あなたに近付きたくて
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な、何でこんな事に....!?
13冠ことバール様に引っ張られ、今私はお高いお店の個室に、バール様と向き合って座っていた
緊張するあまり目が合わせられず、冷や汗が止まらない
何故この方は私の事をご存知なのか
何故繁華街に居て何故私を此処に誘ったのか
様々な疑問が溢れて頭の整理が追いつかない
バール様に促されてカタカタと震える手でお茶を飲んだ
「.....周りが見えない位、何を考えていたんだ?」
「あ、の....私。勉強をしようと思っているのですが、何から始めれば良いのか解らなくて、今更学校に通う訳にはいきません、し」
話すつもりの無い言葉が勝手に口から出てくる....
「何だそんな事か」
バール様が手を翳すと、大量の書物が目の前に積み上がった
「これを一通り読め、読み終わったら俺に報告をしろ」
「はい?」
「俺が面倒を見てやる、わからない事も、俺に聞け」
「な、何で....?」
バール様はテーブルに人差し指を立てると
「俺は、13冠だが、研究者でもある。丁度俺の手足となる助手が欲しくてな」
「助手....?」
「お前の住む家の事も、そこに巣食う魔神の事も知っている」
「なっ.......!?」
「俺について来い。俺は、お前の望む物を与える事が出来る」
バール様は私に手を差し出した
魔神って...何?
私の知りたい事を、この方は全て教えてくれるの?
もしかして、帰る方法も知っているの?
甘い言葉に誘われ、その手を取ろうとした時だった
『ダメだよ』
目の前に真っ白な人が現れた
「出たな.......」
バール様は予想外、といった雰囲気で後退る
『キサに近づくな』
聞き覚えのある声
「.......シロ?」
「流石にこんな場所で魔神とやり合う気はねぇよ。キサ、気が変わったらいつでも連絡しろ」
そう言い残し、バール様は姿を消した
....白昼夢でも見ていたのだろうか
バール様も白い人も姿を消し、
1人残された部屋を見渡した
テーブル残された大量の本を手に店を出る
ぼうっとしながら家に帰り着くと、
先程の白い人が立っていた
『おかえり、キサ』
「......シロなの?」
『僕だよ』
「力が、戻ったの?」
『.....ごめん』
シロは申し訳なさそうに首を振って目を伏せた
『まだ、魔力が足りない』
「でも、少しは元に戻ってきているんだよね?」
シロは目を伏せたまま
『ごめん.....正直に言う、僕の魔力を元に戻す為には、この家に住む人間の生命力が必要なんだ』
シロ曰く、
生きている間に放出されている力を少しもらう事で力を得ていると、普通に生活するだけだと100年近く、触れているとその半分、血を摂取すると更に半分。つまり、今の状態だと元の世界に戻る為に必要な時間は最低でも25年掛かると言う事になる。
「そんな.........」
そんなに長い間魔界での生活が続くだなんて
あまりのショックに膝から崩れ落ちた
『寿命が長い僕達にとって、それくらいの時間は大差ないけれど、人間は、違う』
「バール様も、それを知って....?」
『恐らく。でも流石の彼もキサが異世界からの来訪者である事は知らないと思う』
それに....
『......僕の魔力目当てで他の人間を贄として差し出す可能性もある』
まるで経験した事があるかの様に、シロは顔を歪めて自分の手を見つめた
「シロの、ご主人様は....?」
『僕を、この家に縛り付けた主神だよ』
時々紛れ込む人間を哀れんだ主神は、過酷な魔界で人間が生きていける様にとこのオアシスの様な場所を創り上げたという
そして、寂しく無い様に、せめて死ぬ前に故郷へ帰りたいという願いを叶える為に、僕と言う魔神を創り上げた
『黙ってて、ごめん。急にこんな話、出来なくて』
「シロのせいじゃないわ」
ねぇ、
「いつもの姿になれる?」
シロは黙っていつものふわふわで丸っこい姿に変化した
手のひらに乗ったシロに向かって
「他の人には姿を見せられないって言っていたのに、助けてくれたんだよね?
有難う、シロ」
ふわふわに優しく口付けを落とす
シロはくすぐったそうに身を捩ったが
無言で頬に擦り寄ってきた
『これからは、もう、隠れない。キサとずっと一緒にいるよ』