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カリブー
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その日も鐘の人は出掛けていくようで鈴を鳴らしながら送り出す。まとめられていた腕を解かれてすぐは伸ばすなりして体をほぐす。寝るときから彼が出掛けるまではずっと肩から後ろに回しているのもあって慣れたとはいえなかなか肩がこるもので。
先日、体拭きにタオルを使っていたのを干させてもらえないかと持ちかけたところ、部屋の扉の外すぐにあったのか作ってくれたのか物かけを使わせてくれるようになって、その兼ね合いで部屋の外に少し出るようになった。すぐ屋外になるみたいで、冷えた湿気と草のにおい。ほぐした体を持ち込めば気だるさもしっかり冴える…のだけれど、飛ばない眠気、落ちようとする頭をなんとか堪えて部屋に戻る。たどり着いたベッドに倒れるとそのまま眠気に負けた。
おかしいと感じたのは、ずっとつけているはずの目隠しの向こう側が見えていること。目元に触れれば確かに感触はあるのに視界が通る、何が起きているのだろう。激しく鳴り始める心臓と渇く喉に肩を揺らすと、ベッドサイドの椅子の方から声がかけられる。
「成る程、エンティティが言っていたのはコレか。アイツも面白そうなもん隠してんな」
「えっ」
椅子に腰かけるその人、帽子で顔が見えないのと右手の鉤爪の擦りあう音に背筋を何かが抜けていくのを感じる。
思わず距離を取ろうと後ろへさがれば手は空を切りそのまま床に落ちた。背中を打ち付けてちょっと痛い、がそれどころではない。慌てて顔をあげれば帽子の人は椅子からこちらに寄ってくる、左手を伸ばしてきていた。
「や、やめっ」
「ちゃんと周りをみてから動けよ。ビビったのはよくわかったけど。」
腕を前に出して抵抗しようとするのをよそに背中の方に回された腕で持ち上げるようにベッドの方に戻された。あれ待って、右手で痛め付けに来ると思っていたのに。
「ほーら落ち着け」回してきた手でそのまま背中をテンポよく叩いてくる。この人は私に害をなそうとしているわけではないのかもしれないと半信半疑ではあるが向き直ることにした。
その人は帽子の下、その素顔が肌色と赤がぐちゃぐちゃに入り乱れていて、その酷い火傷に思わず目をそらした。
「俺の顔が怖いのか」
「いえ、あ、はい…」
「ふぅん、ならそのままでいいから少し話でもしようや」
我ながら人様の顔が見れないとは酷いことを言ってしまってるとは思うのだけれど、本人が気にする素振りもなく話を持ちかけるのだからそれに甘えることにした。
正直言ってしまえば逃げ出したいし、鐘の人に早く戻ってきてほしいと思うのだけど、生憎彼は出ていったばかりでいつもと同じならまだ暫く戻ってくることはない。
視線の置き場に迷ってベッドシーツのシワをにらむ。
「そうだな、とりあえずお前の名前でも教えてくれよ。話をするならまず自己紹介だ」
「あ、はい。名前は帯子です」
「あまり聞かない音だな、俺はフレディ・クルーガー。好きに呼んでくれて構わねぇよ」
「…フレディさん、ですね」
「おう」
それから、目を向けることは出来ないままフレディさんと幾らか話をした。
目隠しの感覚があるのに周りが見えているのは今私は寝てしまって夢の世界にいるらしく、周りの景色は夢に投影されて見えているものらしい。そして、フレディさんは夢の世界に住んでいるから私の夢に入り込んで話をしに来た。そういうことらしい。
話していればどうやら彼はかなりサバサバした言い回しが多く、何を話しても楽しそうに喉を鳴らす。その対応が妙にありがたくてこのところろくに使っていない声帯を限界まで使ってしまった。やはりどうしても、人と話すのは楽しいと思う。鐘の人がいてくれても話が通じる感覚はあっても、言葉を交わす事は寂しさを飛ばすのにこうも効果的なのだ。
「じゃ、俺はそろそろお暇しようかね」
声に空気が混ざり始めたのがフレディさんにも伝わったようで、椅子から立ち上がるのを足元をみて確認する。
「もしよかったら、また来てくれますか」
「言われなくても、面白そうなことをみすみす逃したりはしねぇよ」
じゃあな、帯子。そういいながら後ろ手に手を振ってフレディさんは消えていった。次に会うときはちゃんと顔を見られるようになりたいと思いつつ見送る。
ふと、目が覚める感覚がして目蓋を押し上げれば見えるのは暗闇で今度は夢でなく本当に起きているのを確信する。試しに声を出せば少し乾いた音がして、夢だけどフレディさんは本当にいたのだと、またお話ができるのかと期待してしまう。
きっともう少ししたら鐘の人が帰ってくる、それまでに少しでも喉を潤しておこう。私は慣れた足取りで台所まで向かった。
先日、体拭きにタオルを使っていたのを干させてもらえないかと持ちかけたところ、部屋の扉の外すぐにあったのか作ってくれたのか物かけを使わせてくれるようになって、その兼ね合いで部屋の外に少し出るようになった。すぐ屋外になるみたいで、冷えた湿気と草のにおい。ほぐした体を持ち込めば気だるさもしっかり冴える…のだけれど、飛ばない眠気、落ちようとする頭をなんとか堪えて部屋に戻る。たどり着いたベッドに倒れるとそのまま眠気に負けた。
おかしいと感じたのは、ずっとつけているはずの目隠しの向こう側が見えていること。目元に触れれば確かに感触はあるのに視界が通る、何が起きているのだろう。激しく鳴り始める心臓と渇く喉に肩を揺らすと、ベッドサイドの椅子の方から声がかけられる。
「成る程、エンティティが言っていたのはコレか。アイツも面白そうなもん隠してんな」
「えっ」
椅子に腰かけるその人、帽子で顔が見えないのと右手の鉤爪の擦りあう音に背筋を何かが抜けていくのを感じる。
思わず距離を取ろうと後ろへさがれば手は空を切りそのまま床に落ちた。背中を打ち付けてちょっと痛い、がそれどころではない。慌てて顔をあげれば帽子の人は椅子からこちらに寄ってくる、左手を伸ばしてきていた。
「や、やめっ」
「ちゃんと周りをみてから動けよ。ビビったのはよくわかったけど。」
腕を前に出して抵抗しようとするのをよそに背中の方に回された腕で持ち上げるようにベッドの方に戻された。あれ待って、右手で痛め付けに来ると思っていたのに。
「ほーら落ち着け」回してきた手でそのまま背中をテンポよく叩いてくる。この人は私に害をなそうとしているわけではないのかもしれないと半信半疑ではあるが向き直ることにした。
その人は帽子の下、その素顔が肌色と赤がぐちゃぐちゃに入り乱れていて、その酷い火傷に思わず目をそらした。
「俺の顔が怖いのか」
「いえ、あ、はい…」
「ふぅん、ならそのままでいいから少し話でもしようや」
我ながら人様の顔が見れないとは酷いことを言ってしまってるとは思うのだけれど、本人が気にする素振りもなく話を持ちかけるのだからそれに甘えることにした。
正直言ってしまえば逃げ出したいし、鐘の人に早く戻ってきてほしいと思うのだけど、生憎彼は出ていったばかりでいつもと同じならまだ暫く戻ってくることはない。
視線の置き場に迷ってベッドシーツのシワをにらむ。
「そうだな、とりあえずお前の名前でも教えてくれよ。話をするならまず自己紹介だ」
「あ、はい。名前は帯子です」
「あまり聞かない音だな、俺はフレディ・クルーガー。好きに呼んでくれて構わねぇよ」
「…フレディさん、ですね」
「おう」
それから、目を向けることは出来ないままフレディさんと幾らか話をした。
目隠しの感覚があるのに周りが見えているのは今私は寝てしまって夢の世界にいるらしく、周りの景色は夢に投影されて見えているものらしい。そして、フレディさんは夢の世界に住んでいるから私の夢に入り込んで話をしに来た。そういうことらしい。
話していればどうやら彼はかなりサバサバした言い回しが多く、何を話しても楽しそうに喉を鳴らす。その対応が妙にありがたくてこのところろくに使っていない声帯を限界まで使ってしまった。やはりどうしても、人と話すのは楽しいと思う。鐘の人がいてくれても話が通じる感覚はあっても、言葉を交わす事は寂しさを飛ばすのにこうも効果的なのだ。
「じゃ、俺はそろそろお暇しようかね」
声に空気が混ざり始めたのがフレディさんにも伝わったようで、椅子から立ち上がるのを足元をみて確認する。
「もしよかったら、また来てくれますか」
「言われなくても、面白そうなことをみすみす逃したりはしねぇよ」
じゃあな、帯子。そういいながら後ろ手に手を振ってフレディさんは消えていった。次に会うときはちゃんと顔を見られるようになりたいと思いつつ見送る。
ふと、目が覚める感覚がして目蓋を押し上げれば見えるのは暗闇で今度は夢でなく本当に起きているのを確信する。試しに声を出せば少し乾いた音がして、夢だけどフレディさんは本当にいたのだと、またお話ができるのかと期待してしまう。
きっともう少ししたら鐘の人が帰ってくる、それまでに少しでも喉を潤しておこう。私は慣れた足取りで台所まで向かった。
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