primavera
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あの花と出会って一年程経った。
休暇中、なんとまた植物園にいくことになったのである。まだ咲いているか心配だけれど、それよりもまた見られるかもしれないという高揚感が勝ってしまう。
そこに着くや否や、私は親と一旦離れて真っ先に温室へと向かった。
まだ綺麗なサボテンが立ち並んでいる。奥へ奥へ、と足を進めた。
ぽつんとそこに咲いている小さな花。
「よかった…まだあった…」
去年と変わらないまま美しいピンク色をしている。ネットや図鑑で見るよりずっと可愛い。
「ふふっ、心配しなくても多年草なんだから枯れたりしないよ」
また、幻聴。どこからと思い周りを見渡す。
「ほらここだよ、隣」
隣を見ると、美しいベビーピンクの髪をした整った顔の青年が立っていた。気配がなかったものだから、驚いてしまう。すらりとしていて、少し儚い雰囲気を纏っている。まるで花のようだ。
「褒めてもらえて嬉しいな」
「え」
私の心でも読んだのだろうか。彼はニコニコと笑っている。
「えっと……」
「名乗っていなかったね。僕は
どういうことだろう。戸惑っていると、彼も困ったように笑って、
「花って言われても信じられないよね」
「……いえ!ホヤ先輩にそっくりです…!」
先輩、と彼は呟いた。目を丸くしている。ついいつものようにホヤ先輩(多分人生の先輩だろうから。あと語呂がいい)と呼んでしまった。
「ふふっ…ありがとう…」
めちゃくちゃ笑われている。
「その呼び方でいいよ、気に入った。
君の名前は何?」
「…香澄です」
彼は「香澄ちゃん…」と言ってから、可愛い、と微笑んだ。
「君は一年前も来てくれたね」
「…!覚えてたんですか…?」
「あんなに熱心に眺めてくれたんだ、忘れたりしないよ」
その時、鞄に入っているスマホが振動した。
開くと、『そろそろ昼食にしよう レストラン前にいます』と母からのメール。もう30分ほど経っていたようだ。
「あの…私そろそろ行かなきゃ…」
「そうなんだね、じゃあ行こうか」
聞き間違いだろうか。
「大丈夫、僕、精霊みたいなものだから離れても問題ないみたい」
最近知ったんだけど、と彼はまた微笑む。
聞き間違い…ではないようだ。
「心配しなくても、僕の姿は君以外には見えていないよ」
本当に精霊のようで腰が抜けそうだ。こんな
絵本みたいなことあるんだ。
と、ほぼ放心状態で歩いていたところ、段差に足が引っかかる。つまづく…と思って地面に手を伸ばす。
だが、私の身体が倒れることはなかった。
「おっと、、怪我はないかい?」
「ありがとう…ございます……?」
なんで、実体が、あるの………?
精霊なのに………?
「花は実体があるじゃないか、勿論触れられるよ」
辻褄が合っていない……。
「ほら、お昼なんでしょ、行こう」
かくして、私とホヤ先輩の生活は始まってしまった。
私と彼との物語は、まだ続く。