犬の吾郎は飼い慣らせない。
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午後10時。仕事帰り、家の前に大きな犬が倒れていた。その犬は何故か片目に眼帯をつけており、酷い怪我をしている。近寄って見てみると少しではあるが体が上下に動いている。よかった、ちゃんと生きてる。とはいえ息も絶え絶えとしているためこのまま野放しにするわけにはいかない。
「ええっと、ええっと…今やってる動物病院は…」
携帯で近所の動物病院を探す。どうやらこの時間でもまだ営業している病院があるようだ。
「もう大丈夫だよ、安心してね」
聞こえているかは分からないが、この犬を安心させられる言葉を私は言いたかった。
―――絶対に死なせたりしない。
私は犬を抱き上げて車へと運ぼうとした。
「おもっ!」
「そこら中に噛み跡やら爪痕がついているので、恐らく喧嘩でしょうね」
「はぁ…喧嘩、ですか」
「にしてもこれは酷いですね…縄張り争いとかなら分かりますけど、動物は命を張ってまで自分の身を危険に晒したりはしないはずなんですが…」
とりあえず、怪我は治療してもらうことができた。しかし、診断の結果しばらく安静にさせなくてはいけないらしい。飼うことが難しければ保健所に引き渡すこともできると言われたが、私はそれを断った。なんとなく、この犬を保健所に連れて行ってしまってはいけないと感じたからだ。さてと、これから忙しくなりそうだ。
―――――
とりあえず家に連れて帰ってはみたものの犬が目覚める様子はなかった。ちなみにこの子はドーベルマンのオスだ。体はシュッとしていて細く見えるが、筋肉質で逞しい体つきをしている。毛の色は黒と赤褐色でその二色のコントラストがとてもかっこいい。触ってみると短くて硬い毛をしているが、撫でるととても滑らかで触り心地が良い。
「早く起きてくれないかなぁ…」
この子はどんな犬なのだろうか。喧嘩をしていたくらいだから荒っぽい性格をしているのだろうか。ネットでドーベルマンのことについて調べてみたところ、ドーベルマンは警察犬、軍用犬として活躍しており、とても忠誠心の高い犬らしい。怖い見た目をしているが、優しくて甘えん坊な一面もあるんだとか。ただ、一つ難点な部分があり他人や他犬にはとても警戒心が強く、時には攻撃的になってしまうらしい。この犬、たぶん飼い犬だよなぁ。左目につけている眼帯は間違いなく人工的に作られたものだし断耳、断尾もきちんとされている。ははは…大変な目にあいそうだ。私は犬を撫でるのをやめ、寝床につくことにした。明日は幸い仕事が休みのため、必要なものをペットショップで買い揃えよう。一時的ではあるが、早く元気になってもらえるように頑張らなくては。そう胸に決意を抱きながら、私は眠りについた。
眠りが覚め、目をうっすらとあけると目の前には黒い物体が見えた。もう少し大きく目を開けてみると、片目に眼帯をつけたドーベルマンの犬がベッドに手をついてこちらを見ていた。
「うわっ!」
「!」
私はびっくりして声をあけでしまったため犬もその声に驚き、昨日寝ていた場所まで走り、私と距離をとった。
「あ、ご、ごめんね。びっくりしたよね」
私はベッドから起き上がり、恐る恐る犬に近づいた。すると犬は小さく唸り、私を睨みつけてきた。うぅ…やはり警戒しているようだ。そりゃ大怪我をしていたわけだし警戒しないわけがない。今はあまり接触するべきではないと感じ、私は自分の身支度をすることにした。
身支度をしながらチラチラと犬の様子を伺うと、寝ていた場所から動かず、じっとしていた。うーんどうしよう…あ、そういえばきっとお腹空いてるよね。昨日病院から貰ったドッグフードがあったはずだ。
「餌あげたところで警戒心解いてくれるとは思わないけど…」
とはいえ、こちらから近づかないことには何も始まらないか。朝ご飯の支度を一旦止め、ドッグフードをカラカラと音を立てながら大皿に出した。生憎ドッグフード用の皿は家にはない為これで我慢してもらおう。あ、きっと喉も乾いているだろうからお水も用意しなくては。
「ほーらご飯だよ〜」
無反応。いわゆる無視というやつである。
「ご、ご飯食べないと早く元気にならないよ〜?」
しーん。今の状況に効果音を加えるとしたらそんな音が鳴るだろう。顔も合わせようとしてくれないし、ご飯にすら全く興味を示そうとしてくれない。駄目だこりゃ…。私は首をガクッと下げ、朝ご飯の用意を再開した。一応ドッグフードと水は犬の近くに置いておいた。さて、私は私のご飯を食べることにしよっと。できたてのご飯をテーブルの上に持って行く途中、犬とすれ違った。えっ!?動いた!?私は急いでご飯をテーブルに置き、犬が行ったであろう場所へと向かう。犬は玄関の扉を前足で何回も引っ掻いていた。
「ど、どうしたの…?」
「ワンッ!」
始めて、この犬の声を聞いた。低くて逞しくて、とても頼もしい声をしていた。じゃなくて!おそらく犬は外に出たがっているようだ。
「外に、行きたいの?」
「ワンッ!ワンッ!」
「駄目だよ…君は大怪我をしていたんだからしばらくは安静にしていないと」
「ワンッ!!」
先程触ろうとした時と同じように声を唸らせて何かを示しているようだ。でも、医者からは安静にさせろと言われているし、外に行かせるわけにはいかない。
「そんなに大きな声で鳴いても駄目だよ。ほら、戻ろ…っいたぁ!」
部屋に戻らせようと犬に手を伸ばすと一瞬だが手を噛まれた。いってて…結構立派な歯してるんだなぁ…。私は噛まれた手をさすっていると犬はなんとなくだが驚いた表情をしているように見えた。すぐさま私から顔を逸らし、部屋の中に戻ってくれた。
いったいなんだったんだ…?
―――――
「それじゃあ、ちょっと出かけてくるね」
「………」
「あ、はは…お留守番よろしくね…」
玄関での騒動があってから犬の鳴き声を聞いていない。完全にへそを曲げてしまったようだ。これは骨が折れそうだ…。でも元気になるまで私が責任を持って看病してあげないと!私は車の鍵を出してペットショップへ向かうことにした。
「どうしたら少しは仲良くなれるかなぁ…」
そう独り言を呟いても、何も返ってくるはずもない。
「…あの子も、最初はあんな感じだったっけ」
少し過去のことを思い出しながら私は車を走らせた。
「ええっと、ええっと…今やってる動物病院は…」
携帯で近所の動物病院を探す。どうやらこの時間でもまだ営業している病院があるようだ。
「もう大丈夫だよ、安心してね」
聞こえているかは分からないが、この犬を安心させられる言葉を私は言いたかった。
―――絶対に死なせたりしない。
私は犬を抱き上げて車へと運ぼうとした。
「おもっ!」
「そこら中に噛み跡やら爪痕がついているので、恐らく喧嘩でしょうね」
「はぁ…喧嘩、ですか」
「にしてもこれは酷いですね…縄張り争いとかなら分かりますけど、動物は命を張ってまで自分の身を危険に晒したりはしないはずなんですが…」
とりあえず、怪我は治療してもらうことができた。しかし、診断の結果しばらく安静にさせなくてはいけないらしい。飼うことが難しければ保健所に引き渡すこともできると言われたが、私はそれを断った。なんとなく、この犬を保健所に連れて行ってしまってはいけないと感じたからだ。さてと、これから忙しくなりそうだ。
―――――
とりあえず家に連れて帰ってはみたものの犬が目覚める様子はなかった。ちなみにこの子はドーベルマンのオスだ。体はシュッとしていて細く見えるが、筋肉質で逞しい体つきをしている。毛の色は黒と赤褐色でその二色のコントラストがとてもかっこいい。触ってみると短くて硬い毛をしているが、撫でるととても滑らかで触り心地が良い。
「早く起きてくれないかなぁ…」
この子はどんな犬なのだろうか。喧嘩をしていたくらいだから荒っぽい性格をしているのだろうか。ネットでドーベルマンのことについて調べてみたところ、ドーベルマンは警察犬、軍用犬として活躍しており、とても忠誠心の高い犬らしい。怖い見た目をしているが、優しくて甘えん坊な一面もあるんだとか。ただ、一つ難点な部分があり他人や他犬にはとても警戒心が強く、時には攻撃的になってしまうらしい。この犬、たぶん飼い犬だよなぁ。左目につけている眼帯は間違いなく人工的に作られたものだし断耳、断尾もきちんとされている。ははは…大変な目にあいそうだ。私は犬を撫でるのをやめ、寝床につくことにした。明日は幸い仕事が休みのため、必要なものをペットショップで買い揃えよう。一時的ではあるが、早く元気になってもらえるように頑張らなくては。そう胸に決意を抱きながら、私は眠りについた。
眠りが覚め、目をうっすらとあけると目の前には黒い物体が見えた。もう少し大きく目を開けてみると、片目に眼帯をつけたドーベルマンの犬がベッドに手をついてこちらを見ていた。
「うわっ!」
「!」
私はびっくりして声をあけでしまったため犬もその声に驚き、昨日寝ていた場所まで走り、私と距離をとった。
「あ、ご、ごめんね。びっくりしたよね」
私はベッドから起き上がり、恐る恐る犬に近づいた。すると犬は小さく唸り、私を睨みつけてきた。うぅ…やはり警戒しているようだ。そりゃ大怪我をしていたわけだし警戒しないわけがない。今はあまり接触するべきではないと感じ、私は自分の身支度をすることにした。
身支度をしながらチラチラと犬の様子を伺うと、寝ていた場所から動かず、じっとしていた。うーんどうしよう…あ、そういえばきっとお腹空いてるよね。昨日病院から貰ったドッグフードがあったはずだ。
「餌あげたところで警戒心解いてくれるとは思わないけど…」
とはいえ、こちらから近づかないことには何も始まらないか。朝ご飯の支度を一旦止め、ドッグフードをカラカラと音を立てながら大皿に出した。生憎ドッグフード用の皿は家にはない為これで我慢してもらおう。あ、きっと喉も乾いているだろうからお水も用意しなくては。
「ほーらご飯だよ〜」
無反応。いわゆる無視というやつである。
「ご、ご飯食べないと早く元気にならないよ〜?」
しーん。今の状況に効果音を加えるとしたらそんな音が鳴るだろう。顔も合わせようとしてくれないし、ご飯にすら全く興味を示そうとしてくれない。駄目だこりゃ…。私は首をガクッと下げ、朝ご飯の用意を再開した。一応ドッグフードと水は犬の近くに置いておいた。さて、私は私のご飯を食べることにしよっと。できたてのご飯をテーブルの上に持って行く途中、犬とすれ違った。えっ!?動いた!?私は急いでご飯をテーブルに置き、犬が行ったであろう場所へと向かう。犬は玄関の扉を前足で何回も引っ掻いていた。
「ど、どうしたの…?」
「ワンッ!」
始めて、この犬の声を聞いた。低くて逞しくて、とても頼もしい声をしていた。じゃなくて!おそらく犬は外に出たがっているようだ。
「外に、行きたいの?」
「ワンッ!ワンッ!」
「駄目だよ…君は大怪我をしていたんだからしばらくは安静にしていないと」
「ワンッ!!」
先程触ろうとした時と同じように声を唸らせて何かを示しているようだ。でも、医者からは安静にさせろと言われているし、外に行かせるわけにはいかない。
「そんなに大きな声で鳴いても駄目だよ。ほら、戻ろ…っいたぁ!」
部屋に戻らせようと犬に手を伸ばすと一瞬だが手を噛まれた。いってて…結構立派な歯してるんだなぁ…。私は噛まれた手をさすっていると犬はなんとなくだが驚いた表情をしているように見えた。すぐさま私から顔を逸らし、部屋の中に戻ってくれた。
いったいなんだったんだ…?
―――――
「それじゃあ、ちょっと出かけてくるね」
「………」
「あ、はは…お留守番よろしくね…」
玄関での騒動があってから犬の鳴き声を聞いていない。完全にへそを曲げてしまったようだ。これは骨が折れそうだ…。でも元気になるまで私が責任を持って看病してあげないと!私は車の鍵を出してペットショップへ向かうことにした。
「どうしたら少しは仲良くなれるかなぁ…」
そう独り言を呟いても、何も返ってくるはずもない。
「…あの子も、最初はあんな感じだったっけ」
少し過去のことを思い出しながら私は車を走らせた。
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