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隣国の王子

 とある国の女王に、新たな王子が生まれた。大変素晴らしい出来事で、国中が喜びで賑わっていたが、女王は1人、悲嘆に暮れていた。生まれてきた王子の顔が、この世のものも思えないほどに醜かったのだ。釣り上がった目は異様に離れ、鼻は大きく尖り、口も右下がりに歪んでいた。体つきも良くなく、左肩だけ上がっていて、四肢の長さも不揃いだった。赤子の頃からこの顔立ちでは、成長したらさらに醜くなってしまうだろう。そう思った女王は、赤子を皆の前に見せることをずっとためらっていた。
 悲しみに打ちひしがれる女王に、どこからか来た仙女が優しく声をかけた。

「確かにこの子は大変醜い。しかし、安心なさい。この子はとても賢い子だから、誰からも好かれるようになります。賢さがこの子を幸せにしてくれることでしょう」
「本当に? でも、それだけでは、この子を心から愛してくれる人が現れるか、わからないわ」
「大丈夫。今、この子に贈り物を授けました。自分が一番愛した人に、自分が持つのと同じ賢さを与えられる力です」
「……どういうこと?」
「これが救いとなるか、災いとなるか、その時が来るまではわかりませんが、きっとこの子の力となるでしょう。まぁ、心配なさらずとも、この子の賢さは、それだけで生きていけるほど優れたものになりますよ」

 仙女の言葉通り、王子はすぐに言葉が話せるようになった。その口は大変達者で、女王を騙して国政を思うままにしようとする不届き者を暴いて、黙らせてしまうほどだった。しかし決して嫌味ではなく、話が上手で、引き込まれるような面白い話ばかりをするので、大人も子どもも、みんなが彼を好きになった。
 醜い王子には、頭のてっぺんに小さな巻き毛があったので、巻き毛のニケと呼ばれた。きっと、アホ毛と呼ぶのは躊躇われたのだろう。
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