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カリブー
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レイス視点
あの抱き枕の彼女が来てすぐは夢を見ることもあった。このところはそれから更に深く寝てしまうらしく覚醒してからの頭の抜け具合が心地いい。すぐに聞こえる腕の中の呼吸音も合わせて代わり映えのない毎日ながら、わずかに幸せを感じてしまっている気がする。
ボクは夜がくれば逃げる背を切りつけては捧げるただの殺人鬼で、ボクをそうさせている女王様に逆らうこともできず、痛め付けられ、見てくれも奪われてしまっているのに、この一人の存在が帳消しにせんとばかりに心地よくそこにあり続けてくれている。この安心感を幸せと言わずになんと言うのだろう。
何度かこの柔らかさを確認するように抱き締め直していると、起きたのか少し低く喉を唸らせている。
それから起き抜けのその喉で朝の挨拶を貰うのも、それに喉をならして答えるのも習慣になりつつある。そして、彼女は反応してやると至極嬉しそうに口端をあげるのだ。
その日も女王に言われるまま儀式へ、血生臭い鬼ごっこへ向かう時間。「いっておかえりなさい」とかけられた声に返しをして家を出る。そうだ、家から出ていくなら、待っているのがいるのだから帰ってこなくては。やることはやりきってあと腐れなく迎えてもらおう。その内容については、触れられたくはないけれど。
その儀式は一人にハッチを許してしまったがそれでも三人吊し上げたので女王もあからさまな不機嫌になることはなくボクに帰りの霧を纏わせる。それがはければボクの帰りを願うのまじない言葉を撒いた彼女が迎えてくれる。
家の前で鐘を二回。儀式でかけたままだった透明化を解いて玄関を開ける。
「おかえりなさい、」と何か続けて言いたそうに言葉をつまらせるのもいつものことで、鐘を鳴らしてやると少しほっとした顔に戻る。いつもと違うのは手元の桶に手を突っ込んで音を立てていること。普段と違うことをされていると気になるもので近寄って喉をならす。なにしてんの。
「あの、良かったらこれで、体、拭かせてもらえたらって…お湯タオルって気持ちいいから、よく眠れるかもですし、」
…ボクとしては彼女を抱き枕にしていればもうじゅうにぶんによく眠れてしまっているから今更だとは思うのだけれど、その行為を無下にするのもどうかとなって受けることにした。
彼女の座る隣に腰かけると、了解を受け取ったのか手にあったタオルを絞ってこちらに向いてくる。見えているわけではないからボクを捉えきれてはないようで、手は空をさ迷うばかり。
その手をとって、反対側の腕に触れるように連れていく。目的を確認するかのようにもうひとつの手も合わせて添えられる。
力こそ込められてはいるけれど、もっと強く雑に扱えばいいものをそんな割れ物でも触れるかのように、ゆるやかに扱われると正直戸惑ってしまう。
少しずつ確かめるように拭かれていたのもあって、結局その日は片腕だけ、それから何日かに分けてもう片腕も、足も拭かれていったわけだけど、腹部を拭かれるときに巻いてある布を解いた流れでそのままヘソの下、足の付け根、そのあたりまでやられるとは思ってなかった。彼女が気にしていないことと、その必死な様を見守るのに意識が向いていたお陰かはしたないことにならずに済んだのが救いだ。今思い返すと恐ろしい。
ふぅ、と一息ついてから
「ありがとうございました。どうでしょう、さっぱりしました?」とこちらを向いてくる。
色々思うところはあったが、そのやりきった感を浮かべた顔になにか言えるわけもなく、お礼の意を込めて彼女の頬にすり寄る。一瞬ビクつきはしたものの、そのあとボクの頭にもたれてくるのだから、嬉しいものだ。
暫く、そのままお互いの頭部の温度を分けあっていたけれど、ふと思い出す。あぁそうだ、きっと今日でこの体拭きが一段落つくだろうと思って持って帰ってきたもの。腰のポーチから引っ張り出すとそれはリン、と音をたてる。紐で2つを一組に繋げた鈴。目隠しをしている彼女に解るように目の前で何度か鳴らしてやる。そのまま、纏められた後ろ髪の付け根に巻き付けてやれば彼女は頭を振ってリンリン鳴らす。そう、そうやって鳴らしてね、ボクがわかるように。答える為に鐘を鳴らしてやるとまた首を振る。
暫く鈴と鐘が交互に鳴らしあってお互いを確認して、なんだかだんだん気恥ずかしくなってきたのでボクの方から切り上げて寝るように促した。
その日からは「おやすみなさい」の言葉のあと詰まらせるような呼吸がなくなり、代わりにリンと鈴がならされるようになった。
あの抱き枕の彼女が来てすぐは夢を見ることもあった。このところはそれから更に深く寝てしまうらしく覚醒してからの頭の抜け具合が心地いい。すぐに聞こえる腕の中の呼吸音も合わせて代わり映えのない毎日ながら、わずかに幸せを感じてしまっている気がする。
ボクは夜がくれば逃げる背を切りつけては捧げるただの殺人鬼で、ボクをそうさせている女王様に逆らうこともできず、痛め付けられ、見てくれも奪われてしまっているのに、この一人の存在が帳消しにせんとばかりに心地よくそこにあり続けてくれている。この安心感を幸せと言わずになんと言うのだろう。
何度かこの柔らかさを確認するように抱き締め直していると、起きたのか少し低く喉を唸らせている。
それから起き抜けのその喉で朝の挨拶を貰うのも、それに喉をならして答えるのも習慣になりつつある。そして、彼女は反応してやると至極嬉しそうに口端をあげるのだ。
その日も女王に言われるまま儀式へ、血生臭い鬼ごっこへ向かう時間。「いっておかえりなさい」とかけられた声に返しをして家を出る。そうだ、家から出ていくなら、待っているのがいるのだから帰ってこなくては。やることはやりきってあと腐れなく迎えてもらおう。その内容については、触れられたくはないけれど。
その儀式は一人にハッチを許してしまったがそれでも三人吊し上げたので女王もあからさまな不機嫌になることはなくボクに帰りの霧を纏わせる。それがはければボクの帰りを願うのまじない言葉を撒いた彼女が迎えてくれる。
家の前で鐘を二回。儀式でかけたままだった透明化を解いて玄関を開ける。
「おかえりなさい、」と何か続けて言いたそうに言葉をつまらせるのもいつものことで、鐘を鳴らしてやると少しほっとした顔に戻る。いつもと違うのは手元の桶に手を突っ込んで音を立てていること。普段と違うことをされていると気になるもので近寄って喉をならす。なにしてんの。
「あの、良かったらこれで、体、拭かせてもらえたらって…お湯タオルって気持ちいいから、よく眠れるかもですし、」
…ボクとしては彼女を抱き枕にしていればもうじゅうにぶんによく眠れてしまっているから今更だとは思うのだけれど、その行為を無下にするのもどうかとなって受けることにした。
彼女の座る隣に腰かけると、了解を受け取ったのか手にあったタオルを絞ってこちらに向いてくる。見えているわけではないからボクを捉えきれてはないようで、手は空をさ迷うばかり。
その手をとって、反対側の腕に触れるように連れていく。目的を確認するかのようにもうひとつの手も合わせて添えられる。
力こそ込められてはいるけれど、もっと強く雑に扱えばいいものをそんな割れ物でも触れるかのように、ゆるやかに扱われると正直戸惑ってしまう。
少しずつ確かめるように拭かれていたのもあって、結局その日は片腕だけ、それから何日かに分けてもう片腕も、足も拭かれていったわけだけど、腹部を拭かれるときに巻いてある布を解いた流れでそのままヘソの下、足の付け根、そのあたりまでやられるとは思ってなかった。彼女が気にしていないことと、その必死な様を見守るのに意識が向いていたお陰かはしたないことにならずに済んだのが救いだ。今思い返すと恐ろしい。
ふぅ、と一息ついてから
「ありがとうございました。どうでしょう、さっぱりしました?」とこちらを向いてくる。
色々思うところはあったが、そのやりきった感を浮かべた顔になにか言えるわけもなく、お礼の意を込めて彼女の頬にすり寄る。一瞬ビクつきはしたものの、そのあとボクの頭にもたれてくるのだから、嬉しいものだ。
暫く、そのままお互いの頭部の温度を分けあっていたけれど、ふと思い出す。あぁそうだ、きっと今日でこの体拭きが一段落つくだろうと思って持って帰ってきたもの。腰のポーチから引っ張り出すとそれはリン、と音をたてる。紐で2つを一組に繋げた鈴。目隠しをしている彼女に解るように目の前で何度か鳴らしてやる。そのまま、纏められた後ろ髪の付け根に巻き付けてやれば彼女は頭を振ってリンリン鳴らす。そう、そうやって鳴らしてね、ボクがわかるように。答える為に鐘を鳴らしてやるとまた首を振る。
暫く鈴と鐘が交互に鳴らしあってお互いを確認して、なんだかだんだん気恥ずかしくなってきたのでボクの方から切り上げて寝るように促した。
その日からは「おやすみなさい」の言葉のあと詰まらせるような呼吸がなくなり、代わりにリンと鈴がならされるようになった。