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学パロシリーズ

セフンの場合



「セフナー聞いてるー?」

この友人は非常に面倒くさい人である。

「うん、聞いてる聞いてる」

晴れて入学した高校で同じクラスになった友人、タオという男。
鋭い目付きのわりに酷く人懐っこい。知り合ったばっかりだというのに、すでにこの有り様だ。

「えー絶対聞いてないよね」
「聞いてるって。部活の話でしょ?」

手元の携帯から視線を上げて答えれば、膨れっ面をしていた。

「うん。ジョンイニはもう決めたって」
「ふーん。何部?」
「ダンス部。昔からダンス習ってたんだって」
「へー」

自分の話をされてるっていうのに、ジョンインは隣でうつ伏せて眠りこけてる。

「セフナは?決めた?」
「いや、僕は帰宅部でいいよ。面倒くさいし」
「えーなんかやろうよ」
「いいって。そういうタオは?」
「ボク?ボクは武術部!」
「武術?」
「うん!」

すごいでしょ!と胸を張る。
小さい頃から習ってて、これでも結構な腕前なんだと言っていた。その顔で武術なんかやったらそれこそ誰も近づいて来ないんじゃないかと思うけど、それ以上に人懐っこい性格だからなんとかなってきたんだろう、なんて分析してみたり。
なんせこの、寝てるだけの男ジョンインすらも友達になっちゃうくらいだから。

僕も他人と仲良くなるのはあまり得意な方ではないんだけど、彼みたいな人はきっと例外だ。いつものように適当に流しながら付き合っていたはずなのに、気づいたときには懐かれていたのだ。


「おかえりー」

何故か美化委員に選ばれたので、放課後中庭の水やりを終えて教室に戻ると、タオが待っていた。

「あれ?部活は?」
「休みー」
「で?」
「セフナのこと待ってた!」
「なんで?」
「一緒に帰ろうと思って」

えへへと笑う。おかしな奴だ。
何でまた、とは思ったけど一緒に帰るのもたまにはいいか、なんて少し嬉しくなって。けど、にやけそうになるのを堪えて、ジャージから制服に着替えた。
そんな僕を見ながらタオは頬杖をついている。


「ねぇ、セフナー」
「なに?」
「キスってしたことある?」
「は?」

思わず動きが止まった。

「だからー、キス。したことある?」
「な、ないよ!そんなの!」
「だよねー。ボクもー」

言ってふにゃって笑う。

「どんなんだろうねー」
「……うん」

そんなこと想像したことがないと言うほど純粋なわけはなくて。男子なら誰だって考えたことはあるだろう。初キス。それをまた思い浮かべてみて、頬が熱くなるのがわかった。

「ねぇ、してみよっか?」
「は?」
「してみようよー」
「なに言ってんの?」
「いいじゃん、減るもんじゃないしー」
「ダメに決まってるじゃん!」

最後まで抵抗したのに、最後の最後で抗えなかったのは、きっと好奇心が勝ってしまったから。あぁ、情けない。

これがすべての始まり。
僕とタオの始まり。




終わり
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