学パロシリーズ
ベッキョンの場合
雷に打たれたみたいだった、ってあいつは言った。初めて会ったとき、そんな衝撃だったって。そんなの、たかが俺なんかで、なんでそんなふうになるんだよって不思議だったんだ。
男が男に惚れるのってのは、そんなに簡単なのか?
「ねぇ、ベクー。付き合ってよー」
「やだよ。なに言ってんのお前」
そうやっていつもかわして。逃げて。バカじゃないの?って笑った。正面から向き合うなんて馬鹿げてる。だってお前の周りにはいつだってたくさんの人がいるじゃん。それこそ可愛い女の子だって。俺だって友達は多いけど、お前の笑顔は眩しすぎる。
「なぁ、本気だよ?」
「だからなんでそうなるんだよ」
「そんなの何度も言ってるじゃん。ベクに会った瞬間に、こう、雷が落ちたみたいに…」
身振り手振り、チャニョルの口から漏れるのは恥ずかしい言葉ばかり。
「馬鹿じゃねぇの……」
夕暮れの帰り道、呟いた言葉は風にのって消えていった。
「お前が煩いからこうなったんじゃん!」
「いいじゃん!お陰で楽しい二人の時間になったんだから」
「ばーか!」
二人きりの教室がこんなに気まずいものだったなんて知らなかった。
廊下で騒いでたらいつものように担任に凸凹コンビなんてひとまとめにされて、ちゃっかりプリントの仕分けなんか押し付けられた。
「ベッキョナ……、何度も言ってるけどさ、ホントに。好きだから。お前のこと」
なんでもないふうに、プリントをトントンって重ねて整えて。そうして呟かれた。低い声。
そんなの知ってるし。何度も言わなくたって知ってるっつの。
「ねぇ、チャニョラ……」
友達じゃダメなの?
「今まで通りのこの関係じゃダメ?付き合うとか、よくわかんない……」
だって、始めたら終わっちゃうじゃん。俺、お前との関係が終わるのなんて嫌だよ。ずっといたいじゃん。バカみたいに笑って。いつまでもずっと。
「だって友達じゃ、ベクのこと独り占めできないじゃん?」
「なんだよそれ……」
「俺は、ベクと友達もいいけど、恋人になりたいんだよ。何よりも一番大事な存在……」
って重すぎ?って言ってチャニョルは恥ずかしそうに笑った。
一番大事な存在だなんて。そんなのとっくの昔にそうなってるよ馬鹿。
「なぁチャニョラ。お前ってホントに何て言うか……アレだな!」
「何?!」
「なんでもない!!」
「なんだよ!言えよ!」
「言わない!……だからその、代わりにお前が言え!いつもの!」
「え?なに?」
「ほら!返事してやっから!いつもの!」
「……え!?」
「早く!」
ただでさえ飛び出そうな目ん玉をさらにひん剥いてテンパってるチャニョルに向かって、カウントを始める。頼むから早く言ってくれ!顔面に血が昇るだろうが!なんて考えながら10…9…って数えたところでガタンと机が揺れてチャニョルが抱きついてきた。
「ベッキョナ!好きだ!付き合ってください!」
震えてんじゃねーよ。
「……コーヒー牛乳買ってきてくれたらいーよ」
「え?は?」
「ほら、早く!」
締め切りますよーって言えば、チャニョルは慌てて教室から出ていった。
一目惚れなんてそんなの、俺だってしてるわボケ。
「ベッキョナー!!!買ってきたぞー!!!」って息を切らして帰ってきたチャニョルの腕の中には、山ほどのコーヒー牛乳があった。
「ばか!そんなに飲めるか!」
「え?あ、そっか!」
えへへって笑う顔が酷くだらしなくて。
くそ!バカすぎて愛しいわ!
終わり
雷に打たれたみたいだった、ってあいつは言った。初めて会ったとき、そんな衝撃だったって。そんなの、たかが俺なんかで、なんでそんなふうになるんだよって不思議だったんだ。
男が男に惚れるのってのは、そんなに簡単なのか?
「ねぇ、ベクー。付き合ってよー」
「やだよ。なに言ってんのお前」
そうやっていつもかわして。逃げて。バカじゃないの?って笑った。正面から向き合うなんて馬鹿げてる。だってお前の周りにはいつだってたくさんの人がいるじゃん。それこそ可愛い女の子だって。俺だって友達は多いけど、お前の笑顔は眩しすぎる。
「なぁ、本気だよ?」
「だからなんでそうなるんだよ」
「そんなの何度も言ってるじゃん。ベクに会った瞬間に、こう、雷が落ちたみたいに…」
身振り手振り、チャニョルの口から漏れるのは恥ずかしい言葉ばかり。
「馬鹿じゃねぇの……」
夕暮れの帰り道、呟いた言葉は風にのって消えていった。
「お前が煩いからこうなったんじゃん!」
「いいじゃん!お陰で楽しい二人の時間になったんだから」
「ばーか!」
二人きりの教室がこんなに気まずいものだったなんて知らなかった。
廊下で騒いでたらいつものように担任に凸凹コンビなんてひとまとめにされて、ちゃっかりプリントの仕分けなんか押し付けられた。
「ベッキョナ……、何度も言ってるけどさ、ホントに。好きだから。お前のこと」
なんでもないふうに、プリントをトントンって重ねて整えて。そうして呟かれた。低い声。
そんなの知ってるし。何度も言わなくたって知ってるっつの。
「ねぇ、チャニョラ……」
友達じゃダメなの?
「今まで通りのこの関係じゃダメ?付き合うとか、よくわかんない……」
だって、始めたら終わっちゃうじゃん。俺、お前との関係が終わるのなんて嫌だよ。ずっといたいじゃん。バカみたいに笑って。いつまでもずっと。
「だって友達じゃ、ベクのこと独り占めできないじゃん?」
「なんだよそれ……」
「俺は、ベクと友達もいいけど、恋人になりたいんだよ。何よりも一番大事な存在……」
って重すぎ?って言ってチャニョルは恥ずかしそうに笑った。
一番大事な存在だなんて。そんなのとっくの昔にそうなってるよ馬鹿。
「なぁチャニョラ。お前ってホントに何て言うか……アレだな!」
「何?!」
「なんでもない!!」
「なんだよ!言えよ!」
「言わない!……だからその、代わりにお前が言え!いつもの!」
「え?なに?」
「ほら!返事してやっから!いつもの!」
「……え!?」
「早く!」
ただでさえ飛び出そうな目ん玉をさらにひん剥いてテンパってるチャニョルに向かって、カウントを始める。頼むから早く言ってくれ!顔面に血が昇るだろうが!なんて考えながら10…9…って数えたところでガタンと机が揺れてチャニョルが抱きついてきた。
「ベッキョナ!好きだ!付き合ってください!」
震えてんじゃねーよ。
「……コーヒー牛乳買ってきてくれたらいーよ」
「え?は?」
「ほら、早く!」
締め切りますよーって言えば、チャニョルは慌てて教室から出ていった。
一目惚れなんてそんなの、俺だってしてるわボケ。
「ベッキョナー!!!買ってきたぞー!!!」って息を切らして帰ってきたチャニョルの腕の中には、山ほどのコーヒー牛乳があった。
「ばか!そんなに飲めるか!」
「え?あ、そっか!」
えへへって笑う顔が酷くだらしなくて。
くそ!バカすぎて愛しいわ!
終わり