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学パロシリーズ

ジョンデの場合



中庭に行かなくなって、二週間が過ぎた。明日こそは明日こそは、なんて思ってるうちに過ぎてしまうんだから、二週間なんてあっという間だと思う。やることがない昼休み、ギョンスに付き合って図書室で過ごす日々。寂しいなとは思うけど、のこのこと聴きに行けるほど肝は座ってない。要するに小心者だ。


「行かなくていいの?」


ギョンスに聞かれて、苦笑を浮かべる。


「ジョンデはさ、好きなの?その人のこと」
「え?」
「や、別に答えなくてもいいんだけどさ」


ベッキョンやチャニョルのように深く追求しない彼は、今の僕にはとても有り難かった。
何故なら、自分でも分からないから。

僕は立ち上がって普段はあまり開けない図書室の窓を開けた。
気持ちよい風が抜けて、カーテンの裾を揺らす。


「あ……」


その風にのってわずかに聞こえてきたピアノの音色。
そうか、ここからでも聴こえるんだ。
久しぶりに聴いた音色は、酷く寂しげな音だった。



「もしかして、これ?」


ギョンスが近づいてきて微笑む。
振り向いて笑顔を返したいけど、心臓がきゅっとして、上手く返せない。


「優しい音だね」

「うん……」




そうやって一ヶ月が過ぎて、聴こえてきてたピアノの音色はいつからか聞こえない日の方が多くなっていた。
はじめは窓を閉めてるのかな、とも思ったけど、たまたま通った職員室へ行く途中の廊下。中庭を挟んで音楽室の向かいの一つ上の階。その廊下の窓から見えた音楽室の窓際には、あの人が窓を開けてもたれていた。


最初は何をやってるのか分からなかったけど、次の日もその次の日も、斜め上から見下ろしたそこにはあの人が座っていた。
だから僕もそこからあの人を眺める日々。
ピアノを弾く気配は全然なくて。もう弾かないのかなぁ、なんて切なくなる。どうやったらまた弾いてくれるだろう、そればっかり考える日々で。

あの人が弾く楽しそうなピアノの音色が好きだから。



授業中も、その事で頭が一杯だった。


「どうしたの?」
「あ、うん」


ギョンスに聞かれて話すと、「そのまま伝えたら?」って。


「え?ダメだよそんなの!無理無理!」
「でも、その人……」


待ってるんじゃないかなぁジョンデのこと。ってギョンスは言う。


「え……?」


僕を?



そんな言葉で嬉しくなるなんて、僕はなんて単純なんだ。ほんとかなぁ、とか思いながら、僕はその日も向かいの廊下からその人を眺めた。



次の日、だから僕は意を決して昼休みが始まるや否や弁当も食べずに中庭へとダッシュしたんだ。ルーズリーフを一枚掴んで。




窓に貼り付けたルーズリーフには一言。



──もう弾くのやめたんですか?──




もしも、ギョンスが言うようにあの人が僕を待っていてくれてるというなら、この言葉だけできっと伝わるはず。


僕はまたいつもの廊下から音楽室を眺めた。







やがてあの人が現れて、


僕の紙に気がついて。


聞こえたピアノの音に、ガッツポーズしたのは内緒だ。






終わり
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