犬の吾郎は飼い慣らせない。
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「なぁ!お嬢ちゃん見てくれや!やっと人間の」
私は握ったままでいたドアノブを引っ張り、部屋のドアを閉めた。え、誰、あの人、私ちゃんと家の鍵閉めたよね?不法侵入者?これ警察に電話するべきだよね?それとも疲れすぎて幻覚見ちゃってる?冷汗をかきながら頭の中でぐるぐると悩む。
「なんでドア閉めるん?」
「ぎゃあああっ!!」
「うおっ!?」
急にドアが開き、先程見たおじさんが目の前にいた。私は突然のことに驚き、色気のない声をあげてしまった。おじさんは逆に私の声に驚いてしまったようだ。よく見るとおじさんの頭に犬の耳のようなものが生えている。どことなく動いている気もするが、よくできた作り物だと感心しながらおじさんの頭を凝視する。って!感心している場合じゃない!
「あ、あの…」
「お?なんや?」
「ど、どど、どちら様、でしょうか…?」
自分でもビビるくらいどもってしまった。それに加えて目もあちこちに泳いでいるため明らかに動揺していることが相手にバレただろう。
「どちら様て…お嬢ちゃん、ワシに素敵な名前つけてくれたやん!」
「え?…え?…どういうことですか?」
「まだわからんのか?吾郎やって、ご・ろ・う!」
何を言っているのだろうかこの人は。私の知っている吾郎はドーベルマンの犬だ。だが、目の前のおじさんが嘘をついているようには見えない。そんな漫画のようなことが有り得るのだろうか。
「ほ、ほんとに…吾郎…?」
「だぁからさっきからそう言うてるやろ!」
「え、え…だって吾郎は犬であって…」
「お、せや!やっと人間の姿になれたんや!こうしてお嬢ちゃんとお喋りもできるし…」
吾郎と名乗るおじさんはニタニタと悪い笑顔を浮かべながらジリジリと近づいてきた。それにつられて後ろへ後ずさる。
「こんなことだってできるでぇ?」
大きく手を広げたと思いきや腕の中へ抱き締められた。突然のことに体が固まる。
「はぁ…お嬢ちゃん温くてたまらんわぁ…」
「…い」
「い?」
「いやぁぁああ!!」
「ぐはぁっ!」
私は彼の顔に目掛けて思いっきり平手を食らわせた。その衝撃で吾郎らしき人は勢いよく床に叩きつけられる。
「け、警察呼ばなきゃ…」
「ヒヒ…お嬢ちゃん…見かけによらずなかなかごっついもん持っとるやないか…」
「ひえっ」
「あー、そない怖がるなや…よしわかった!つまりあれやろ?ワシが吾郎っちゅーことを証明すりゃええんやろ?」
「は、はぁ…」
「そうと決まればいろいろ教えたる!って、そないなとこ突っ立っとらんで中入り!」
手首を捕まれ、部屋の中へと引きずり込まれた。ここ私の家なんだけど…
ーーーーー
無理矢理座布団に座らされ、彼と向かい合うような形になった。彼は咳払いを一つした後、よっしゃ、と掛け声をかけながらレザーパンツにつつまれた太ももを軽くパシンと叩く。
「お嬢ちゃん、ワシは今から吾郎にしか知らんお嬢ちゃんのこと言ったるわ」
「はぁ…」
「せやなぁ…あ、飯作っとるときよぉ鼻歌歌っとるよな。あとお笑い番組見ながら飯食っとるやろ?」
あ、合ってる…。確かにご飯を作るときは自然と鼻歌を歌っているし、好きなお笑い番組を見てがははと笑いながらご飯を食べている。
「それから…風呂出たあとはめっちゃええ匂いするし、そんでもって寝顔がごっつ可愛ええねん」
なんて愛おしげな顔をしながら語っているのだろう。というか、それ言われてどんな反応をすればいいんだ。しかし、先程から彼が言っていることは嘘に聞こえない。もし泥棒だとしたらすぐさま逃げるなり、私に暴行を加えたりするだろう。
「あ!今日のパンツの色は水色!」
「ひゃああ!?い、いきなり何言うんですか!!」
「だってそうやろ?」
「そ、そうですけど!って!言わせないでください!」
「ヒヒッ!お嬢ちゃん怖がったり驚いたり忙しいやっちゃなぁ!」
「誰のせいですか!誰の!」
やっぱり変態じゃないか!私は通報しようと携帯を取り出す。すると吾郎らしき人は慌てて私を止めようとした。
「わーかった!わかった!そんじゃあとっておきのやつ教えたる」
「とっておき…?」
「せや、これ言うんはちぃと恥ずかしいんやが…」
「な、なんですか…」
「あんな…ワシのこと撫でてるときのお嬢ちゃん、ごっつ可愛い顔すんねん…」
「…………はっ?」
いきなり何を言い出したかと思えば本当に恥ずかしいことを言ってのけた。
「なんちゅうか…愛おしげにっちゅうか…優しい目でワシのこと撫でるんや」
「へ…は…」
「最初は親父以外のやつに飼われるなんてって不満しかなかったんやが…手噛んでも優しくしてくれるやん?ワシはそれが、なんやむず痒くてのぉ…」
「へ、へぇ…」
「あんときも正直言って結構ヤバかったしお嬢ちゃんはワシにとって命の恩人や。ワシお嬢ちゃんにここまでようされて、ほんまに嬉しかったんやで?」
「あ、う…」
「なぁ、お嬢ちゃん…」
「わ、わかりましたっ!吾郎だって信じますから!だからそれ以上は!」
「ほんまか!?…ってなんやお嬢ちゃん、ごっつ顔赤いで?どないしたん?」
「近い近い!まって、まて…!」
さっきから顔をどんどん近づけて恥ずかしいことをペラペラと話してくるものだから、私にとってはいてもたってもいられない状況だった。こんなに真面目な顔をして話す人が嘘をついているようには見えない。信じ難いことではあるが、彼は本当にあの吾郎のようだ。
「ほんとに吾郎…なんですよね…?」
「だぁから!そう言っとるやないかぁ!ワシ、嘘が嫌いなんや」
「なんで、人間の姿なんかに…」
「んー?ワシもなんで人間の姿になれたかはよぉ知らんけど、昔いつの間にかこの姿になれるようになったんや。最近までは体弱っとってなれんかったっちゅーわけやな」
ほ、本当に犬が人間の姿になんてなれるのか。体が弱っていたから人間の姿になれなかったってことは元気になったということなのだろうか。それなら寂しいけどご主人様のところに返さなきゃだよね。
「…元気になってよかったです」
「おう!お嬢ちゃんのおかげやでほんま!」
「それじゃあご主人様のところに帰りましょう」
「あ?親父んとこ?あー…せやな…」
先程からご主人様のことを親父と呼んでいるけど、お父さんのように慕っているんだなぁ。吾郎は私がご主人様のところに帰るよう提案すると腕を組んで悩んでいる。何を悩む必要があるのだろうか。
「なぁ、お嬢ちゃん」
「はい」
「悪いんやけど、しばらくの間ここで寝泊まりさせてくれん?」
「………はい?」
吾郎の言葉を聞いて私はきっと目が点になっているだろう。何か帰れない事情でもあるのだろうか。
「ワシの部屋、カチコミされてな?ダメになってしもてん。だから新しい部屋用意せなあかんのやけど、それもめんどいし…それに…」
今この犬カチコミと言ったか?カチコミってヤクザが乗り込んでくるあのカチコミ?どういう境遇で育ってきたのだろうか。そんなことをぐるぐる悩んでいると、飛びつかれて抱き締められた。
「ワシ、お嬢ちゃんのこと気に入ったわ!お嬢ちゃんになら飼われてもええ!」
「え、え…?」
「お嬢ちゃんくらいなもんやでぇ…ワシの心弄ぶんは…なぁええやろ?お嬢ちゃん」
「………」
驚きのあまり、声も出なかった。みょうじなまえ、人間になれる不思議な犬に気に入られました。
私は握ったままでいたドアノブを引っ張り、部屋のドアを閉めた。え、誰、あの人、私ちゃんと家の鍵閉めたよね?不法侵入者?これ警察に電話するべきだよね?それとも疲れすぎて幻覚見ちゃってる?冷汗をかきながら頭の中でぐるぐると悩む。
「なんでドア閉めるん?」
「ぎゃあああっ!!」
「うおっ!?」
急にドアが開き、先程見たおじさんが目の前にいた。私は突然のことに驚き、色気のない声をあげてしまった。おじさんは逆に私の声に驚いてしまったようだ。よく見るとおじさんの頭に犬の耳のようなものが生えている。どことなく動いている気もするが、よくできた作り物だと感心しながらおじさんの頭を凝視する。って!感心している場合じゃない!
「あ、あの…」
「お?なんや?」
「ど、どど、どちら様、でしょうか…?」
自分でもビビるくらいどもってしまった。それに加えて目もあちこちに泳いでいるため明らかに動揺していることが相手にバレただろう。
「どちら様て…お嬢ちゃん、ワシに素敵な名前つけてくれたやん!」
「え?…え?…どういうことですか?」
「まだわからんのか?吾郎やって、ご・ろ・う!」
何を言っているのだろうかこの人は。私の知っている吾郎はドーベルマンの犬だ。だが、目の前のおじさんが嘘をついているようには見えない。そんな漫画のようなことが有り得るのだろうか。
「ほ、ほんとに…吾郎…?」
「だぁからさっきからそう言うてるやろ!」
「え、え…だって吾郎は犬であって…」
「お、せや!やっと人間の姿になれたんや!こうしてお嬢ちゃんとお喋りもできるし…」
吾郎と名乗るおじさんはニタニタと悪い笑顔を浮かべながらジリジリと近づいてきた。それにつられて後ろへ後ずさる。
「こんなことだってできるでぇ?」
大きく手を広げたと思いきや腕の中へ抱き締められた。突然のことに体が固まる。
「はぁ…お嬢ちゃん温くてたまらんわぁ…」
「…い」
「い?」
「いやぁぁああ!!」
「ぐはぁっ!」
私は彼の顔に目掛けて思いっきり平手を食らわせた。その衝撃で吾郎らしき人は勢いよく床に叩きつけられる。
「け、警察呼ばなきゃ…」
「ヒヒ…お嬢ちゃん…見かけによらずなかなかごっついもん持っとるやないか…」
「ひえっ」
「あー、そない怖がるなや…よしわかった!つまりあれやろ?ワシが吾郎っちゅーことを証明すりゃええんやろ?」
「は、はぁ…」
「そうと決まればいろいろ教えたる!って、そないなとこ突っ立っとらんで中入り!」
手首を捕まれ、部屋の中へと引きずり込まれた。ここ私の家なんだけど…
ーーーーー
無理矢理座布団に座らされ、彼と向かい合うような形になった。彼は咳払いを一つした後、よっしゃ、と掛け声をかけながらレザーパンツにつつまれた太ももを軽くパシンと叩く。
「お嬢ちゃん、ワシは今から吾郎にしか知らんお嬢ちゃんのこと言ったるわ」
「はぁ…」
「せやなぁ…あ、飯作っとるときよぉ鼻歌歌っとるよな。あとお笑い番組見ながら飯食っとるやろ?」
あ、合ってる…。確かにご飯を作るときは自然と鼻歌を歌っているし、好きなお笑い番組を見てがははと笑いながらご飯を食べている。
「それから…風呂出たあとはめっちゃええ匂いするし、そんでもって寝顔がごっつ可愛ええねん」
なんて愛おしげな顔をしながら語っているのだろう。というか、それ言われてどんな反応をすればいいんだ。しかし、先程から彼が言っていることは嘘に聞こえない。もし泥棒だとしたらすぐさま逃げるなり、私に暴行を加えたりするだろう。
「あ!今日のパンツの色は水色!」
「ひゃああ!?い、いきなり何言うんですか!!」
「だってそうやろ?」
「そ、そうですけど!って!言わせないでください!」
「ヒヒッ!お嬢ちゃん怖がったり驚いたり忙しいやっちゃなぁ!」
「誰のせいですか!誰の!」
やっぱり変態じゃないか!私は通報しようと携帯を取り出す。すると吾郎らしき人は慌てて私を止めようとした。
「わーかった!わかった!そんじゃあとっておきのやつ教えたる」
「とっておき…?」
「せや、これ言うんはちぃと恥ずかしいんやが…」
「な、なんですか…」
「あんな…ワシのこと撫でてるときのお嬢ちゃん、ごっつ可愛い顔すんねん…」
「…………はっ?」
いきなり何を言い出したかと思えば本当に恥ずかしいことを言ってのけた。
「なんちゅうか…愛おしげにっちゅうか…優しい目でワシのこと撫でるんや」
「へ…は…」
「最初は親父以外のやつに飼われるなんてって不満しかなかったんやが…手噛んでも優しくしてくれるやん?ワシはそれが、なんやむず痒くてのぉ…」
「へ、へぇ…」
「あんときも正直言って結構ヤバかったしお嬢ちゃんはワシにとって命の恩人や。ワシお嬢ちゃんにここまでようされて、ほんまに嬉しかったんやで?」
「あ、う…」
「なぁ、お嬢ちゃん…」
「わ、わかりましたっ!吾郎だって信じますから!だからそれ以上は!」
「ほんまか!?…ってなんやお嬢ちゃん、ごっつ顔赤いで?どないしたん?」
「近い近い!まって、まて…!」
さっきから顔をどんどん近づけて恥ずかしいことをペラペラと話してくるものだから、私にとってはいてもたってもいられない状況だった。こんなに真面目な顔をして話す人が嘘をついているようには見えない。信じ難いことではあるが、彼は本当にあの吾郎のようだ。
「ほんとに吾郎…なんですよね…?」
「だぁから!そう言っとるやないかぁ!ワシ、嘘が嫌いなんや」
「なんで、人間の姿なんかに…」
「んー?ワシもなんで人間の姿になれたかはよぉ知らんけど、昔いつの間にかこの姿になれるようになったんや。最近までは体弱っとってなれんかったっちゅーわけやな」
ほ、本当に犬が人間の姿になんてなれるのか。体が弱っていたから人間の姿になれなかったってことは元気になったということなのだろうか。それなら寂しいけどご主人様のところに返さなきゃだよね。
「…元気になってよかったです」
「おう!お嬢ちゃんのおかげやでほんま!」
「それじゃあご主人様のところに帰りましょう」
「あ?親父んとこ?あー…せやな…」
先程からご主人様のことを親父と呼んでいるけど、お父さんのように慕っているんだなぁ。吾郎は私がご主人様のところに帰るよう提案すると腕を組んで悩んでいる。何を悩む必要があるのだろうか。
「なぁ、お嬢ちゃん」
「はい」
「悪いんやけど、しばらくの間ここで寝泊まりさせてくれん?」
「………はい?」
吾郎の言葉を聞いて私はきっと目が点になっているだろう。何か帰れない事情でもあるのだろうか。
「ワシの部屋、カチコミされてな?ダメになってしもてん。だから新しい部屋用意せなあかんのやけど、それもめんどいし…それに…」
今この犬カチコミと言ったか?カチコミってヤクザが乗り込んでくるあのカチコミ?どういう境遇で育ってきたのだろうか。そんなことをぐるぐる悩んでいると、飛びつかれて抱き締められた。
「ワシ、お嬢ちゃんのこと気に入ったわ!お嬢ちゃんになら飼われてもええ!」
「え、え…?」
「お嬢ちゃんくらいなもんやでぇ…ワシの心弄ぶんは…なぁええやろ?お嬢ちゃん」
「………」
驚きのあまり、声も出なかった。みょうじなまえ、人間になれる不思議な犬に気に入られました。