届かないって誰が決めた?
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「今見てしまうと、楽しみが無くなるだろう」
先程迄の敬語は何処へ行ったのか
イポスはこちらが折れた途端、馴れ馴れしい口調へ一変した
確かにイポスの言う通りなのだが、個人的には純粋に、飾らない生徒達を見て周りたい
「彼らは何年生ですか?」
そう問うと
「1年生」
と返ってくる
ならば、
「上級生は、見学しても宜しいですか?」
イポスは頷き「案内するよ」と先導して歩き出した
「あの、先程の、噂って.....?」
イポスの背中に問いかけると、振り向いて隣に並ぶ
「三傑のお一人であられるレヴィ様のお気に入り。聡明で高潔な美悪魔。理事長の親戚とか、他にも色々」
「は?」
何よそれ
こちらをチラリと流し見たイポスは
「まぁ、噂は噂でしかないからな」
「デタラメばかりじゃないですか......というかどうして私がその噂の相手だと解ったんですか?」
イメージと全然違うのに
「何でだろうね」
イポスはニヤリと口角を上げる
これ以上は聞かない方が良さそうだ
ある教室の前で、イポスは歩みを止めた
ゆっくり扉を開くと、今まさに授業中だった様で、教師、生徒達の視線がこちらに集まる
「あぁ、すみませんオリアス先生。気にしないで続けて下さい。授業を見学したいという方が居まして」
「見学?」
イポスから私へ視線を移した教師は小首を傾げたが、直ぐに黒板へと向き直り、授業を再開した
イポスへ続き、最後部で授業内容を聞く
どうやら占星術に纏わる授業の様で、月と星の位置から数式を計算し解を求めていく、といった内容だった
教師から生徒達へ目線を移すと、真面目にノートを取る者が居る一方で、居眠りしている生徒も居る。
.......ここまではありがちな授業風景なのだが
「チェルコ」
小声で呪文の様なものを唱え、目の前の生徒へ悪戯を仕掛けている生徒が居た
クスクスと隣の生徒と笑い合う
教師はその様子に気付いているが、叱る様子は無い
代わりに
「はい、じゃあこの問題を誰に解いてもらおうかな〜」
と、先程悪戯をしていた生徒を指名する
答えられずしどろもどろする生徒に、教師は「はい、じゃあその前に座っているバディンくん」と、悪戯されていた生徒を指名した
「はい。答えは3です」
「正解♪」
授業が終わり、何故あの様な非効率的な事をするのだろうとイポスに問いかけると
「楽しいから」
と、単純明快な答えが返って来た
「君が思っている程、難しい事は考えていないよ」
「......私は考えすぎですか?」
「少なくともその様な質問をする辺り、俺にはそう見える」
「はぁ.....」
その感覚が欲しいわけでは無いが
楽しそうに笑い合う光景を見てどうしても羨んでしまう
「まだ見学する?と言いたいところだが、今の授業が最後の科目なんだ」
「.......1人で見て回っても宜しいですか?」
「1年塔以外ならね」
ようやく許可が降りたと安堵し、「有難うございました」と礼をする
イポスは「そういえば」と去り際に呟くと
「キサ」と、私の名を呼ぶ
「例の噂、強ち間違いでは無いよ」
「かくいう俺も、君に魅き寄せられた質だからね」