学パロシリーズ
ミンソクの場合
「なに、お前らやっとくっついたの?」
「はい!」
「バカ!言うなよ!」
「えー!いいじゃん!俺なんて校内放送で叫びたいくらいなのに」
やれやれ。声をかけたのは失敗だったか?
廊下ですれ違ったのは日頃親しい後輩。ルハンが「あの二人はいつになったらくっつくんだろう」って勝手にやきもきしてたみたいで「ほっとけばそのうちくっつくんじゃない?」なんて呑気に構えてたんだけど、くっついたらくっついたで面倒くさいのか、なんてやっぱり呆れて声もでない。
けどまぁ、俺も付き合い始めた頃はそうだったっけ。
あれは忘れもしない二年前。
「はい、これミンソクの分ね」
「あ、サンキュー」
律儀に自分のカメラに映ってた学祭の時の写真を焼き増ししてくれたのはクラスメイトのレイだった。
「綺麗に映ってるでしょ?」
「あぁ、そうだな」
一枚ずつ目を通す度に、何日か前の楽しさが蘇る。これはどうだったとか、あれは良かっただとか。話に花を咲かせながら捲っていくと、一枚の写真で目が止まった。
「なぁ、これって……」
背景の方に写ってる男を指差して尋ねる。
「ん?どれ?……あぁ、ルハン君」
「ルハン?」
「うん。1組のルハン君だよ。知らないの?有名だよ?」
「有名?」
「うん。ほら……」
そう言って指差された廊下の方を見ると、ちょうど通りかかる派手な集団がいて。その輪の中に、写真で見たルハンがいた。
瞬間、視線が重なって。
心臓が小さく跳ねた。
酷く綺麗な目をした男だ。
それが最初に思ったこと。あんなイケメンもいるんだなって。
それからというもの、知ると何となく目につくようになった。昇降口で。集会の出入りで。移動教室の廊下で。
目が合って、離せなくて。
彼の周りにはいつも人だかりができていた。それはもう、今まで気付かなかったのが不思議なくらい。楽しそうに笑ってる姿を見れば自分まで楽しくなって、眠そうに目を擦る姿を見れば自分まで眠くなるような気がした。
「ねぇ、いつも僕のこと見てるよね?」
そうやって初めて話し掛けられたのは、中庭の一本桜の木の下だった。もう花なんてとうに散ってて、緑の葉が夏の太陽に照らされて青々と揺れていた。
「え……?」
「知ってるよ。だって僕も見てるもん」
あ、今日もキラキラしてる。
重なった視線は、やっぱり離せない。
「ねぇ、知ってる?」
「……」
「目線っていうのはね、どちらか片方が見てるだけじゃ重ならないんだ。お互いが見てるから重なるんだよ」
そう言って、目の前の男は綺麗に微笑んだ。
「だからこれは運命だと思うんだ」
「……運命?」
「うん。好きになる運命……」
意味のわからない理屈を並べられて。その綺麗な顔が近づいて。
唇が触れていた。
「え……」
恥ずかしそうに俯いて笑う姿に、心臓が大きく高鳴った。
今日初めて言葉を交わしたっていうのに。そんなの関係なく強く引き合っていたのは確かで。
「僕たち今日から恋人ね!」なんて手を繋がれて可愛く微笑まれたら、嫌だとなんか言えるはずもなくて。
俺は繋がれたその手を小さく握り返していた。
終わり
「なに、お前らやっとくっついたの?」
「はい!」
「バカ!言うなよ!」
「えー!いいじゃん!俺なんて校内放送で叫びたいくらいなのに」
やれやれ。声をかけたのは失敗だったか?
廊下ですれ違ったのは日頃親しい後輩。ルハンが「あの二人はいつになったらくっつくんだろう」って勝手にやきもきしてたみたいで「ほっとけばそのうちくっつくんじゃない?」なんて呑気に構えてたんだけど、くっついたらくっついたで面倒くさいのか、なんてやっぱり呆れて声もでない。
けどまぁ、俺も付き合い始めた頃はそうだったっけ。
あれは忘れもしない二年前。
「はい、これミンソクの分ね」
「あ、サンキュー」
律儀に自分のカメラに映ってた学祭の時の写真を焼き増ししてくれたのはクラスメイトのレイだった。
「綺麗に映ってるでしょ?」
「あぁ、そうだな」
一枚ずつ目を通す度に、何日か前の楽しさが蘇る。これはどうだったとか、あれは良かっただとか。話に花を咲かせながら捲っていくと、一枚の写真で目が止まった。
「なぁ、これって……」
背景の方に写ってる男を指差して尋ねる。
「ん?どれ?……あぁ、ルハン君」
「ルハン?」
「うん。1組のルハン君だよ。知らないの?有名だよ?」
「有名?」
「うん。ほら……」
そう言って指差された廊下の方を見ると、ちょうど通りかかる派手な集団がいて。その輪の中に、写真で見たルハンがいた。
瞬間、視線が重なって。
心臓が小さく跳ねた。
酷く綺麗な目をした男だ。
それが最初に思ったこと。あんなイケメンもいるんだなって。
それからというもの、知ると何となく目につくようになった。昇降口で。集会の出入りで。移動教室の廊下で。
目が合って、離せなくて。
彼の周りにはいつも人だかりができていた。それはもう、今まで気付かなかったのが不思議なくらい。楽しそうに笑ってる姿を見れば自分まで楽しくなって、眠そうに目を擦る姿を見れば自分まで眠くなるような気がした。
「ねぇ、いつも僕のこと見てるよね?」
そうやって初めて話し掛けられたのは、中庭の一本桜の木の下だった。もう花なんてとうに散ってて、緑の葉が夏の太陽に照らされて青々と揺れていた。
「え……?」
「知ってるよ。だって僕も見てるもん」
あ、今日もキラキラしてる。
重なった視線は、やっぱり離せない。
「ねぇ、知ってる?」
「……」
「目線っていうのはね、どちらか片方が見てるだけじゃ重ならないんだ。お互いが見てるから重なるんだよ」
そう言って、目の前の男は綺麗に微笑んだ。
「だからこれは運命だと思うんだ」
「……運命?」
「うん。好きになる運命……」
意味のわからない理屈を並べられて。その綺麗な顔が近づいて。
唇が触れていた。
「え……」
恥ずかしそうに俯いて笑う姿に、心臓が大きく高鳴った。
今日初めて言葉を交わしたっていうのに。そんなの関係なく強く引き合っていたのは確かで。
「僕たち今日から恋人ね!」なんて手を繋がれて可愛く微笑まれたら、嫌だとなんか言えるはずもなくて。
俺は繋がれたその手を小さく握り返していた。
終わり