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学パロシリーズ

ジュンミョンの場合




「なに?」


言って見上げた彼の向こうには青い空が広がっていた。


キスされた、と分かったときには頭が真っ白になって。今しがた起きたことが、現実なのか、はたまた夢の中なのかすら区別できないくらい。時間が止まってしまったようだった。


「……ぇ」

「……あ、悪い」


不器用に呟くその人には様々な噂が付きまとっている。
歳上の彼女がいるだとか、組事務所に出入りしているだとか、ヨーロッパの血が混じっているだとか。
嘘か本当か分からないそれらの噂は、彼をより近寄りがたくしてることだけは確かで。その噂すべてを信じてるわけではないけど、自分とは対極にいる人だということは分かっていた。


そんな彼にキスされた。


彼からはふわりと煙草の残り香がして。それは自分の知らないもので。もちろんキスなんて初めてで。心臓が急加速している。


「委員長?」

「……え……あ、はい」


低い声で呼ばれて、慌てて顔をあげると、彼はクスクスと笑っている。

彼が、そんなに悪い人ではないのかもしれないと思ったのは、その目が、握られた手が、優しかったから。





「ねぇ、レイや」
「なぁに?」
「その……レイってさ、クリスと仲良かったよね?」
「うーん。仲いいって程でもないけど」
「そっか……」
「なんで?」
「いや、うん。なんとなく」


クラスメイトのレイに相談しようかと思ったけど、なんだかやっぱり気が引ける。
口ごもっていると、レイはくすりと笑った。


「最近、追っかけてるんだって?」
「え……」
「クリスが言ってたよ。委員長に追っかけ回されてるって」
「お、追っかけ回してなんか!」
「委員長も大変だね」


分かっているのか、いないのか。レイは楽しそうに笑っていた。



あの日、キスされて以来、妙に気まずいのはこちらだけみたいで、彼の態度は然程変わらない。というより元からあまり興味はなさそうだった。それに気づいて、気にしてるのは自分だけなのかと考えて、少しだけ悲しくなった。
どうせたいした意味はないのだろう。


それでも、彼が授業をサボろうとすれば、僕は追いかけなくちゃいけないわけで。


「あ、あの……」


教室を出ていく彼に声をかける。


「なに?」
「授業……出るよね?」


そう尋ねると、彼はふっ、と笑った。心臓が煩く跳ねる。


何も答えず歩き出す彼を、また追いかける。いつぞやと同じ屋上。ポケットから取り出される煙草。


「だ、ダメだよ!」


慌てて近づいて言うと、分かったよというジェスチャーでポケットへと戻したので、胸を撫で下ろした。
だけど、


「じゃあ、代わりに……」


そう言ってまたキスされた。
ちゅっと小さなリップ音を響かせて、青空をバックに笑う。


「な、なに……?」

「さぁ?」


誤魔化されて遊ばれてる気がするのに怒れないのは、少しだけ嬉しいからだろうか。

そんな自分が恥ずかしくて、うつ向いた。



終わり
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