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今、日付が変わった。私は神室町のネオン街を1人寂しく、背伸びして買った高めのヒールの音をカツカツと鳴らしながら歩く。
終電はとっくに逃し、残りの交通機関といえばタクシーだけ。交通費はもちろん自腹。現実とは酷なものである。
こんな日は家には帰らず、私はある場所を目指す。
「なまえちゃん!今日もお疲れさまやでぇ!」
ある家の扉の鍵を開けると会いたかった彼が歯を見せながら笑って出迎えてくれた。
「真島さん…?」
「なーんやその顔は。愛しの真島さんがこうして出迎えとるんやからもっと嬉しそうにせい!」
「いや、あの、私行くって連絡してないですよね?だから出迎えてくれるとは思わなくて…」
「んなもんなまえちゃんがくることなんて連絡来んくてもわかるわ」
その言葉を聞いて胸の中できゅんと少女漫画に出てきそうな効果音が胸の中で鳴った気がした。『嶋野の狂犬』という2つ名がある彼だが、今の彼は私にとって玄関で出迎えてくれる大きなわんこに見える。などとくだらないことを考えているとそないなとこ突っ立っとらんではよこっちこんかい、と真島さんに肩を抱かれた。急いでパンプスを脱いで真島さんに連れてかれた先は浴室だった。
「なまえちゃんの好きな入浴剤買っといたで!肩まで使ってあったまりんしゃい」
「ありがとうございます…!」
「なんだったら一緒に入るか?のぉ?」
「お気持ちだけで十分嬉しいです」
「そか?ワシはいつでも大歓迎やからな!」
真島さんはちゃんと100まで数えてから出るんやでと私の頭を撫でてから浴室から去っていった。
「お、ほかほかになったな」
「はい!さっぱりしました」
お風呂から上がってリビングに行くと、真島さんはソファに座ってテレビを見ていた。が、私がリビングに来たことを確認すると、立ち上がって台所に向かった。
「ほんなら、風呂上がりにはこれ、やろ?」
真島さんが冷蔵庫から取り出したのは缶ビールだった。ほれ、と手渡されると缶ビールはとても冷えており、つい喉が鳴ってしまった。
「よっしゃ!乾杯しよか」
「ですね!」
缶ビールのプルタブをプシュッと気持ちいい音をたてながらあけ、真島さんの持っている缶ビールにコツンと缶をあて乾杯した。冷えた缶ビールをゴキュッと2、3口音をたてながら喉に通す。
「っかー!んっま!!」
「おっさん出とるで」
「あはは、すいません」
「ほんまになまえちゃんはお酒好きやなぁ」
「はい!特にお風呂上がりのビールは最高です!」
「あ、せや。腹減っとるやろ」
そう言うと真島さんは再び台所に戻り、大きな桶を持ってきた。
「残りもんですまんがよかったら食えや」
桶の蓋をあけてもらうと寿司が何貫か残っていた。まぐろ、えび、サーモン、いくら、どれも好きなものばかりで目が輝いた。
「お寿司…!いいんですか!?」
「ええ、ええ…たんと食え」
「わぁあ…嬉しい…!どれにしようかなぁ…!」
「ヒヒッなんや寿司食うんは久しぶりなんか?」
「そうなんですよ〜!それに最近まともなご飯も食べれていないので嬉しいです…!」
「おいおい…それ大丈夫なんか?」
「家に帰るとすぐ布団に行って寝ちゃうんですよねぇ…」
「あかんやんそれ…いつかぶっ倒れるで」
「だからこうして真島さんのお家でご飯食べてるんじゃないですか!」
「声張って言うことやないぞそれ…」
まぁ倒れてもらったら困るからええかと缶ビールを口へと運んだ。
「真島さんお寿司美味しいです…!」
「そらよかったわ…なーんか餌付けしとる気分になるわ」
「えへへ…ごちになります!」
「自分バカにされてるの気づいてないやろ」
お寿司が入っていた桶は空になり、お酒も飲み終えた。そのあとは二人並んでソファに座ってテレビを見ながらのんびりする。しかし、時間も時間なのでそこまで面白い番組はやっておらず、重い瞼が落ちてくる。
「寝るなら布団でおやすみしぃ」
それに気づいた真島さんは私の肩を軽くゆさりながらそう言った。今になって仕事の疲れがどっと出てきた私はなんとか返答するが、ふにゃふにゃ言っとって何言っとるかわからんでと少し笑われた。
「しゃあない嬢ちゃんやのぉ」
背中と膝裏に腕を通され、次の瞬間体が浮いた。いや、正確には浮いていない。頬には人肌の温もりを感じとても居心地がよかった。目をゆっくりと開けると真島さんの厚い胸板に描かれた綺麗な刺青が目に入った。
「真島さん…?」
「お疲れのなまえちゃんはおやすみの時間やで」
寝ぼけた頭で今の状況を確認すると、真島さんに横抱きにされ、寝室へと運ばれた。肩の上まで布団をかけられ、真島さんも布団の中に入ってきた。
「寒いからもっとこっちこんかい」
片腕で引き寄せられ、真島さんの胸元が目の前に広がった。恥ずかしさもあったが、人肌の温もりの心地良さの方が勝ち、私も胸元に頭を擦りつける。
「なまえは眠いとき素直でほんまにかわええの」
「…眠いときだけですか?」
「言わせんな、阿呆」
「ケチ…はぁ…あったかい」
「なまえはほんまにぬくいのぉ」
「そうですか?」
「離しとうなくなるくらいにな」
「ふふ…ふわぁ…」
聞いてて恥ずかしくなる台詞に少し笑ってしまった直後我慢できずに小さな欠伸が出た。
「…そないにしんどいならやめてもええんやで」
前にも一度、私が仕事で体調を崩したときにそのような言葉を言われたことがある。この人はどうしてここまで優しくしてくれるのだろうか。私がこの家に来る度に、彼はこうして暖かく出迎えてくれる。申し訳ないと思いつつも足は自然と真島さんの家へと運んでしまう。この居心地さを覚えてしまったら最後。私は彼に溺れてしまっているようだ。
自分の手柄を上司に持っていかれたり、した覚えのないミスで怒られたり、何度も今の仕事をやめたいと思った。彼の言う通りあんな会社やめてしまった方がいいのだろう。でも、彼の家を訪れるだけで明日も頑張ろうと思える。
「大丈夫ですよ」
「…ほんまに自分は阿呆やな」
「あはは…」
「まぁ、この話はまた今度な」
今日はもう寝ようやと左目についている眼帯を外した。その目は閉じられていて痛々しくキズが入っている。この目を見る度に胸を締め付けられる感覚に陥る。
「真島さん、私、真島さんとこうした時間過ごせれるだけで幸せですよ」
私はおやすみなさい、と言い、彼の左目にキスをした。少しでも真島さんの傷が癒えるように。もう片方の目は見開いていたが、嬉しそうに目を細めた。
「おやすみ、なまえ」
頭を大きな手で抱えられ、額にキスを落としてくれた。
「…俺も、幸せやで」
朝、1つの電話で起こされた。眠い目を擦りながら携帯を確認すると会社からだった。一瞬で眠気が覚め、急いで電話に出る。
「はい、みょうじです」
『あっみょうじさん…?鈴木だけど』
「あ、課長。おはようございます。どうかしましたか?」
『いやぁ…なんていうか…今日お休みで大丈夫だよ』
「……は?え、あの、どういうことですか…!?」
『ははは !いや!とにかく!今日はお休みで!』
それじゃ!と慌ただしく電話を切られた。受話器を思い切り置いたのか、ガチャン!という大きな音が頭に残る。
「…なんや…電話か?」
どういうことなのか困惑していると隣で寝ていた真島さんが不機嫌そうにむくりと起き上がった。しまった。真島さんは寝起きがとても悪い。そんな人の隣で思わず電話をしてしまった。
「ご、ごめんなさい!起こしちゃって…」
「ええ…それよりどんな電話やったん?」
「いや、その…なんか今日休みでいいよって言われて…」
「ほんまか!?それじゃデートしようやデート!美味いもん食わせたる!」
あんなに眠そうな顔をしていたのに急ににこにこと晴れやかな顔になった。真島さんとデートだなんて久しぶりすぎてとても嬉しいのだが、なぜ急に会社が私に休みを出したのか未だに謎である。
「わっ!」
そんなことを考えていると急にベッドに押し倒された。真島さんは私を抱き枕のように抱えて嬉しそうに微笑んだ。
「まだ早いしデートはもうちょい寝てからでもええやろ」
「ふふ…そうですね。二度寝なんて久しぶりだなぁ」
「頑張っとるなまえちゃんへのご褒美やからな」
「贅沢してる気分です」
「たまにはええやろ、たまには」
「おはようございまーす」
「あっ!みょうじさん!」
「みょうじさん…あんまり危ない道に行っちゃだめだよ…」
「何かあったらすぐ言ってね…?」
「……どういうことですか?」
どこかの組の組長さんが手を回してくれたという事実を知ったのはほんの数日経ってからだった。
終電はとっくに逃し、残りの交通機関といえばタクシーだけ。交通費はもちろん自腹。現実とは酷なものである。
こんな日は家には帰らず、私はある場所を目指す。
「なまえちゃん!今日もお疲れさまやでぇ!」
ある家の扉の鍵を開けると会いたかった彼が歯を見せながら笑って出迎えてくれた。
「真島さん…?」
「なーんやその顔は。愛しの真島さんがこうして出迎えとるんやからもっと嬉しそうにせい!」
「いや、あの、私行くって連絡してないですよね?だから出迎えてくれるとは思わなくて…」
「んなもんなまえちゃんがくることなんて連絡来んくてもわかるわ」
その言葉を聞いて胸の中できゅんと少女漫画に出てきそうな効果音が胸の中で鳴った気がした。『嶋野の狂犬』という2つ名がある彼だが、今の彼は私にとって玄関で出迎えてくれる大きなわんこに見える。などとくだらないことを考えているとそないなとこ突っ立っとらんではよこっちこんかい、と真島さんに肩を抱かれた。急いでパンプスを脱いで真島さんに連れてかれた先は浴室だった。
「なまえちゃんの好きな入浴剤買っといたで!肩まで使ってあったまりんしゃい」
「ありがとうございます…!」
「なんだったら一緒に入るか?のぉ?」
「お気持ちだけで十分嬉しいです」
「そか?ワシはいつでも大歓迎やからな!」
真島さんはちゃんと100まで数えてから出るんやでと私の頭を撫でてから浴室から去っていった。
「お、ほかほかになったな」
「はい!さっぱりしました」
お風呂から上がってリビングに行くと、真島さんはソファに座ってテレビを見ていた。が、私がリビングに来たことを確認すると、立ち上がって台所に向かった。
「ほんなら、風呂上がりにはこれ、やろ?」
真島さんが冷蔵庫から取り出したのは缶ビールだった。ほれ、と手渡されると缶ビールはとても冷えており、つい喉が鳴ってしまった。
「よっしゃ!乾杯しよか」
「ですね!」
缶ビールのプルタブをプシュッと気持ちいい音をたてながらあけ、真島さんの持っている缶ビールにコツンと缶をあて乾杯した。冷えた缶ビールをゴキュッと2、3口音をたてながら喉に通す。
「っかー!んっま!!」
「おっさん出とるで」
「あはは、すいません」
「ほんまになまえちゃんはお酒好きやなぁ」
「はい!特にお風呂上がりのビールは最高です!」
「あ、せや。腹減っとるやろ」
そう言うと真島さんは再び台所に戻り、大きな桶を持ってきた。
「残りもんですまんがよかったら食えや」
桶の蓋をあけてもらうと寿司が何貫か残っていた。まぐろ、えび、サーモン、いくら、どれも好きなものばかりで目が輝いた。
「お寿司…!いいんですか!?」
「ええ、ええ…たんと食え」
「わぁあ…嬉しい…!どれにしようかなぁ…!」
「ヒヒッなんや寿司食うんは久しぶりなんか?」
「そうなんですよ〜!それに最近まともなご飯も食べれていないので嬉しいです…!」
「おいおい…それ大丈夫なんか?」
「家に帰るとすぐ布団に行って寝ちゃうんですよねぇ…」
「あかんやんそれ…いつかぶっ倒れるで」
「だからこうして真島さんのお家でご飯食べてるんじゃないですか!」
「声張って言うことやないぞそれ…」
まぁ倒れてもらったら困るからええかと缶ビールを口へと運んだ。
「真島さんお寿司美味しいです…!」
「そらよかったわ…なーんか餌付けしとる気分になるわ」
「えへへ…ごちになります!」
「自分バカにされてるの気づいてないやろ」
お寿司が入っていた桶は空になり、お酒も飲み終えた。そのあとは二人並んでソファに座ってテレビを見ながらのんびりする。しかし、時間も時間なのでそこまで面白い番組はやっておらず、重い瞼が落ちてくる。
「寝るなら布団でおやすみしぃ」
それに気づいた真島さんは私の肩を軽くゆさりながらそう言った。今になって仕事の疲れがどっと出てきた私はなんとか返答するが、ふにゃふにゃ言っとって何言っとるかわからんでと少し笑われた。
「しゃあない嬢ちゃんやのぉ」
背中と膝裏に腕を通され、次の瞬間体が浮いた。いや、正確には浮いていない。頬には人肌の温もりを感じとても居心地がよかった。目をゆっくりと開けると真島さんの厚い胸板に描かれた綺麗な刺青が目に入った。
「真島さん…?」
「お疲れのなまえちゃんはおやすみの時間やで」
寝ぼけた頭で今の状況を確認すると、真島さんに横抱きにされ、寝室へと運ばれた。肩の上まで布団をかけられ、真島さんも布団の中に入ってきた。
「寒いからもっとこっちこんかい」
片腕で引き寄せられ、真島さんの胸元が目の前に広がった。恥ずかしさもあったが、人肌の温もりの心地良さの方が勝ち、私も胸元に頭を擦りつける。
「なまえは眠いとき素直でほんまにかわええの」
「…眠いときだけですか?」
「言わせんな、阿呆」
「ケチ…はぁ…あったかい」
「なまえはほんまにぬくいのぉ」
「そうですか?」
「離しとうなくなるくらいにな」
「ふふ…ふわぁ…」
聞いてて恥ずかしくなる台詞に少し笑ってしまった直後我慢できずに小さな欠伸が出た。
「…そないにしんどいならやめてもええんやで」
前にも一度、私が仕事で体調を崩したときにそのような言葉を言われたことがある。この人はどうしてここまで優しくしてくれるのだろうか。私がこの家に来る度に、彼はこうして暖かく出迎えてくれる。申し訳ないと思いつつも足は自然と真島さんの家へと運んでしまう。この居心地さを覚えてしまったら最後。私は彼に溺れてしまっているようだ。
自分の手柄を上司に持っていかれたり、した覚えのないミスで怒られたり、何度も今の仕事をやめたいと思った。彼の言う通りあんな会社やめてしまった方がいいのだろう。でも、彼の家を訪れるだけで明日も頑張ろうと思える。
「大丈夫ですよ」
「…ほんまに自分は阿呆やな」
「あはは…」
「まぁ、この話はまた今度な」
今日はもう寝ようやと左目についている眼帯を外した。その目は閉じられていて痛々しくキズが入っている。この目を見る度に胸を締め付けられる感覚に陥る。
「真島さん、私、真島さんとこうした時間過ごせれるだけで幸せですよ」
私はおやすみなさい、と言い、彼の左目にキスをした。少しでも真島さんの傷が癒えるように。もう片方の目は見開いていたが、嬉しそうに目を細めた。
「おやすみ、なまえ」
頭を大きな手で抱えられ、額にキスを落としてくれた。
「…俺も、幸せやで」
朝、1つの電話で起こされた。眠い目を擦りながら携帯を確認すると会社からだった。一瞬で眠気が覚め、急いで電話に出る。
「はい、みょうじです」
『あっみょうじさん…?鈴木だけど』
「あ、課長。おはようございます。どうかしましたか?」
『いやぁ…なんていうか…今日お休みで大丈夫だよ』
「……は?え、あの、どういうことですか…!?」
『ははは !いや!とにかく!今日はお休みで!』
それじゃ!と慌ただしく電話を切られた。受話器を思い切り置いたのか、ガチャン!という大きな音が頭に残る。
「…なんや…電話か?」
どういうことなのか困惑していると隣で寝ていた真島さんが不機嫌そうにむくりと起き上がった。しまった。真島さんは寝起きがとても悪い。そんな人の隣で思わず電話をしてしまった。
「ご、ごめんなさい!起こしちゃって…」
「ええ…それよりどんな電話やったん?」
「いや、その…なんか今日休みでいいよって言われて…」
「ほんまか!?それじゃデートしようやデート!美味いもん食わせたる!」
あんなに眠そうな顔をしていたのに急ににこにこと晴れやかな顔になった。真島さんとデートだなんて久しぶりすぎてとても嬉しいのだが、なぜ急に会社が私に休みを出したのか未だに謎である。
「わっ!」
そんなことを考えていると急にベッドに押し倒された。真島さんは私を抱き枕のように抱えて嬉しそうに微笑んだ。
「まだ早いしデートはもうちょい寝てからでもええやろ」
「ふふ…そうですね。二度寝なんて久しぶりだなぁ」
「頑張っとるなまえちゃんへのご褒美やからな」
「贅沢してる気分です」
「たまにはええやろ、たまには」
「おはようございまーす」
「あっ!みょうじさん!」
「みょうじさん…あんまり危ない道に行っちゃだめだよ…」
「何かあったらすぐ言ってね…?」
「……どういうことですか?」
どこかの組の組長さんが手を回してくれたという事実を知ったのはほんの数日経ってからだった。
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