまり……?」
「そういうこと!」
「やき、もち……?」


知らね、とそっぽを向くベッキョンに堪らずに抱きついて、「可愛いー!!!!大好き!俺ベッキョナだけだからね!!」なんて叫んで。嫌そうに身を捩るベッキョンをさらにきつく抱き締めた。


ヤキモチなんて焼いてくれるベッキョンが最高に可愛いと思った。
それからルハニヒョンの話は、やっぱり話し半分に聞くことにしようと誓った。



おわり
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