HAPPY ENDを迎えるための法則
ナマエ
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あの日を境に私はオーターを避けていた
最初は学校が違うこともあり全く会うことがなくほっとしていたのも束の間
彼がイーストン魔法学校高等部に編入してきたときは心底焦った
幸いなことに寮が異なり比較的に会うことがなかった
たまに廊下ですれ違う程度で…目は合うものお互いそれ以上踏み込む事はなかった
選択科目や寮が違うだけでこんなにも会わないものなのかとやや拍子抜けだった
それでも今の私には丁度良かった
あの日のことを忘れるように…考える暇が無いように勉学と師匠のところで稽古をつけてもらう日を続けた
「ナマエ神覚者おめでとう」
「
イーストン魔法学校一年にして史上最年少の神覚者に選ばれた
「神覚者を目指しなさいと言いましたが、こんなに早くなるとは鼻が高いですね」
「ありがとうございます!」
「師匠が幼い頃から稽古をつけて下さったおかげです」
私の固有魔法は治癒魔法だった
生まれたとき器に対して魔力量が異常なほど膨大すぎてこのままでは体が壊れてしまうためメリアドール医院に運ばれ治療を受けた
それ以来魔力を制御する力と治癒魔法を攻撃にも変換できるようにと応用魔法も叩き込まれた
人より物覚えも魔力量も魔法も異常だったためかすぐ習得できた
師匠とともに病気の人や貧しい人それ以外の人たちの助けをした
"ノブリス・オブリージュ"
師匠が私に教えてくれた言葉だ
治癒魔法使いは特にこの言葉を意識することになる
犯罪者だろうが別け隔てなく助ける
平等と平和を掲げるなら忘れてはいけない
神から授かった貴重な回復魔法
それを私利私欲のために使う人もいないわけではない
だがこの系の魔法使いは名も無い民のために使うことのほうがほとんどだ
そういった慈善活動をしていたこともあって私は市民たちから聖女様、女神様など呼ばれるようになった
わたしはそんな神みたいな存在ではないのに…
本当はただオーターの傷を治せることが出来るだけで良かった
あの一夜の過ちから私達はお互いに顔を合わせても素っ気ない挨拶だけ
会いたいけどあいたくない
今までどうせっしていたのか分からなくなる
この先に進むのがただ怖いだけ
彼との関係が終わってしまうのではないかと考えるだけで身体の震えが止まらない
「ナマエさん?」
「ソフィナさん…」
「顔色がよろしくないですが、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい…私なんかが神覚者務まるのかと考えておりまして」
「ナマエさんはまだ学生さんですから仕方ありません…徐々に慣れてきますから焦ることはありませんよ」
「ありがとうございます!」
わたし今きちんと笑えているかな
そんなことをぼんやりと考えながら与えられた仕事に勤しんだ
神覚者になったことで学業以外にも魔法局での仕事が山積みで毎日毎日同じことを繰り返してるうちにいつの間にか月日が過ぎオーターが神覚者に選ばれていた
「お、おめでとうオーター」
神覚者授与式…私たち神覚者は当然出席しないといけない
今日ほどこの日を呪ったことはない
「ありがとうございます、ナマエ」
早く逃げたかっただがそれを許してはもらえなかった
私の右腕を彼がしっかり捕まえてるから
「今日をもって自由に放し飼いする時間は終わりだ」
彼の発した言葉を理解できなかった
「え?」
「避けられてることに俺が気づいてないとでも?」
「こ、ここ1、2年…前みたいに話すことがなかったから…オーターも同じ気持ちじゃないの?」
「私にはやり遂げないといけない事があったからここ数年はそちらに割いてた時間は多少なりともあるが、避けているつもりはまったくないな」
まさか私だけがあの日のことをずっとモヤモヤして頭を抱えて苦しんでいたのか
「むしろお前に逃げる猶予と準備期間をもうけたつもりだったのだが?」
「え、え?な、何を言ってるの?」
わからないわからない頭がうまく回らない
「たしかにあのときの状況を利用して婚前前にお前を抱いてしまったのはすまなかった」
「り、利用?…え、まさか最初からそ、そういうことするつもりだったの!?」
「そうだが?」
「い、意味わからないよ!私たち…私たち…一応は婚約者だけど恋人同士みたいなこと今までしてこなかったじゃない!」
「何を言っている?」
「そういったことをするのを避けていたのはお前のほうだろう?」
「………」
図星だ…せっかく婚約者にもなったのにその先をオーターの隣を歩くのが怖くてずっと二の足を踏んでいた
「で、でもオーターだって興味ないって…距離を縮めてきたりしなかったじゃない!」
言い訳じみた言葉ばかり出てくる…情けないなもう負けを認めて楽になったほうがいいのに二年という空白の月日のせいで擦れた私の心は絆されることを許さない
「フゥーーー」
彼が大きなため息とともにもう一つの空いた手で眼鏡のフレームをカチャリと直す
ビクリッと肩が大袈裟に震えた
今度こそ呆れられたかな…嫌われたくない……私の側から離れないでほしい…好きでいてほしい
我ながら都合のいいようなことばかり考えてしまう自分にほとほと愛想が尽きる…
滑稽だな…逃げても意味ないのに答えを出すのがそれに向き合う勇気がないとか…
ボロボロと涙が頬を伝って流れていく
「!?」
彼の意外にも温もりがあるしっとりとした手が優しく涙を拭っていく
「私があの日興味があると…好意を示してたらお前は余計疑心暗鬼に陥って勝手に私の腕の中から逃げたしていただろう?」
それだけは避けたかったと眉にシワを寄せながら苦しそうに答えるオーターをみて心臓がギュウっと締め付けられた
「ただでさえ婚約者の立場になったとたん一線を引いてきたんだ…私の気持ちを聞いて素直に返事ができていたと思うか?」
あぁとっくの昔にオーターは私の気持ちを見抜いていたのか
ずいぶん遠回りをしてしまったものだ
「俺がそう簡単に好いた女を逃がすとでも?」
「へ⁉」
あまりにも突拍子もなく答えるものだから変な声が口から出た
「 好きじゃない女を抱くと思うのか?」
「 ひゃぁ!」
恥ずかしくて目を伏せる
「何年待ったと思ってるんだ?…ここまで来るのに時間をかけさせやがって…クソが!」
俺の気も知らないでとグチグチ言われてる
「え、え?」
待って待って、コッチは情報量過多だよ
「まーいい…この際お前が私の隣に戻ってきてくれるなら何だってかまわない」
「ナマエ」
掴んでいた腕を離し彼は片脚の膝を地面につけて跪く
胸ポケットから小さな箱を出してゆっくり開くそこには小さく七色に光り輝くダイヤモンドがあしらわれたシンプルな指輪が鎮座していた
「私と結婚してくれ」
私の目を見てはっきりとプロポーズの言葉をのべたオーターは指輪をとり私の左手の薬指にはめる
「わ、わたしまだ返事してないけど⁉」
「はいかYesかどちらか選べ」
「いやそれ私に拒否権ないじゃん」
この期に及んでまだ認めないのかとジト目で見てくる
「私がいくら拒絶してもお前が離れないと味方でいると言って聞かなかっただろう」
「それにわたしにさんざん甘えて優しくしてきたくせに私がその気になった途端、今度は距離をあけやがって…」
ゆっくり立ち上がり私の両肩をガシッと手で掴む
久しぶりにこんな近くで彼の顔を見たなぁと呑気に思ってしまった
「いい加減腹くくって責任とれ」
「ナマエ」
「言っとくが、貴様に拒否権は残されてない大人しく自分の気持に素直になって私に愛されてろ!」
「はい」
オーターが言っていることは至極真っ当だ
最初に始めたのは私なのに彼に触れた途端怖気づいて勝手な思い込みをして背を向け逃げ続けた
そうだというのにオーターは見捨てずむしろ捕まえて私の気持ちに向き合ってくれたのだ
こんなに愛されていたというのに
「遅くなってごめんなさい、こんな私を捨てずに愛してくれてありがとう」
もっと早くに伝えてればよかった
「ずっとずっとオーターのこと大好きだったの」
私たちは近すぎるがゆえに大事な対話をおろそかにしていたのかもしれない
「至らないところがありますが、幸せにしますよナマエ
」
オーターの両腕が私の背中にまわりきつく抱きしめられる
「末永くよろしくお願いします」
目が合う
私が大好きな
好きになった
琥珀色の瞳
「オーターの瞳は今も昔も変わらずに綺麗ね」
オーターの瞳が大きく開かれる
「貴方ぐらいですよそんなことをおっしゃるのは」
お互いどちらからともなくキスをする
「 ナマエ、愛してる」
HAPPY ENDのその先へ
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