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ルハンとシウミン

140702 僕と君のライン


移動の空き時間、ベンチに座るミンソクの前にぬーっと顔を近づけてみた。

「わぁ!なんだよー」

驚いたのか咄嗟に両手で僕の肩を押しやって後ろへと仰け反る。

「はは!いつもやってるじゃんライブで」

にこやかに返すと、ミンソクは眉間にシワを寄せて訝しげな顔を寄越した。

僕らは吐息がかかりそうなほどの距離で何度も顔をあわせた。大勢のお客さんの前で。ほんの一時の演出。けれど、その度に心はむず痒くなるような気がして、目線は知らずにその薄くて可愛らしい唇に行っていた。

触れてみたい、という願望は日増しに強くなるばかりだ。


僕は今、映画の撮影でグループとは離れて行動している。だからだろうか。久しぶりに会ったミンソクといつもみたいにふざけ合おうとしても、なんだか妙にぎこちない。距離感が掴めないんだ。恋と友情。ギリギリのラインが思い出せない。必死に守ってきたそのラインが。


「ねぇ、僕のいなかった間どう?色々大変だったみたいだけど」

色々、とはまぁ色々だ。

「そんなの、お前の撮影に比べりゃ大したことないよ」

ルハニは撮影に集中しろ、だなんて嬉しいことを言ってくれたりする。

「ふふ、ありがと」
「そんで早く帰ってこい」

ぼそりと呟かれたそれに、僕と君のラインがまたぐにゃりと歪む。心臓の裏っかわを擽られたような気分だ。にやにやと笑うと呆れたような顔を返された。


僕がミンソクとこんなに離れて暮らすのは初めてのことで。だけど映画の撮影という大役も初めてのことだったから、そんなことには頭がまわらなかったんだけど。いざこうして久し振りの対面を果たすと、やっぱり僕は重大なミンソク不足に陥っていたんだと気づく。

触れたい。触れてしまいたい。唇も何もかも。僕のカラダすべてがミンソクを欲していた。お腹の底のあたりからむくむくと湧き出るような厄介な衝動を必死に堪える。

そんなこととは知らずにミンソクは、いつものように僕の背中を撫でてくれて。その小さくて柔らかな手が僕の背中を撫でると僕が安心することをミンソクは知っているんだ。本当に、本当に狡いと思う。
僕が君を好きにならないわけなんて、ないじゃないか。

あぁ、もうやだなぁ。

ひとりごちた。



「撮影終わったら、またカフェでも行こう」

僕がちょうど考えていたことをミンソクが口にする。
以心伝心、なんて喜んだりして。

「うん、そうだね」

その時はご褒美ちょうだい。


そのご褒美はお揃いのスニーカーか、
それともその触れたくて仕方ない君の唇か。

僕らの曖昧なラインがまたぐにゃりと歪む。


早く、

早く僕に堕ちて。





おわり
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