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隣国の王子

 ニケが生まれてから数年経ったある日、隣国にも王子が生まれた。大変麗しく、整った顔立ちをしていたので、女王は大喜びした。そこに、ニケの母君に寄り添った仙女がいた。仙女は女王を宥めるように言った。

「確かにこの子は大変美しい。しかし、知恵が足りない。美しさの分だけ馬鹿ですよ」
「そんな…なんて酷いことを言うのですか。でもまぁ、美しささえあれば、多少頭が悪くともどうとでもなりますわ」
「そうでしょうか。とにかく、気をつけなさい」

 女王は、仙女の言葉を疑っていたが、確かに赤子は物覚えが悪く、必要以上の手間がかかっていることを感じて悲しくなった。
 第一王子が生まれてからそう経たないうちに、弟が生まれた。大変醜く、噂に聞く隣国のニケに匹敵すると思われるほどに、顔つきが悪かった。そこにまた、お節介な仙女がいた。

「その子は醜いが、醜さが気にならないほどの賢さを持っている。きっと好かれることでしょう」
「そんなに賢い弟なら、兄もどうにかできないの。あなたが言った通りだったわ。これほどまでに何もできないだなんて……」
「兄の方は、この先どんどん美しくなるでしょうが、頭は駄目かと。でも安心なさい。代わりに、一番愛した人を自分と同じだけ美しくする力を授けておきました」
「そんなものより、今すぐにどうにかならないの?」
「えぇ、申し訳ないけれど、万能の力なんて存在しないの。万能な人間がいないのと同じように……」

 成長するにつれ、兄の美しさはどんどん磨きがかかっていった。城内を歩く姿は輝く太陽のようで、宙を見つめて息をこぼす様子などは、思慮深く見えた。しかしそれは何も考えていないだけで、中身の馬鹿さがますます際立っていった。食べ物は口の端からこぼすし、服の着方もわからない。話し始めるのが遅く、会話も理解できないから、なんとなく頷いているだけだった。もちろん読み書きや計算ができるわけもなく、家庭教師が次々にやめていった。

 一方で、弟はすぐに物を理解し、話せるようになった。とても醜かったが、話が面白いため、兄よりも好かれていた。社交の場では、最初は美しさに惹かれて兄の周りに人が集まるが、すぐに話の面白い弟の方に寄っていった。
 兄は大変な馬鹿だが、自分の馬鹿さだけは理解していて、人気のある弟と比べては死にたいと感じて、一人で泣いていた。
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