学パロシリーズ
ジョンデの場合
それは偶然だった。
昼休み、天気がいいから中庭で読みかけの本でも読もうかななんて思って行ってみたら、風にのって聴こえてきたのは綺麗なピアノの音で。秋の陽気にピッタリで、気分も上がって。誘われるまま、その音の聴こえる窓と下へと座った。
次の日も行ってみたらやっぱりまたピアノの音が聴こえて。気づけばそれは日課になっていた。
「ジョンデー!またいつものとこ?」
「うん」
ベッキョンたちと一緒にお弁当を食べると、僕は急いで片付ける。
「俺も行こうかなぁ」
「だめー」
カップルは勝手にいちゃついててください、なんて言うとベッキョンはたちまち頬を赤らめた。
友達が幸せなのは僕も嬉しい。
「でもそんなに良いんだったら僕も聴いてみたいな」
ギョンスが呟いたけど「ごめんね、また今度」そう言うと、彼は笑顔で頷いてくれた。
もう少しだけ、僕一人の場所にしておきたいんだ。
急いで中庭に行くと、その人はもうピアノを弾いていた。顔もちゃんとは見たことないし、もちろん名前だって知らないけど、僕はその人の弾くピアノが好きだった。
今日も読みかけの本を開いて、腰掛ける。
だけど。
三頁ほど進んだところで、ピアノの音が止まった。
『……あ、やっぱりここか』
話し声が聞こえて、そっと覗き込んでみると、すごく格好いい上級生がいて。格好いいけど、ちょっと怖そうで。その人と親しげにしゃべっていて。笑顔で話すその人を見て、ちくんと胸が痛んだ。その人がなんだか急に遠い人になっちゃった気分。
盗み聞きはいけないよね、とか理由をつけて、僕はその場を後にした。教室に帰るとベッキョンが不思議そうな顔で「今日は早いな」って。
「うん、ちょっとね」
言い様のないもやもや。楽しそうに会話するあの人。自分では到底敵わないようなあの上級生。何度も頭の中を埋め尽くした。
次の日は雨だった。
雨の日は行けないからギョンスと一緒に図書室に行く。図書室からは中庭が見えて、今日もあの人は弾いてるのかなぁなんて。
ふと隣を見るとギョンスも中庭を見ていた。それは何だか辛そうな横顔。
「誰かいるの?」
「あ、いや…」
彼も誰かに想いを馳せているのだろうか。
雨は次の日も続いて、その次の日、ようやく晴れ間が戻ってきた。
嬉しい反面複雑なのは、またこの前の上級生が来たらどうしようという思いがあるから。だけど、三日もあの人のピアノの音色を聴けないのは無性に寂しくて。結局僕の足は中庭へと向かっていた。
いつものように窓の下に座って本を読んでいると、一曲目が終わって二曲目に行くとこ。いつもなら少し間が空いたあとすぐに弾き始めるのに、今日はなかなか始まらない。おかしいな、なんて考えていると、急に頭上から声が降ってきた。
「ねぇ、リクエストとかない?」
驚いて振り向くと、優しげな顔のその人がいて。だけど一体何が起こったのかわからず、笑い掛けられた笑顔に「すいません!」と謝ることしかできず。僕は勢いよくその場を後にした。
「どうした!?」
勢いよく教室に駆け込む僕に目を丸くしてベッキョンが驚いている。
「ば、バレてた……」
「なにが?」
「……ピアノ」
「ピアノ?」
「うん……聞いてたの……バレてた」
話がさっぱりわからないベッキョンとチャニョルに、呆然としてる頭で何とか説明する。ようやく伝わった頃、二人は盛大に笑っていた。
「それでそんなに驚いて帰ってきたんだ!」
「だ、だって!」
知られてるなんて思いもしなかったから。毎日毎日聴きに行ってたのがバレてたなんて、恥ずかしいにも程がある。
あーどうしよ……
終わり
それは偶然だった。
昼休み、天気がいいから中庭で読みかけの本でも読もうかななんて思って行ってみたら、風にのって聴こえてきたのは綺麗なピアノの音で。秋の陽気にピッタリで、気分も上がって。誘われるまま、その音の聴こえる窓と下へと座った。
次の日も行ってみたらやっぱりまたピアノの音が聴こえて。気づけばそれは日課になっていた。
「ジョンデー!またいつものとこ?」
「うん」
ベッキョンたちと一緒にお弁当を食べると、僕は急いで片付ける。
「俺も行こうかなぁ」
「だめー」
カップルは勝手にいちゃついててください、なんて言うとベッキョンはたちまち頬を赤らめた。
友達が幸せなのは僕も嬉しい。
「でもそんなに良いんだったら僕も聴いてみたいな」
ギョンスが呟いたけど「ごめんね、また今度」そう言うと、彼は笑顔で頷いてくれた。
もう少しだけ、僕一人の場所にしておきたいんだ。
急いで中庭に行くと、その人はもうピアノを弾いていた。顔もちゃんとは見たことないし、もちろん名前だって知らないけど、僕はその人の弾くピアノが好きだった。
今日も読みかけの本を開いて、腰掛ける。
だけど。
三頁ほど進んだところで、ピアノの音が止まった。
『……あ、やっぱりここか』
話し声が聞こえて、そっと覗き込んでみると、すごく格好いい上級生がいて。格好いいけど、ちょっと怖そうで。その人と親しげにしゃべっていて。笑顔で話すその人を見て、ちくんと胸が痛んだ。その人がなんだか急に遠い人になっちゃった気分。
盗み聞きはいけないよね、とか理由をつけて、僕はその場を後にした。教室に帰るとベッキョンが不思議そうな顔で「今日は早いな」って。
「うん、ちょっとね」
言い様のないもやもや。楽しそうに会話するあの人。自分では到底敵わないようなあの上級生。何度も頭の中を埋め尽くした。
次の日は雨だった。
雨の日は行けないからギョンスと一緒に図書室に行く。図書室からは中庭が見えて、今日もあの人は弾いてるのかなぁなんて。
ふと隣を見るとギョンスも中庭を見ていた。それは何だか辛そうな横顔。
「誰かいるの?」
「あ、いや…」
彼も誰かに想いを馳せているのだろうか。
雨は次の日も続いて、その次の日、ようやく晴れ間が戻ってきた。
嬉しい反面複雑なのは、またこの前の上級生が来たらどうしようという思いがあるから。だけど、三日もあの人のピアノの音色を聴けないのは無性に寂しくて。結局僕の足は中庭へと向かっていた。
いつものように窓の下に座って本を読んでいると、一曲目が終わって二曲目に行くとこ。いつもなら少し間が空いたあとすぐに弾き始めるのに、今日はなかなか始まらない。おかしいな、なんて考えていると、急に頭上から声が降ってきた。
「ねぇ、リクエストとかない?」
驚いて振り向くと、優しげな顔のその人がいて。だけど一体何が起こったのかわからず、笑い掛けられた笑顔に「すいません!」と謝ることしかできず。僕は勢いよくその場を後にした。
「どうした!?」
勢いよく教室に駆け込む僕に目を丸くしてベッキョンが驚いている。
「ば、バレてた……」
「なにが?」
「……ピアノ」
「ピアノ?」
「うん……聞いてたの……バレてた」
話がさっぱりわからないベッキョンとチャニョルに、呆然としてる頭で何とか説明する。ようやく伝わった頃、二人は盛大に笑っていた。
「それでそんなに驚いて帰ってきたんだ!」
「だ、だって!」
知られてるなんて思いもしなかったから。毎日毎日聴きに行ってたのがバレてたなんて、恥ずかしいにも程がある。
あーどうしよ……
終わり